福利厚生産業を変革する
HQ(エイチキュー)代表の坂本です。
21年3月、福利厚生産業を変革する会社として、HQを創業しました。
そして、創業して約3年、24年4月に、
「創業からの3年間の全ての仕事はこのサービスを世に出すためにあった」と言える念願の新サービスをローンチしました。
次世代福利厚生プラットフォーム「カフェテリアHQ」です。
このカフェテリアHQは、
「福利厚生をコストから投資へ」
を体現する全く新しい福利厚生です。
本ローンチは、”福利厚生産業の変革開始の合図”です。
私たちは、長年変わっていないこの巨大レガシー産業をかならずアップデートしていきたいと思います。
このnoteでは、
Why:なぜ福利厚生産業を変革したいのか? なぜ起業したのか?
How:福利厚生の実態は? そしてそこにどう向き合うか?
What:産業変革を通じて何を成し遂げるのか?
について書いていきたいと思います。
(ちなみに、TOP写真は、ローンチ記念に行ったイベント「HQ Unleash 2024」でのBiz Team社員の記念写真になります。)
Why - なぜ起業したのか? 使命として福利厚生産業の変革を成し遂げる
そもそも何故そんな産業変革にチャレンジしようとしているのか? 何故この領域で起業をしたのか? という点について少しお話させてください。
実は、私自身は、元々、起業願望は全くないタイプでした。
新卒では金融機関にて、M&Aなどに携わり、その後、ベンチャーの世界に入ったあとも、CFOとして、IPOを担当したり、コーポレート(人事、財務、総務などなど)を管轄していました。
いわゆる参謀タイプのキャリアであり、「起業したら自分は成功できるタイプ」とも「自分の会社を創ってみたい!」とも思ったことはありませんでした。
どちらかといえば、大企業やプロフェッショナルファームで、地味に良い仕事をし続けるというのも性に合っているタイプです。
(そして、そのアセスメントは間違っておらず、起業は苦痛の連続で、創業して三年立った今でも、正直、二度と起業はしたくないなと思っています。)
では、なぜわざわざ起業したのか?
何だか大それた言い方になってしまうのですが、
「この変革は社会に必要不可欠であり、そして今、自分がやらなければいけない」と思ったからです。
より具体的には、このようなことを思いました。
①Why This? - 今の福利厚生産業には”不”に溢れており、変えなければいけない領域であるから。
②Why Now? - 20-30年変わらないままだったが、いよいよ変えられそうな機運があり、一生に一度の好機だから。
③Why Me? - そしてその運命を引き受けるべきは日本のなかでも自分ではないか、と思っているから。
(なんて自分勝手な使命感なんだと改めて思います。笑)
それぞれについて簡単に説明させてください。
①福利厚生産業の”不”
詳しくは、次の章で話したいと思いますが、
私は「福利厚生はHRで最後に残された巨大な”不”」だと考えています。
福利厚生産業は1兆円を超える隠された超巨大マーケットにもかかわらず、この2-30年全く変わっていません。社員、経営、人事の3者全員が大きな不満を抱えている”不”に溢れた業界です。
採用領域は、ビズリーチやIndeedによって大きな変革が起きましたし、会計や労務、人事はマネーフォワード、スマートHRなどによって現在進行形で改革が起きています。2-30年前と全く違う風景がそこにあります。
一方、福利厚生は・・・誰かが絶対に変革しなければいけない領域だと感じます。(詳細は次章にて)
②今こそ変革のタイミング
そして、2020年代に入り、いよいよ「福利厚生の大変革への大きな追い風」が整ったと感じています。
特に、コロナを起因とした「働き方の大変革」と、日本のマクロ経済トレンドを起因とした「人的資本経営」の2つの潮流によって、福利厚生に対するニーズは劇的に変わりつつあります。
女性活躍、ダイバーシティ、子育て支援、働き方改革、ウェルビーイング・・・これらは、たった10年前には、殆ど見られなかった言葉です。
一方、現在では、実に多くの日本の企業組織のメインストリームで、”旗”が立ち始めています。大きな変革ができる土壌ができつつある。
そんな折に2020年にコロナが起き、働き方改革は爆発的に進みました。
”人的資本経営”という不可避のトレンドも生まれました。
少し大げさな表現かもしれませんが、「ついに黒船が来た」「時が来た」と私は強く感じました。「今こそ福利厚生が変われるタイミングなんだ」と。
日本社会において、ついに個と組織の関係性は大きく変わる。
そんな100年に一度の変曲点を迎えていると感じています。
③では、誰がその変革をやるべきか?
創業前、「福利厚生産業の変革はだれによって行われるべきか?」と考えたとき、自然と「実はそれは自分がやるべきではないか?」と直感したのです。
福利厚生は、人事労務、税務、法務などの管理系論点が複雑に絡み合う領域です。また、現場視点だけでの解決が難しく、どうしても経営的な観点での検討、意思決定が必要になります。そして、必要なプロダクトは非常に複雑で、長期に渡る事業開発が必要不可欠です。
「福利厚生は難しい。変な領域だ。そう考えると、私は、実は最適な人物かもしれない。この業界を変える運命をもっているのかもしれない。」
幸運なことに、まだ若い頃に急成長する上場企業の取締役CFOになる機会に恵まれ、人事企画、経理、労務、総務、法務、情シスなど、全ての管理部門に深く関わる経験がありました。
また、数千名の企業の組織経営やCFO業務に従事するなかで、経営視点での意思決定経験を一定得られていましたし、新規事業の立ち上げなどをリードしたこともありました。同年代で、なかなか同じ経験をした人はいない。
そして、一番重要なことに、自分の福利厚生という領域への熱は、他の人と比較して物凄い強い。これまでの社会人人生のなかで、事業創出や利益向上よりも、社員自身の人生が、仕事だけでなく、プライベートを含めて、その人らしく輝いていくことに、大きなやりがいを見出していることに気付いていたのです。
以上の①②③を通じて、
「いま創業しなければ絶対に死ぬときに後悔する」
と感じ、
内心は「まさか自分が起業なんてすることになるとは・・・」「今までお世話になった会社になんて伝えようか・・・」などと思いつつも、かならずこの産業変革をやりきることを心に決めました。
How - 形骸化する福利厚生と変革の方向性
では、福利厚生は、どう変わっていくべきなのでしょうか?
そもそも、実態として、どんな課題がそこにはあるのでしょうか?
私は、HQを起業してから何百回人に対して、「あなたは”福利厚生”を使ったことがありますか? 一体どんなイメージを持たれていますか?」と質問をしてきましたが、典型的回答は以下のようなものでした。
はっきり言って、現状の福利厚生への満足度は非常に低いものです。
「福利厚生は形骸化していて当たり前」というのが実態、といってもいいかもしれません。
定量的なデータとしても、この実態をあらわす三つの数値があります。
社員課題:4人に1人しか、今の福利厚生に満足していない。(*1)
昔から変わらない使いにくいUI/UXと分厚いマニュアル。何万ものサービスから探索しなければならない選択体験。
経営課題:福利厚生の8割を超える用途が娯楽系(*2)(エンタメ、食、財形、旅行等)
本来使われるべき、子育て、介護、健康、学習などには使われている形跡がほとんどない。
人事課題:約8割の会社は10以上の福利厚生施策を制度運営(*3)
使われていないのに、運用が非常に面倒になっている状態。
※1 自社の福利厚生に「満足」または「やや満足」と回答した社員の割合 「企業における福利厚生施策の実態に関する調査 ー企業/従業員アンケート結果」
※2 余暇/生活支援・食/財形/保険/その他に、カフェテリアプランの付与ポイントが利用された割合 「旬刊福利厚生2020年 8月下旬号 カフェテリアプランの配分額、メニューと利用実績」
※3 独立行政法人 労働政策研究所・研修機構「調査シリーズ No.203『「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」―企業/従業員アンケート調査結果―』」 従業員規模300人以上
社員(福利厚生の享受者)、経営(福利厚生のスポンサー)、人事(福利厚生の運用者)の全てが不満を抱えている。
このような形骸化している実態は、なかなか変わらず、むしろ自己強化されるメカニズムが働いていました。
以下のようなネガティブループが回り続けているのです。
組織経営を取り巻く環境は、「画一性の時代」から「多様性の時代」へと大きく変わっているにもかかわらず、
日本の福利厚生は、この20年全く変わらないままです。
そんななか、私たちが社会に問いかけたいのは以下のような問いです。
How - 福利厚生を変革する鍵 - 領域の特殊性に向き合う
形骸化した福利厚生を変えるうえでの”鍵”となるのは、
「では、なぜ福利厚生は変われなかったのか?」という問いです。
福利厚生は実は非常に特殊な領域です。
以下のような特殊性が、福利厚生の変革を拒んできました。
①制度の数がどうしても多くなる。
最初からオールインワンが求められる。
単一サービスだと、社員には認知さえされない。運用もまともに継続できない。
②多様すぎる社員ニーズ。
時間が全くない子育て社員から、入社したばかりの社員まで。それら全ての人に対応する制度にしないといけない。
③娯楽系用途ばかりで、コスト的位置づけ
経営としてコストの位置づけなので、わざわざ変えようと思いにくい。
これらの特徴を考えると、
「福利厚生領域は、スタートアップには不向きな領域」
と言わざるをえません。
実際、営業利益三桁億円を誇る業界大手が産業を支配しており、この領域でまともに成功しているスタートアップは殆ど出てきていません。
私たちも、例外ではありません。創業当初、総合福利厚生サービスをつくろうとして、実力不足を痛感し、断念することになりました。
「最初からこの特殊性を解決するのは無理」と判断し、リモートワーク環境整備というニッチ領域にフォーカスした「リモートHQ」を構築することにしました。
そして、21年11月にローンチしてから約2年半、目の前の顧客とプロダクトに向かい続け、技術資産を蓄積し続けてきました。
実は、リモートHQとカフェテリアHQは、裏側のシステムは9割が同一です。リモートHQをコツコツ磨きこみながら、カフェテリアプランという総合福利厚生サービスのための準備を進めていきました。
そして、ようやく
「本当に3つの特殊性をふまえた、課題解決ができる」
という水準まで至ることができ、満を持して、このカフェテリアHQをローンチするに至りました。
カフェテリアHQは、顧客とプロダクトに向き合い続けた二年半のなかで培ってきた我々の汗の結晶であり、決して創業当初には作れなかったものです。
参考 - カフェテリアプランの再発明
ちなみに、カフェテリアHQという名前に含まれる「カフェテリア」とは、どういう意味合いでしょうか?
もちろん、カフェ・食堂という意味ではありません。
「カフェテリアプラン」という福利厚生の仕組みの名称(人事用語)から取っています。
カフェテリアプランとは、一律の福利厚生を享受するのではなく、「自分に必要な福利厚生のメニューを選択する仕組み」です。
大学のカフェテリアで自由に好きな料理を選ぶことができるようなイメージです。(和食、丼もの、麺類、イタリアン、サラダバー、ハラル料理などなど。多種多様な学生が集まる大学では、全員が豊富なラインナップから選べることが重要。)
企業から、従業員に一定額のポイント(例:年間 10万円相当など)を支給して、従業員はその支給されたポイントの範囲内で用意された福利厚生メニューを選択・利用できます。
実は、カフェテリアプランは、日本の福利厚生の保守本流と言ってもよいくらい、日本企業に広く普及した制度です。
福利厚生大手五社提供分だけでも、なんと200万人以上の社員がカフェテリアプランを使用しています。特に1,000名以上の大企業になると、そのカフェテリアプランの採用率はとても高くなります。
ベネッセがカフェテリアプランを日本で初めて導入し(1995年)、その後、大企業を中心に一気に広がっていきました。
特に日本企業から評価されたのは、
会社の組織戦略にあわせてメニューをカスタマイズできる
社員が自律的に自分に最適なサービスを選ぶことができる
全社員が公平にサポートを得られる
予算を適切にコントロールできる
という点です。(どれも企業としては非常に大きなメリットです)
社員から多様なニーズにこたえられ、かつ公平性を担保できる夢の仕組み。人事や経営にとって、カフェテリアプランはまさに理想の仕組みだったといえるかもしれません。
ただし、結論から言えば、この理想的にみえるカフェテリアプランという仕組みは、大きな成功に至りませんでした。
実は、現状のカフェテリアプランへの満足度は、先ほど挙げたとおり、企業側も、社員側も、人事側も、すべて非常に低いのです。
実際にユーザーの声を聞いたり、プロダクトを触ったりしてもらえれば、すぐにわかります。
「とにかく使いにくい」「選択するのが面倒くさい」
のです。
クリックすると何十枚もの100枚を超えるPDF(マニュアル)がポップアップしてきて、それを読まないと、ルールや操作が分からない
多すぎるメニューとサービス。探索しないといけず、何を選んでいいかさっぱりわからない
結果、選ばれるのは娯楽メニューばかり。(だったら、給与で払った方がよいのではないかと本音では思っている企業が多い)
これまでのカフェテリアプランは、「理念は良いが、実態は伴わない」という典型的な「プロダクトの失敗」だったと思います。
今思えば、SaaSも全く普及しておらず、B2B全般でまともなUI/UXを提供するプロダクトが皆無だった時代に、カフェテリアプランのような仕組みは、時代を先取りしすぎた早すぎる挑戦であったといえるかもしれません。
一時の流行の勢いは収まり、カフェテリアプランはいつしか「大企業の中の化石のようなイケてない制度のひとつ」とみなされるようになっていきました。
しかし、私は、日本の福利厚生を学べば学ぶほど、このカフェテリアプランという仕組みに大きな可能性を感じるようになりました。
このように考えて、「カフェテリアHQ」というカフェテリアプランの再発明に取り組んでいくことにしました。
What - HQが提供する「新しい福利厚生」とは
これまでの福利厚生と、カフェテリアHQでは何が違うのでしょうか?
数えると切りがないくらいの多数の違いがありますが、
最大のちがいのひとつが「AI/データによるパーソナライズ」です。
「え、ただのパーソナライズでしょ、何がそんなにちがうのか」のように思われたかもしれませんが、
実は、福利厚生は、さまざまなプロダクトカテゴリのなかでも、パーソナライズの重要性は極めて高い分野です。
※福利厚生領域でのAI/LLMの可能性については以下noteが参考になるかもしれません。
例えば、
Aさん:22歳男性/新卒1年目/独身社員
Bさん:38歳女性/小さな子供3人/共働き
という二人を比べただけでも、必要なサポートが全くもって違うことに気付きます。
Aさんは、仕事が終わったあとの自由時間に色々な学習を通じてキャリアアップをしたいかもしれません。
一方、Bさんは、そもそも時間的余裕が一切なく、子育てや家事の負担解消が一番働きにくさの解消に直結するかもしれません。
そして現実には、まずAさんBさんとは全く異なるニーズをもった社員も大勢いるでしょう。100人いれば100通りのニーズがあります。
社員の数だけ多様な課題とニーズがあります。
福利厚生は、パーソナライズ、データ/AI活用力が極めて重要な領域なのです。
現状の福利厚生は、全員に全く同じ顧客体験を提供しようとしており、その結果、最大公約数的にトップページに表示されるのは、映画/食/財形/旅行などの娯楽系になっています。
(しかし、結局娯楽的用途にしか使われないのであれば、福利厚生に予算を使うよりも、給与を上げるほうがよほど合理的といえるのではないでしょうか。)
一方、私たちは、福利厚生においても、Apple MusicやSpotifyのように、B2Cでは当たり前の個別最適な顧客体験を構築する必要があると考えています。演歌好きの人にヒップホップばかりのラインナップは表示させていては二度と音楽ストリーミングサービスは使ってもらえない。福利厚生も全く同じだと思っています。
また、社員/ユーザーだけでなく、企業側の視点も非常に大切です。
せっかく予算を使って福利厚生サポートしたとしても、意味のある成果につながらなければ何の意味もありません。
福利厚生は、企業の組織戦略に合致した仕組みである必要がありますし、他のあらゆるシステム投資と同様に、高い費用対効果を実現する必要があるはずです。
他にも、カフェテリアHQは、「福利厚生をコストから投資へ」を体現する全く新しい福利厚生として数々の特徴をもっています。
結果として、先進企業の人事エグゼクティブの皆様に、「人事戦略を体現するための福利厚生」として、導入を続々決定頂けています。
自分らしい人生を支える社会インフラを
新しい福利厚生をつくるうえで最も重要になるのが、「データ/AIの力」と「プロダクト開発力」です。
今回、カフェテリアHQという念願のプロダクトをローンチしましたが、これは始まりに過ぎません。
「稀少性の高い社員データ」と「多様なプロダクトの共通部品となるミドルウェア」を武器にして、ワークとライフの重なる領域で、ありとあらゆるプロダクトを開発していきます。
おそらく皆さんが想像する以上のペースで、次々とプロダクトを開発していく計画を持っています。
フェーズ1として、ニッチ領域に尖り抜くことを決め、リモートワーク特化型の福利厚生「リモートHQ」を開始しました。
次にフェーズ2として、今回、カフェテリアHQを開始し、総合福利厚生企業へ進化しました。
そしてフェーズ3として、社員データを基軸にした福利厚生プラットフォームに向けて、多種多様なプロダクトを次々と開発していく予定です。
メンタルヘルス、子育て支援、介護、不妊、リスキリング、健康経営、リモートワーク支援、ハラスメント対応、コーチング、・・・求められている支援は本当に多様ですし、未対応の深刻な課題に溢れています。
次の10年、HQ一丸となって、全く新しい福利厚生の創造に取り組んでいくつもりです。
私たちのミッション/究極的に目指すインパクトは、
「テクノロジーの力で、自分らしい人生を支える社会インフラをつくる」
というものです。
そう考えると、テクノロジーの力をフル活用しながら、私たちがやるべきことは本当に多いと感じています。
まずは、そのひとりの顧客企業、そのひとりのユーザー社員に対して、カフェテリアHQで圧倒的な顧客価値を作りきるところから。
一歩一歩、サービスを磨いていきたいと思います。
ぜひHQのサービスにご期待いただけますと幸いです。
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