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情けは人の為ならず、己の未来の為なり 〜パンダノン島井戸掘りリベンジツアー@タビスキ〜

NPO法人タビスキは旅好きの奥田智恵子さんが、若かりし頃、バックパッカーとして世界を旅した時に感じた世界の課題、不条理、どうしようもない蹉跌を少しだけでも何とか成らないか、もしくは、良くなるためのキッカケぐらいは作れないか?との想いから、スタディー・ボランタリー・ツアーなる、旅する事で世界を知り、また、行くだけで少し世界を良くするソーシャル・アクションを継続されている団体です。私はその設立前から相談に乗っていたこともあり、奥田さんの想いに強く共感してメンバーの一員の様に多くのプロジェクトに関わることになっています。そして、今回のパンダノンへの旅はこれまでで最高の旅になったと感じています。

今回、昨年に引き続きフィリピンの離島で電気も水道も警察も病院もないスラム、パンダノン島に行ってきました。前回、非常に厳しい生活をしているパンダノンの人たちの支援を続けているNPO法人ゴーシェアさんとの企画を立てる際に「島に最も必要なものは何か?」との問いに対する答えが島に真水が無いことだとの結論に達し、日本各地で人力で浅井戸で水脈を探り当て、圧倒的な成果を出し続けている「井戸掘りの達人」西田稔氏に協力を依頼して、単管を人力で打ち込む西田式井戸堀のノウハウを実際に井戸を掘ってみるのと同時にNPO法人ゴーシェアのスラム出身の若者たちに伝えようとのプロジェクトが立ち上がりました。

中途半端な軽い約束としこり

私は日本で西田式の井戸堀をワークショップ形式で行い、水を出せずに失敗に終わった経験があり、その悔しさを晴らしたいとの想いもあって、昨年末、前回のツアーに参加しました。結果、水脈には辿り着けましたが、到底井戸として使える代物にはならず、島民の暮らしに何ら変化を与えることは出来ませんでした。時間切れと準備不足に継続的な支援の必要性を感じながら、また来るよ。と、悔しさ半分、社交辞令的な別れの挨拶半分で、中途半端な約束をしてパンダノンを後にしました。ただ、約束を違えれば人の福を奪う、破約失福と倫理法人会の栞に書かれているのを繰り返し読み続けてきた私としては心の中に小さなしこりを残したまま、どうしたものかとの想いが奥の方に沈んでいたのでした。その時の悔しさまじりの記事はこちら。

葛藤を乗り越えるのは熱量

私は複数の法人の代表を務めており、また研修事業の講師やマイスター高等学院の校長と教師役等も担っています。年間通してスケジュールはほぼ埋まってしまっており、気楽な感じで友人とふらっと食事に行く時間を確保するのさえままならない程、あくせくした日々を送っています。それ自体は人生を賭けて解決したい課題を見据えて、志を達する為に行っていることなので、喜んでそんな生活を送っているのですが、とにかく自由になる時間があまりありません。そんな中、しょっちゅうフィリピンに行くのはかなり難しく、前回のリベンジを果たしたいとの想いもありながら、具体的な日程を確保するのを躊躇していました。しかし、旅することで世界を良くするとのヴィジョンを掲げた奥田さんはそんな私の煮え切らない態度などお構いなく、前回の井戸掘りのリベンジを敢行すべく、どんどん計画を進めていき、半年も経たないうちに早速、再訪の企画を立ち上げられました。私も引き摺り込まれるかの様に、力のこもっていなかった約束を果たすべく日程を確保、今回のフィリピン行きを決めました。

熱い想いを持った奇特な十人

日本からセブ島からボートで1時間かかるパンダノン島まで、片道、丸一日かかります。コロナ以後、直行便がなくなり、マニラでトランジットが必要になったこともありますが、実質、往復で丸2日使ってしまいます。
5日間の行程で丸2日を移動、2日を井戸堀り、水脈探しにあてた今回のツアーは明確にパンダノンに井戸を設置する目的に集約されており、旅費を払って単管を地中に打ち込む作業をして、ホテルではなくパンダノンの民家に泊まるという完全なるボランタリーツアーに参加する奇特な人がいるのか?と正直疑問に思っていました。しかし、蓋を開けてみると井戸堀名人の西田師匠をはじめとして私達が所属する経営実践研究会のメンバーを中心に建築業界の経営者等が10名も集まりました。奥田さんの純粋で熱い想いが伝わったのだと思います。

離島での井戸堀の手順公開

今回のパンダノンでの西田式井戸堀ツアーの流れを時系列で整理すると以下の通りです。ちなみに、西田式の井戸堀とは、単管にハンドハンマーと言われる筒状の錘を上から叩きつける単純な方式で、2mから順番に6mくらいまでの単管を打ち込んでは引き抜き、長さを伸ばしてまた打ち込んで水脈まで届かせるというものです。今回は設置予定のハンドポンプの能力から6mの水脈に届かせることを目標にしました。

①オンラインmtgを行い、前回の反省(フィリピンの単管が弱く、地中に打ち込めなかった)を元に資材の調達、工具の準備などを話し合い、念入りに作業のイメージを共有し、現地調達と日本から持ち込む資材(単管)を明確にして航空便の持ち込み荷物の重量及び個数を計画


②セブ島に到着後、まず事前に依頼していた現地の溶接工の工房に行って日本から持ち込んだ単管を溶接し、2mから6mの補強した単管資材を準備。ボートに積み込みパンダノン島に出発

③パンダノン島に到着してまず、前回、岩盤に単管が負けた現場にて補強した単管で岩盤の貫通にチャレンジする班と、2つ目の井戸設置の候補地に分かれ、井戸堀を開始

④6m近くの水脈にたどり着いたらポンプで汲み上げ、水質の確認とハンドポンプを設置して使える井戸にして完成

全敗か、ミッションコンプリートか、

テキストに書くと至ってシンプルですが、上記の工程を2日間みっちりと行い、結果的に2箇所の井戸の設置とあまり水量が出ませんでしたが3番目の井戸の確認までを行うことができました。そして、残念ながら全ての水脈から汲み上げられた水は真水ではなく海水でした。我々が目指していたのは、水のない島に飲める水を提供することで、島の暮らしが変わる可能性があるのではないか。だったので、この結果は非常に残念で悔しい思いをしました。西田師匠は3番目の井戸でも海水だったのを確認して全敗か、と落胆の表情をされていました。ただ、珊瑚礁の島に真水の水脈がなくても別段不思議なことではなく、ある程度予測できていたことでもありました。
しかし、水を島外から買って運んでくる人たちにとっては、飲料以外に真水を使えない訳で、掃除や洗濯、食器の洗い物からトイレの排水まで生活用水のほとんどを海から汲み上げてきた海水を使っています。今回掘り当てた水脈は海水ではありましたが、井戸が設置されたことで、とても便利になるのは間違いなかったようで、現地の人達に落胆されるどころか、とても喜んで貰えたのが救いでした。真水だろうが、海水だろうが井戸は井戸です。

情けは人の為ならず、人は人でしか磨かれない。

今回の旅で私が噛み締めていたのは「情けは人の為ならず」との言葉です。フィリピンのスラムに住まう子供達になんとか未来への希望を与えたいと、現地で地道にな支援を続けるゴーシェアのジェフとSEIKOさん、その二人の姿に胸を打たれて、行動を起こした奥田智恵子さん、奥田さんの熱心な呼びかけに答えた私たち建築畑のオッサン連中、皆が人の情に絆されて行動に突き動かされたのは間違いありません。しかし、私が得たのは、小さな約束を守れたことによって得られた自己肯定感であり、やっぱり、為せばなる!との人の可能性を信じることの大切さ、そして、前回、遠巻きにみていたパンダノンの島民たちが今回、オレに任せろ!くらいの勢いで積極的に井戸堀に参加してくれて、一緒に汗を流した際に生まれた一体感、ポンプの先から溢れる水を大勢の人たちと見つめた時の熱狂は人生の宝を手に入れたと言っても過言ではありません。本当に素晴らしい機会を頂けたと心底感謝すると共に、この感動を多くの人と共有すべく、マイスター高等学院の課外授業の一環としてボランタリーツアーをカリキュラムに組み込むことを決めました。
人は人と交わる事でしか磨かれない、そして人間は一生のうち 逢うべき人には必ず逢えるしかも一瞬早過ぎず、一瞬遅すぎない時に。そんな本質的な学びを得る機会を自分だけの中に止める事なく、広げていきたいと思います。ご興味がある方、ご一緒しませんか。

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人間性を高める教育をカリキュラムの柱に据えた高等学校を運営しています。
2024年4月入学、関西一円にて受け付けています。


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