見出し画像

フォースマジュールの時代 〜コロナとの真の闘い〜

私は兵庫県に住まう地域の住民が安心して住宅の改修ができる環境を整えることを目的に掲げたNPO法人に理事として参加しています。兵庫県下の地域密着のリフォーム会社、建築会社が集い、表面的に見た目をきれいにするだけのリフォームではなく、温熱環境のバリアフリーや、耐震構造の改修工事等安心して暮らせる快適な住空間を新築だけではなく、リフォームでも実現出来るように様々な取り組みをしています。そのひょうご安心リフォーム推進委員会には、建築事業者だけではなく、ほとんどの住宅設備機器メーカー、流通商社等のサプライヤーも賛助会員として参加してくれています。毎月の定例会ではその賛助会員からの情報提供の場も設けているのですが、コロナによるパンデミックが勃発してから後は設備機器の供給が滞っていることに対して、ひたすら謝罪の場と化してしまっています。

謝罪のオンパレード

実は私が代表勤めているつむぎ建築舎でも給湯器やガスコンロ、ウォシュレットなどの機器が納入されず、工事途中のまま年越しを迎えてしまう現場が複数あります。数ヶ月前に発注しているにもかかわらず、いまだにメーカーからは納期未定の回答しか返っておらず、工事完了のめどが立たない状態です。お客様にはメーカーのサプライチェーンの中枢になってきた海外工場がロックダウンの影響で生産が停止されているなどの理由を説明し、一応ご納得いただいてはおりますが、非常に心苦しい状況であるのに変わりはありません。それはそのまま、商社やメーカーも同じ立場であり、会合で集まるたびに各社謝罪のオンパレードになってしまっている訳です。

住宅産業冬の時代

先日行われた今年最後のNPO団体での定例会でもやっぱり同じような話が出ましたが、今回は一歩踏み込んで日本国内では落ち着きかけていたコロナがヨーロッパやアメリカではまたぞろオミクロン株での爆発的な感染が広がっており、サプライチェーンの毀損は短期的な問題ではなく長期トレンドとして見るべきで、今後、数年単位で設備機器関係の流通が滞り続けると認識した方が良いのではないかとの意見が交わされました。また、生産と流通が遅れているだけではなく、希少素材の争奪戦が激化しており、商品によっては100%以上の値上げを予定されているものもあり、為替相場の変動などを鑑みると圧倒的なインフレーションが同時に起こる状況になってきています。住宅関連事業は非常に厳しい冬の時代に差し掛かっていると認識を新たにした次第です。

免罪符の氾濫

そんな会議の中で話題に上ったのはフォースマジュールが世界的に広く宣言されたり運用され始めているとの情報でした。FM宣言とは、英文契約にある「不可抗力」を意味するフォース・マジュール(Force Majeure)条項を適用させて、契約を守れないことを宣言するとともに、そのことに責任を負わない(免責)ことを取引関係者に示すとの事で、人知の及ばない災害や戦争などの理由で目的を達せない場合に責任を回避するのと同等の扱いでコロナ禍を捉え始めているとの事でした。ニュースでも話題になった東レのFM宣言はコロナに起因したものではなく、アメリカを襲った寒波の影響との事ですが、ヨーロッパでは既にフォースマジュールを発動しているケースが多くあるらしく、今後、この免罪符を使って契約の不履行が常態化する危険を孕んでいるを感じました。

コロナとの本当の闘い

新型コロナによるパンデミックは感染による死の恐怖と共に誰しもが「どうしようもない」と諦め無ければならない体験を世界中に蔓延させました。約束を果たせない、破約は人の福を奪い自分の信頼を失墜させます。しかし、確かに自分の力ではどうしようもない事由で諦め無ければならない事はあるのですが、諦め、割り切りは魂を弱くすると言いますし、諦め癖がつくと約束を守る事自体に対して意識が薄くなりがちです。コロナや気候変動の影響でフォースマジュールが世界中で宣言されるのが常態化するというのは、人と人を繋げる根っこの部分である約束を守るということが崩れ去り、誰もが疑心暗鬼に陥る可能性があるのではないかと感じた次第です。確かに事実としてどうしようもない事はありますが、約束を守ることに対する執着を忘れてはならない、諦め悪く生きようと改めて胸に刻み込みました。それが本当のコロナとの闘いではないかと思うのです。

____________________________

顧客との約束を守る為に事業承継に取り組んでいます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?