植物と暮らす おうち時間 フードスタイリスト / 城素穂さん

今回ご登場いただくのは、食周りのスタイリングを手掛ける城素穂さんです。
城さんは、写真家の夫、スキッパーキの愛犬 “もずく” と築30年ほどの味わいある住まいで暮らしています。
この家に一緒に住みたいと思ったのが結婚するきっかけのひとつでもあったとか。
家に居ることが一番好きと語る城さんの植物との暮らしをお楽しみください。

お気に入りのものと一緒に、大好きな家を育てあげていく

-植物が心にもたらしてくれる作用はどんなものだと思いますか。
「季節の移り変わりを感じさせてくれることでしょうか。
我が家は借家なのですが、共有の庭があり、立派な柿の木が植わっています。春に芽吹き、初夏には小さな白い花から実の赤ちゃんができて、夏から秋にかけてゆっくりと育っていく様子や、紅葉していく姿は、1年を通して生き物が巡っていることを教えてくれますね」

「植物や動物は、いろんな意味で自分に余裕がないと育てられないなと感じています。
私は2年ほど前に結婚して、愛犬の “もずく” を飼い始めました。
一人暮らしだった頃は、無意識の内に仕事に忙殺されて、全くそれどころではなかったなと今になって思います。また、何かを育てるゆとりは持っていた方が良かったなとも。
そういう意味で、意識的に植物を育ててみると、ふと心を溶かす時間のようなものが持てるのではと思っています」

-どんな植物が好きですか。
「共有の庭が十分美しいので、いつも室内に植物を飾っているわけではないのですが、求める際は枝ものが多いです。
植物に限らず、基本的に大きいものに惹かれるので。余談ですが、我が家にある大きなもののほとんどは私が求めたもので、独身時代から集めているカゴや食器棚のサイズには夫も驚くほどでした」

「そんな好みもあって、春から夏にかけてはモクレン、秋から冬にかけてはヤドリギを毎年欠かさず飾っています。
比較的持ちが良いのと、ドライになった葉っぱが綺麗なのも好きですね。
植物に関して詳しい方ではないので、切り花も一種類をまとめて飾ることが多いです。そうすると花の持ちも一定で、お世話もしやすくなります」

-確かに花を一種類にするだけで、周りのものと調和しやすいように感じます。お手入れで気をつけていることはありますか。
「あまり難しく考えすぎず、3日にいっぺんくらいの頻度で水切りをして、違う花器に活けかえる程度ですね。
私は30代のはじめに、ベルギーのレストランにて遊学していた時期がありました。そのレストランでは、こんな風に決まって大きなガラスの花瓶に百合の花束の組み合わせだったのを思い出します」

-お気に入りの花瓶はありますか。
「3年ほど前に小前洋子さんという花器作家さんを知り、すっかり彼女の作品に魅了されています。彼女の花器を使いたくて、お花や枝ものを購入することが増えましたね。
独特なフォルムや大胆な柄が多いのですが、不思議とどんな植物も受け止めてくれる度量の深さがあるんですよ」

-住まいのしつらいに惚れ惚れします。ものを集めつづける理由はありますか。
「私は家に居るのが一番落ち着くんです。できればずっと家にいたいタイプ。
また結婚してから少し体調を崩して家にいる時間が増えて、家の中を整えたり、夫のシャツを洗ったりという日々の小さなことが、自分自身を整えてくれることも実感しました。
なので、自然と心地よいものに囲まれて過ごしたいですし、自分の生活にあったものを選びたいといつも考えています」

「職業柄、家に食周りのものはたくさんありますね。
ひとまず求めて使ってみて、自分の生活に合わないなと思ったら譲ってしまうことも。
特に何か集めようという気持ちがあるわけではないのですが、夫婦とも昔からものが好きでギャラリーやお店の展示会に出かけるのが楽しみの一つなんです。
はじめは生活道具に興味を持ち、徐々にアートピースなども増えていくようになりました」

-家ではどのように過ごすのが好きですか。
「食べることが好きなので、食事の時間は大切にしています。
犬がいることもあって外食はぐっと減り、家で食べることがほとんど。
夫も家で食事をする機会が多いので、結構まじめに毎食作っていますね。評価は厳しめなこともあって、日々鍛えられています」

「時折、お世話になっている方々を招いて食事会をすることも。
近くに信頼できる食材屋さんやお魚屋さんがあるので、その日使いたいうつわを持っていってオードブルをお願いすることもあります。
どうしても人を招くとバタバタしてしまう部分もありますが、楽しく過ごしていただいている姿を見ると準備の大変さは一瞬で吹き飛んでしまいますね」

城さんご夫妻のもの選びはセンスと言ってしまえばそれまでですが、愛を持った目で、まるで我が子を迎え入れるように一つ一つ選んでいるのではないでしょうか。
結婚のきっかけにもなった住まいが、ものによって着々と育て上げられているような、そんな気がしました。

うかがった人

城 素穂 / フードスタイリスト
大学卒業後、スタイリストchizuのアシスタントを経て独立。4年ほど、食まわりのスタイリストとして活動後、1年間、ベルギー・アントワープのレストランへ遊学。帰国後、再びスタイリストとして活動。2年前に結婚・病気を機に、しばらく休業。ただいま、夫と、愛犬“もずく”と共に、日々の生活を楽しみながら、少しづつ仕事に復帰中。

https://mi-mollet.com/category/m_joh

photo by Kazuhiro Shiraishi

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