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映画感想『チャーリーとチョコレート工場』

今更ですがネタバレありです。

僕が子どもの頃から、この映画は大きな存在感を放っていました。そして、観るチャンスも多くありました。それこそ、金曜ロードショーでも定期的にやっていましたし(今でも)。ですが僕は幼少期から一貫して臆病な人間ですから、何か良からぬ気配をこの映画から感じ、観ることを半ば本能的に拒絶していたのです。

その理由がわかりました。
恐ろしいと感じるまでに奇抜な映画でした。五人の子どもがチョコレート工場に招待されて1人ずつ減っていく展開なんて、ホラーじゃないですか。加えて減り方も、体が青くなって膨らんだり、チョコレートに飲まれて吸い込まれたり、気持ち悪さと陽気さが入り混じった、狂気といえるだろう映像で、下手したらドラッグ映画です。これは子ども向けなんですか?
子どもの頃の僕の本能は優秀でした。あの頃に見ていたらトラウマ必須でした。

今だからこそ、あの狂気が、どこか風刺的で寂しげな雰囲気を醸し出していることに気がつきます。欲望の末路や、親が当たり前にいること、恵まれた環境への感謝を感じとりました。

ウンパルンパという小さいおじさんたちの存在もまた狂気を感じます。でも都合がいいですよねあいつら。怖い存在かつおふざけの存在にもなれますから。困ったらウンパ。

けれども、今でも名作としてこの世に残っているのは、単に狂気が広がっているからではないんですね。チャーリーが工場に行くまでのパートがすごく好きで、チャーリーの真っ直ぐな家族への愛情が、家族のチャーリーへの愛情が、他のガキどもと対比になっているからか、すごく心に沁みて、泣きました。具体的には、おじいちゃんがへそくりでチョコを買ってこいと言うところと、工場に行けるチケットを売って家族を養うとチャーリーが言ったところです。チャーリーは可哀想だけれど、愛おしく、また芯の強さも感じます。

ウィリーウォンカの境遇に関してはあまり乗れなかったのは何故ですかね。ウィリーがどんな人間なのか、ということがこの映画の一種ミステリーな部分でもあるのですが、あまり興味がそそられませんでした。最後にウィリーまでもを救うというのは良かったんですが、個人的には、ウィリーは終始謎の人物のままで、子どもたちだけに焦点を当ててもよかったんじゃないかと思います。それだけチャーリーの心的な強さや、他の子どもたちの偏ったキャラクターが気に入っていました。

世界観という観点からは、子供心をくすぐるものがありました。チョコレートの川や、食べられる雑草や、まるでヘンゼルとグレーテルの拡張みたいで魅力的ですよね。アリの巣を思わせる工場の奥深い中身も、全貌が見えない規模感のワクワクがあります。

子ども向けだからといって、勧善懲悪の平和で安全な物語にする必要はありませんよね。伝えたいメッセージを込めて、狂気と恐怖のエッセンスを加えても(若干狂気が多すぎですが)、子どもはそこに魅力を感じないほど子どもではありませんし、大人も思う存分楽しめます。今観てよかったです。非常にバランス感覚に優れた、老若男女向けと言ってしまってもいい作品だと思います。

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