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15_あたらしい組み合わせで巡る、スタディツアー

阿波踊り最終日の8月15日から神山まるごと高専のサマースクールが始まった。天候が不安定だったためスケジュールの変更もいくつか。無事に最終日を迎えた20日からは城西高校神山校のスタディツアーで岐阜、三重を訪ねた。


あたらしい組み合わせで、同じ景色を見る

2つの視点(地域と学校の関係/農業高校の学びとは)を携えて巡ったスタディツアー。私は神山校で迎える8年目の夏。今後もかかわり続ける(あるいは力を注ぐ)ための自身の熱源を探るような時間に思えた。

スタディツアー訪問先
岐阜県立森林文化アカデミーmorinos
・飛騨市教育委員会(飛騨市学園構想)/Edo New School
愛農学園農業高等学校(2017年に続いて2回目)

スタディツアーの翌週は、町内の農家を訪ねる町内スタディツアー。顔を知るフードハブ・プロジェクトのメンバーから聞く話も、神山町で新規就農した松本さん夫妻の話も、とても身近で具体的だった。

動き続ける高校プロジェクト

城西高校神山校 は、神山町が予算を組み、神山つなぐ公社がコーディネーターを派遣して授業づくりや地域との連携に力を注いできた県立の農業高校(分校)で、2019年の学科再編を機に神山分校から神山校へと校名を変えた。前職フードハブ・プロジェクトのメンバーは2016年から高校の学科再編に向けた会議にも参加してきた。授業でのかかわりは、生徒たちと一緒にお弁当を100食販売するという(準備はたった2ヶ月)…かなり力まかせのお弁当プロジェクトからスタートしている。

2017年からはまちをフィールドに学ぶ「神山創造学」というオリジナルの授業が始まり、2018年からは社会人講師として授業に入るようになった。2019年には学科が再編され、最大5名の県外生の受け入れが始まる。
(・・・略・・・)
激動の数年間を経て、今がある。

変わるものと、変わらないもの

多くの公立学校では8年〜10年経てば職員は入れ替わってしまう。今回のスタディツアーメンバーも、前回のスタディツアーとは異なるあたらしい組み合わせで出向いた。今後も中にいる人は変わり続ける。その時々で立ち返ることのできる「神山校のあり方」をここで一度見直したい。今いる先生方と共通認識を持ちたい。変わらず目指していくものを言葉にしたい、というのが今年度実施している一連の研修の大きな目的でもある。

2019年にシードバンクの視察に行った先生が、翌年「実習圃場で在来の作物を育てていきたい」と話した時にはスタディツアーで同じ景色を見てきて良かった!と思った。今回のスタディツアーの学びも濃かった。見聞きしたことから、神山町の取り組みのヒントを見つけられると良いなと思う。

神山校のこれまでの活動は森山円香さん『まちの風景をつくる学校』に詳しいのでぜひ書籍を。

プロジェクトがエネルギーを持ちながら進んでいくためには、何があると良いのか。
言い出しっぺや熱量のある人がいなくなると途端にしぼんでしまう活動を何度か見てきた。やみくもに継続することだけが良いとも思わない。終わる、閉じることも視野に入れながら、人を含む資源と状況が噛み合う、ちょうど良いかたちを見つけていければと思っている。
変わり続ける学校で、変わらず大切にしたいものは何なのか。そこにいる人たちで考えてつくっていける余白のある〝なにか〟をつくっていきたい。

関係者の言葉を編んでいく

今回の視察先の一つ、Edo New Scool で話を伺った際、行政や学校が進める飛騨学園構想(保小中高特の15ヶ年の学び)の実行にあたり、細やかなヒアリングとマネジメント、個別のコミュニケーションを積み重ねたプロセスに圧倒された。管轄の異なる機関(保育所/小中学校/高校)が同じ目的を共有しながら進んでいくための共通言語は必要。その言葉の理解を深めるために、抽象度の高い言葉を具体が想像できる言葉に言い換えるプロセスを踏み、日々の教育活動に落とし込んでいく流れをつくっていた。
神山校では、すでに実施している具体的なプロジェクトの学びを少し抽象度を上げた言葉で整えていくと良いのかもしれないな…などと思う。

楽しく、おもしろがっている大人たちの姿

今回のスタディツアーで出会う方々が、総じて熱量高くて楽しそうで、刺激を受けた。

岐阜県立森林文化アカデミーは社会人が入学する学校でもある。学生と先生の区別がつきづらい構成。学生も先生方も生き生きとしていてとても楽しそうだった。研究室が並ぶ棟はなにか面白いことが起こりそうなワクワクする空間だったし、学舎をより良くするのは学生たちであるという意識が通底しているような空間。自分たちで創り続ける、変わり続ける場としてのあり方を見せてもらった。

愛農学園農業高等学校では、学びと暮らしが連続している(先生方は暮らしと仕事の境目がないような働きをされている)その中に生徒がいる、という学校のあり方を見せてもらった。受験を控えた中3生にも、難しい言葉のまま学園の目指すものや思想を伝えているそう。それが響く生徒に来てほしいとおっしゃっていた。

神山校で、入学してきた生徒を3年間でどう育んでいくかという議論は重ねているけれど、できることなら入学時点で農業や森づくり、環境、食関係に関心がある生徒の割合が多いといい。高校としてのあり方をよりはっきりと伝えていくことで、中学生(や先生方)に届きやすくなるかもしれない。

愛農学園農業高等学校の食事。豚肉、野菜、米は高校で育てたもの。飲料はお茶か牛乳(搾りたて)。

今回見聞きしてきたことをもとに、年末に向けて関係する人たちとの話し合いが重ねられる。すでに町内のスタディツアーを経て動き出しているものごともある。出会うことで勝手に動き出すって、すごくよい状況に思える。

愛農学園農業高等学校の学校づくり(減築して校舎を建て直した)が本になっている。丁寧に自分たちの思いを実現するプロセスに、学ぶことがたくさん。