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5G時代においては、校内LANの整備よりもSIM契約を学割で運用すべき


学校内LANの速度問題

GIGAスクール構想の中で一人一台の端末支給はコロナ禍というアクシデントの効果で爆発的に進みました。端末自体の故障なども徳島などでは問題化していますが、実はそれよりも深刻で、しかも全国的に問題となっているICT系の課題が校内LANの速度問題です。

全国の公立小中高校のうち、文部科学省が設けたインターネットの通信速度の推奨値を満たしている学校が2割にとどまっていることが24日、同省の調査で分かった。デジタル教科書の導入も始まるなか、8割で十分な環境が整っておらず、文科省は各自治体に原因の分析や通信契約の見直しなどを求める。

この問題は端末の同時利用率が高まるとさらに大きな問題となっていくことが容易に想像できます。ではこの課題に関してどう対応するよていなのでしょうか。

文科省は通信状況の確認のための費用を補助するため、23年度補正予算で23億円を計上したが、調査結果を受けて25年度予算案の概算要求でさらなる財政支援を盛り込むことを検討する。契約や調達の好事例を共有するなどし、自治体の対応を後押しする方針だ。

とりあえずは調査をして、その後改善策を提示する予定のようです。

LANの再整備という消耗戦

こうした課題に関して、最もシンプルな解決方法はLANの接続回線を大きくするなどの設備の増強でしょう。

実際、一般家庭においてはこの十数年でそうしたアップデートを繰り返して回線増強が図られてきました。ADSL(ISDN)⇒光⇒光ギガコースなどのように利用可能なデータ量の大きい回線に切り替えつつ、無線LANの端末もb⇒g⇒a⇒n⇒acのように進歩してきました。

同じように学校もその時点の技術に合わせつつ整備をすべきだ、と考えるのは自然でしょう。

ところがこれを学校で行うことが個人的にはお勧めできないように感じています。

なぜならば、そもそも学校の無線LANの利用者数が通常の事業所と比べて極端に多いからです。

一般的な事業所の場合、ほとんどの企業は多くとも30人程度のオフィスが大半です。このレベルであればLANの親機や中継器も数台ですみますし、場所もオフィスの敷地内で完結します。

しかし学校の場合、小規模校であっても100人以上の生徒がいるケースがほとんどで、しかも校舎から体育館、運動場など敷地の面積も通常の事業所と比較すると非常に広大で、中継器などの端末の設置だけでも莫大なコストとなります。

加えて学校のICT整備は起業のそれと異なり、利益を生む源泉になるわけではないため、利用料、設置投資などのコストが毎年かかる仕組みとなります。しかも数年ごとの技術革新やモデルチェンジごとに総入れ替えをする必要もあります。
(リースの場合も恒常的に月額のコストが発生する)

さらに考えるべきは、少子化の中で整備した設備が廃校によって不要となる可能性も高い、ということです。10年後には廃校になる学校はかなりの数存在します。そのすべてが地域団体などに有効活用できるわけもなく、莫大な負の遺産だけを残す可能性もあるでしょう。

セルラーモデルの契約と学割

この解決に関して、最もシンプルな回答はセルラーモデルを個々人に契約してもらうというものです。この場合、学校利用と想定される料金の分を学割などで割り引くか、あるいはそもそも学齢児童、生徒の契約料金を公的支出補填するという手法です。

これならば設備設置にかかる費用は削減できますし、設備の更新や廃棄も不要です。また生徒数減少のここ数十年においては費用負担が増加することはないでしょう。

これまでは4G接続の場合に速度の低下などが危惧されていましたが、5Gのsub6であれば速度遅延などもほとんど気にする必要はないでしょう。

また5Gのアンテナを校内に設置するという案も考えられます。これに関しても設置費用を学校が持つ必要なく設置も可能でしょう。

以上は実際の整備業務に関しては門外漢の私の個人的な意見です。そのため見落としが存在しており、現実的ではない可能性も十分にあります。とはいえ、いつ廃校になるかわからないような山村の学校にまでLAN設備を設置することが果たして意味があるのかどうか、疑問に感じるのです。

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