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「教職調整額」10%への増額が生むのは、志願者増加とさらなる質の低下


教員不足と給与問題

全国的に教員不足が深刻化しているのは多くのニュース、メディアで扱われていますし、私のnoteでも過去何回にもわたって記事化してきました。

この問題の解決の糸口はなかなかにつかめず、ここ数年はかつてよりもさらに深刻化しているにも関わらず、行政サイドが現状を静観するばかりで大きな進展がありませんでした。

ところが最近になって新たな動きが見えてきました。それが「教職調整額の増額」です。

教職調整額とは

このnoteをご覧の方の大半はご存じとは思いますが、公立学校の教員は給特法という法律によって残業代が支払われない仕組みが公的に設計されています。

これは教員の行う残業行為は自発的なものであるという認識に基づいたもので、自発的業務と公的業務の切り分けが難しいということから規定されているものです。

より正確に言えば、緊急性の高い特殊な業務にのみが残業と認定され、それ以外の通常業務は裁量労働に近いくくりとされて、基本給の4%を「教職調整額」として支給される仕組みとなっています。
(これはいわゆる「見なし残業」とも異なる仕組みで、あくまでも残業は存在しないのが法律的な建付けです)

古くは教員の人材確保の観点から作られた制度であり、施行から半世紀経った現在において現状とのミスマッチが度々指摘されてきたものでもあります。

今回はこの調整額を10%に引き上げ、教員の志望者を増やそうという目論見なのでしょう。

教員志望者、採用試験志願者は増加するかもしれない

今回のこの変更が実現すれば、確実に志望者、志願者自体は増加することが予測されます。

それもそのはず、業務的なものに変化が無く、単純に給与が増額されるのであれば希望する人が増加するのは必然でしょう。

では果たしてそれが教員不足問題の解決になるのか、というとこの点についてはかなり効果はかなり怪しいのではないか、と感じます。

なぜならば、かつて教員志望者の母集団の多くを占めていた国立大学の教育学部や伝統的な教員養成課程を抱える大学の学生の場合、一部の熱狂的な教員志望者以外が別の道を選択することが半ば常態化してしまったからです。

正直な話、現在のそれなりに就職に強い大学の学生であれば教員よりも給与待遇の良い就職先はいくらでも見つかる、むしろ選び放題でしょう。

この状況で調整額のわずかな増額が、そうした層への訴求力があるとは到底思えません。

一方で就職先がいわゆるブラック企業などへ就職者を送り込むような大学の学生の状況はどうでしょうか。

それらの企業と比較すれば、明らかに公立小学校は恵まれた環境にあります。したがってそうした企業への就職予定者、予備軍を中心に教職希望者が増加することは大いに予想できることでしょう。

そうした層が果たして永続的に勤務を、しかも教育の質を担保しつつ可能かと言われると疑問符が付きます。彼らの学力は決して高くない(特に算数関連においては致命的な学習不足が散見される)上に、そうした大学の学生のモラルや順法意識がこれまでの教員志望者層と比較して高いとは決して言えないことも忘れてはならないでしょう。

どうにも中教審は今回の手当増額が募集効果が高いとみているように見えます。実際に応募者が増加する可能性は確かに存在するでしょう。

しかし、果たしてそれが本当に現在の教員不足や教育現場の混乱の解決に寄与するかどうかは微妙なところではないでしょうか。


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