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半数の「外国籍」の子どもたちにも、家庭ごとの寄り添いを──写真で知ろう!小規模保育【保護者支援】

例年、在園児のおよそ半数が外国籍の子どもとなる当園では、日本語がわからない保護者を想定して、入園前から丁寧なヒアリングを行ってきました。不安な「異国での子育て」に対し、密で安心感のある関係性をつくれる点で、小規模保育園が果たせる役割の大きさを感じています。

<キャリー保育園にしおおじま/東京都江東区>

【園児数】11名(外国籍6名、日本国籍5名)
【保育者数】5名
(2023年11月時点)

■ ねらいと配慮

もともと家庭的保育事業の一環として団地の一角でスタートした当園は、土地柄もあって、当初から外国籍の家庭の利用が多い施設でした。2015年の小規模保育園化を経た今も、近隣の外国人の方々のコミュニティ内で「キャリー保育園がいいよ」と紹介があるようで、中国やフィリピン、インドなど、多様な国籍の方から入園のお申し込みがあります。

ただ、口コミで信頼いただいているぶん、ほとんどの方が事前の園見学に来られないので、日本語をどの程度理解されるのかわからないまま、入園前の面談で初めてお会いすることになります。面談前にお渡しする案内から、ひらがなや付箋を用いて細かな補足をしていますが、実際「日本語があまりわからない」という方も多く、当日の提出書類にも「何をどう書けばいいかわからなかった」とおっしゃるケースは少なくありません。

なので、面談は日本国籍の方の倍以上(2時間〜2時間半を目処)に設定し、入園までに準備していただくものや、通園時のルールなどを一つひとつ確認していきます。翻訳アプリなども用意しますが、何より目を見ながら、あるいは実際にモノや設備を手で示しながら、口頭でしっかり意思の疎通を図るようにしてます。
また食文化の違い、特に信仰による理由から、園で食べられないものがある場合も多いため、「食」に関する聞き取りは特に重視しています。「鶏肉はダメ」でも「鶏ガラの出汁はOK」な場合もあり、同じ宗教でも一人ひとり細かな確認が必要です。一方で、アレルギーの有無を確認するための「家庭で食べておいてもらいたい食品群」には、発酵食品など日本固有のものもあり、「その食材がどういったものか」をイラストも交え丁寧に説明していくことも大切です。

■ 振り返り

そうしてできるだけスムーズな入園を心がけますが、実際に入ってからでないと理解が難しい内容もあります。なので入園後も、必要な持ち物や、園での活動内容がわかるように、その都度ふりがなの付いたお手紙や、日本語と英語で行事を説明した掲示を出すなど、工夫を重ねてきました。

食に関しては、それぞれの信仰の戒律に触れるもの(イスラム法におけるハラールなど)に対し、基本的にはアレルギーと同様の「除去食」を用意しますが、メニューの構成上、ほぼ食べるものがなくなってしまう日も正直に言えばあります。なので、その時は保護者と相談し、負担のない程度に主菜を持ってきてもらうこともしています。

面談時と同じように、やはり口頭でのやり取りが伝わりやすく、かつこちらも理解しやすいケースが多いので、送迎時のコミュニケーションは特に意識するようになりました。

他方で、子どもに関して振り返ると、「外国籍だから」と特別困ることは多くありません。多国籍の子どもが混ざっていることが理由で、うまく一緒に遊べなかったり関われなかったりすることは、ほぼないように思います。
保育士の言葉がうまく伝わらないなと感じたときは、イラストカードなどで視覚的に伝えることが、どの子どもに対しても大切な関わりになっています。保護者に母語を伺う場面もありますが、そもそもまだ言葉を覚えたばかりの、あるいはこれから言葉を覚える低年齢の子どもたち。一人ひとりの発達に合わせ、保育士が「こういうときは◯◯って言うんだよ」などとゆっくり伝える関わりを通じて、言葉に耳を傾ける機会が自然に増えているのではと感じています。

■ 「小規模保育」としての視点

外国籍の方への支援はどの園でも必要なことですが、個々の家庭へより丁寧な関わりがしやすい点は、小規模保育園の一つの良さだと感じています。一人ひとりの保護者が園長と直接コミュニケーションを取れる時間も増えるため、行政とのやり取りが必要なシーンなど、困りごとへの対応もしやすい状況にあります。

異国での子育ては誰もが不安を覚えます。その中で、家庭の延長にある、小じんまりと温かい場所だと、子どもを預けやすい。実際に保護者からそういった声も受け、小規模だからこそ選んでもらっていることを感じました。
園では保護者同士の交流の機会を積極的に設け、園を中心にして各家庭がつながれるようにも配慮しています。文化圏が異なっていても子どもや保護者が孤立することなく、すべての家庭が安心して暮らしていける環境を、この園から育んでいければと考えています。

【園情報】
キャリー保育園にしおおじま(スリーシーズ株式会社)
https://threecz.co.jp/service/nursery/nurserylist/carry-nishioojima/
東京都江東区大島4-1 UR大島四丁目団地2号棟1F
定員11名
小規模保育事業A型・管理者設置あり


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