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「観る将」が観た第35期女流王位戦五番勝負第二局

5月9日、女流王位戦第二局が札幌市のホテルエミシア札幌で行われました。先勝した福間香奈女流王位が勝って防衛まであと1勝とするのか、加藤桃子女流四段が巻き返してタイスコアに戻すのか、楽しみな一局となりました。

前日の夕食会で、福間女流王位は「明日は自分の力を精一杯出し切れるように、全力を尽くして頑張りたいと思っております」、加藤女流四段は「明日はのびのびと指せるように頑張っていきたいと思います」と挨拶しています。


福間女流王位は向かい飛車

和室に設けられた対局室に、福間女流王位が白いシャツに濃紺のスーツ姿で入室し、加藤女流四段は薄いクリーム色のワンピースに紺色のジャケットを羽織って入室します。先手の加藤女流四段が3手目に4筋に銀を上がり、角道を開ける手を保留する趣向を見せ、福間女流王位は向かい飛車に振ります。

加藤女流四段の仕掛け

福間女流王位が角道を止めると、加藤女流四段は15分考えて角道を開け、5筋と3筋の歩を突き捨ててから▲4六銀と出ます。福間女流王位は△4三金と手厚く受け、加藤女流四段が▲5五銀と前進すると、47分の長考で飛車を3筋に寄せます。加藤女流四段は飛車を5筋に回し、福間女流王位が△5三歩と受けたところで昼休となりました。形勢はわずかに先手が指し易いようです。各4時間の持ち時間の内、残り時間は福間女流王位が2時間25分、加藤女流四段が2時間49分となっています。

受けに回る福間女流王位

昼休が明けるとすぐ、加藤女流四段は▲5六飛と浮き、福間女流王位が角を2筋に引いて飛車先を通すと、4筋の歩を突いて力を溜めます。福間女流王位は△4四飛と浮いて受け、加藤女流四段が4筋の歩をぶつけると、ようやく△7二銀と美濃囲いを完成させて戦いに備えます。

加藤女流四段の端攻め

加藤女流四段が9筋の歩を突き捨ててから4筋の歩を取り込み、金銀交換してから▲4三歩と銀頭を叩くと、福間女流王位は△5一銀と引いて辛抱します。加藤女流四段が▲9三歩と垂らし、香で取らせてから角交換し、▲5三飛成と竜を作ると、福間女流王位も△4九飛成と竜を作ります。

金と角の取り合い

加藤女流四段は竜取りに▲1六角と打ち、福間女流王位が△4六竜とかわすと、更に竜取りに▲5六金と打ちます。福間女流王位が竜取りに△4四角と打ち返すと、加藤女流四段は▲9四歩と打って香を吊り上げてから、▲5四竜とかわしつつ角と香に当てます。福間女流王位が△5六竜と金を取ると、加藤女流四段は取れる竜を取らずに▲4四竜と角を取り香取りを残します。

竜交換から再び竜の作り合い

福間女流王位が△7六竜と王手してから、△7四竜と香取りを防ぎつつぶつけると、加藤女流四段は竜交換に応じ、4筋の歩を成り捨ててから金銀両取りに▲4一飛と打ち込みます。福間女流王位が△5一金と寄って飛車を追い、王手桂取りに△2八飛と打ち込むと、お互いに桂を取って竜を作り合います。

見落とし!?

加藤女流四段は香取りに▲8六桂と打ち、福間女流王位が桂先の銀で受けると、桂香交換してから金取りに▲5九香と打ちます。福間女流王位が香頭を歩で叩くと、加藤女流四段はノータイムで香で取ります。福間女流王位が送りの手筋で△8八金と放り込むと、加藤女流四段はこの手を見落としていたのか、27分の考慮で残り11分となり、やむなく同玉と応じます。形勢は大きく福間女流王位に傾いたようです。

急転直下の終局

福間女流王位が△6九竜と金を取り返し、先手陣を崩壊させながら銀に当てると、加藤女流四段は▲4六角と王手しつつ銀に紐を付けます。福間女流王位は角と香の焦点に歩を放ち、加藤女流四段が竜取りに▲7九金と打つと、△5八竜と香を取ります。加藤女流四段は後手の銀頭に▲4三角成と飛び込む勝負手を放ちますが、福間女流王位は2枚の桂で先手玉に迫ってから馬を取って詰めろを掛けます。加藤女流四段は竜で金を取って手を渡し、福間女流王位が△9七香から王手を続けると、数手指してから投了を告げました。

まとめ

本局は加藤女流四段が積極的に仕掛けて主導権を握りましたが、福間女流王位は辛抱して決め手を与えず、お互いに竜を作り合って激しい終盤戦に突入しました。福間女流王位は、加藤女流四段が終局後に「うっかりしていた」と話した送りの手筋を浴びせて勝勢となり、そのまま一気に寄せ切りました。
両者は終局後に大盤解説会場に姿を見せ、防衛まであと1勝となった福間女流王位は「本局は中央から動かれて守勢になってしまって、ずっと自信のない展開が続いていました。次局は福岡県で行われます。精一杯頑張ります」と話しました。惜しい一局を落とした加藤女流四段は「ひどかったですね。次は気持ちを切り替えて頑張っていきたいと思います」と話しており、次局での巻き返しに期待したいと思います。

女流王位戦は新聞三社連合、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会が主催しています。
棋譜は下記サイトをご確認ください。


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