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新しいアフリカ経済論 no.4 : ダボス会議

毎年1月第3週といえば、スイスのダボスで世界経済フォーラムが年次総会を開催します。日本では、ダボス会議の名称で知られており、毎年この時期には、各国首脳クラスから民間代表まで2,700人のスピーカーと代表団が約1週間、チューリッヒから電車で2時間のスキーリゾートに集まり、世界規模課題に取り組む会談や会議が早朝から深夜まで実施されます。

私は、2023年のダボス会議に初めて参加しました。スイス連邦外務省直轄のHouse of Switzerland主導のパネルの一つ、「UnbankedとFinancial Inclusion」のセッションにて、パネルディスカッションに国連各組織の代表者らと共に討論に関わり、そのほかに正体を受けた様々なイベントへの参加とともに、大変貴重な経験をしました。

2023年のダボス会議での主要なアジェンダは、厳しい数年を経たレジリエンスの強化、グローバリゼーションの再構築と相互依存関係の変化、持続可能性の加速、コミュニティ間の平等性の向上、そして未来の宇宙経済についてでした。もちろん、ウクライナの問題はホットイシューであったため、常に討論の中核を担っていましたが、私の参加したパネルは、「持続可能性の加速」のテーマに沿ったものであり、グローバルサウスの経済的な持続可能性を作るにあたり、様々な角度から掘り下げを行なったものです。

私は、アフリカでの現場活動の経験からテーマに関した発言を実例をベースに行いました。簡単な要旨は以下の通りです。
・金融・デジタルID、デジタル資産などの分散型アプリケーションをホスト可能な、安全で透明性の高い技術の提供を行うことで、金融アクセスを必要とするすべての人に提供することで、Financial Inclusion(金融包摂)を促進する壮大なビジョンを持っている。Cardanoを含めたWeb3ソリューションを通じて、10億人のグローバルサウスの人々に経済的なデジタルIDを提供し、個人の信用格付けや信用の正当性を高め、より多くの人々がローンなどの基礎的な金融サービスに適切にアクセスできる環境を醸成すること可能
・アフリカでは、そもそもIDがなかったり、信用スコアの信頼性に乏しい場面が多く、マイクロ金融サービスにアクセスする際にさえ、年利75−100%といった不当な金利が課されることがままあり、簡単な融資枠の利用すらおぼつかないケースがある。伝統金融と分散型の金融の融合であるRealFiの推進は、アフリカの5,000万に及ぶ中小企業の信用担保の保証を逍遥する
・また、かねてより、家庭を支える柱としての女性の役割はアフリカでは高く、女性起業家の成功は持続可能なアフリカ経済構造を作る上で極めて重要な役割を担う。我々は、カメルーンのEjaraやナイジェリアのBitMamaといった女性起業家のFinTech企業への投資やアクセラレーションを通じて、経済の底上げの支援を行っている
・長距離輸送のデジタル・インフラを構築しているケニアのBuuPassも女性起業家によるもの。東アフリカの長距離移動を提供するバスや鉄道のオンラインチケットシステムをデジタル化している。ケニアは東アフリカで最も経済的に発展している国で、タンザニアやウガンダといった近隣諸国からの出稼ぎ労働者も多い。オンライン発券プロセスをデジタル化することで、バスや鉄道の運行会社は効率的に座席を埋めることができるようになり、利用者はモバイル・アプリケーションを使って簡単にチケットを購入・管理できるようになった
・BuuPassはまた、ケニアの通信会社サファリコムが発行するデジタル通貨M-Pesaを統合した先駆者でもある。M-Pesaは銀行口座を必要としないため、銀行口座を持たない人でもBuuPassのアプリケーションからM-Pesaを使って電車やバスのチケットを購入することができる
・BuuPassはケニアの鉄道チケット販売システムの70%の市場シェアを占めており、過去2年間で700万枚以上のチケットを販売している。現在、我々とBuuPassは、デジタルIDを提供し、より広範なマイクロ金融サービスへのさらなるアクセスを提供するためのパイロットプロジェクトと概念実証を含むWeb3へのアプリケーションの移行に共同で取り組んでおり、上述の通り、Financial Inclusionに向けた取り組みに一段階段を上がっている

今年のダボス会議は、2024年1月15日から19日まで開催されます。今年のダボス会議のアジェンダは、急速な変化と分断化が進む時代における信頼の再構築に焦点を当てています。世界規模の大きな混乱に効果的に対応するため、ダボス会議は、私たちの未来、社会内、国家間という3つの基本的なレベルで信頼の回復に着手することを目指しています。

分断された世界における安全保障と協力の実現、経済と社会の原動力としての人工知能(AI)、気候変動、自然エネルギーの長期戦略、なども主要なアジェンダです。2023年12月にUAEで開催されたCOP28でも議論がなされましたが、脱炭素化と価値創造はゼロサムゲームではなく、革新的なリーダーたちは、その両方を同時に実現する方法を大胆に示す、その重要な場としてもダボス会議は活用されます。

今年のダボス会議でも、期間内に開催中のいくつかのイベントに招待を受けており、アフリカの状況を共有し、グローバルサウスの抱える課題について話をする予定です。

客員研究員を務める慶應義塾の大学院でも12月に講義をさせてもらいましたが、世界規模課題やリーダーたちの発信については、現場で経験した人間の責務として様々な場で、若い人たちに向けてどんどん発信をしたいと思います。

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