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nativeとは


厳しい環境の中にこそ、美しい暮らしがある

 これは極地建築家・村上祐資の信念だ。地球上で「極地」と呼ばれる場所は、牙をむいた自然が目の前に迫り、人を容易には寄せつけない。だが、そんなところでも人は暮らしを続けている。日本の南極観測隊はもう60年以上、雪と氷の地で暮らしをつなぎ続けてきた。富士山の山頂で観測を続ける人、あるいはヒマラヤのベースキャンプで登山家を見守る人たちもいる。村上はそんな場所に出かけては、もう1000日以上、暮らしてきた。建築家としての関心は、極地の暮らしのなかから、人が暮らすことへの理解を深め、建築が果たす役割を見つけることにある。


なぜいま極地なのか

 いま、人類にとっての極地は、地球を離れ、月や火星といった宇宙になりつつある。村上は近年、長期にわたる宇宙活動を想定した国際的な閉鎖環境実験に参加してきた。水や酸素、食料があるだけでは「滞在」はできても、「暮らし」を続けることはできない。往復4年はかかるともいわれる火星へ旅立つとき、人が備えるべきは何なのか。

 そんな村上を中心に去年、特定非営利活動法人フィールドアシスタント(Fa)を立ち上げた。村上個人の活動をNPOとして社会活動にすることで、より多くの人といっしょに人の暮らしについて多面的にとらえてみたいと考えたからだ。


nativeの銘に込めた想い

 nativeはそんなFaの活動を伝えるメディアだ。ここにはFaの活動はもちろん、極地を知るさまざまな冒険家や探検家、あるいは人類学者、哲学者、はたまた思いもよらない分野の人が登場するかもしれない。

 新天地へ向かう人をパイオニアと呼び、その地で暮らし続ける人をネイティブと呼ぶ。私たちはやがて旅立つパイオニアたちに、ネイティブからの知恵を届けたい。あるいは極地へ向かうパイオニアたちを通して、この地で暮らし続けるためのヒントをつかめたらと思う。nativeというメディアがそうした人たちの交差点になればと願う。

native編集長 今井尚