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佐賀県立大構想は自県進学率九州ワースト1位の解決手段になり得るか


佐賀県立大構想

佐賀県が佐賀県立大学の設置構想があることを明らかにしました。

設置の目的として、県内での人材育成を行うことを第一に挙げています。

佐賀県知事も記事内で以下のようにコメントしています。

山口知事はこの日開会した県議会で、基本構想について、「大学進学先の不足による人材流出という佐賀県特有の問題に直接アプローチできる施策だ」と述べた。

九州の自県進学率

九州の自県進学率は他の地域と比べて高いのが特徴です。

これは関東関西の大都市へのアクセスが悪く、良くも悪くも文化圏が独立していることが起因しています。

その代わりに福岡が九州内のハブ機能を有しており、人材の集積地となっているのが特徴です。

それを示すように、福岡県の自県進学率は65.1%、これは全国で4位の高い水準となっています。

次いで熊本県の47.3%、長崎県の35.9%、鹿児島県の33.6%となっています。

その中で断トツで低いのが佐賀県の16.7%です。

自県進学率の低さの原因、潜在大学収容率

自県進学率の低さには様々な要因が考えられ、その一つは潜在大学収容率の高さと言われています。

$$
潜在大学収容率 = \frac{大学進学者数}{大学入学定員}
$$

以下は公益財団法人アジア成長研究所の田村一軌氏のレポートからの引用です。

実際に文部科学省(各年版)のデータから確認してみると,県外大学進学率 (= 1 − 県内大学入学率)と潜在大学収容率には正の相関があることがわかる(図 5)。
中略
都道府県ごとの県外大学進学率を固定効果モデルによって推計した結果,県外大学進学率 は,潜在大学収容率(県内の大学進学者数の同じ県内の大学入学定員に対する比率)が高いほ ど大きく,大学進学者に占める男子学生の比率が高いほど大きくなる傾向が観察された。この ことからいえるのは,当然のことではあるが,地域の大学定員を増やすことは県外大学進学率 を抑制することにつながる,ということである。

県外大学進学率のパネル分析 公益財団法人アジア成長研究所
田村 一軌
Working Paper Series Vol. 2017-02 2017 年 2 月

この結果を踏まえる限りにおいては、県立大学の新設は自県進学率を高めるのに一定の効果がある可能性は高いでしょう。

また、佐賀県立大学以外にも佐賀女子短期大学を運営する旭学園が武雄市に武雄アジア大学を開設する予定です。

この二つが実現すれば、佐賀県内の大学は倍増することになります。

潜在大学収容率だけでは解決しない可能性

もちろん大学の新設だけで自県進学率の上昇が達成できれば事は簡単ですが、そうはいかないのも現実です。

県外大学進学率のパネル分析 公益財団法人アジア成長研究所
田村 一軌
Working Paper Series Vol. 2017-02 2017 年 2 月

上図は同レポートからの引用ですが、滋賀県や奈良県など佐賀よりも潜在大学収容率が低いにも関わらずそれほど自県進学率が高くありません。

これらの県の特徴は明らかで、潜在大学収容率の低い県(大阪、京都)に隣接しかつ交通の便が良いということです。

そしてこの条件に佐賀県もしっかりと当てはまると考えられます。

こうしたデータを見る限りにおいては、潜在大学収容率を解決するだけで事件進学率がダイレクトの上昇するかは難しいところではないでしょうか。

(それにしても上図の左下に旧帝大、その右上に旧官立大グループが並ぶのは明治時代からの名残を感じます)

改善はするが、解決はしない

おそらく佐賀県立大学の新設によって佐賀県の自県進学率自体は改善するのは間違いないでしょう。

一方でそれ以外の都市規模や都市構造、環境の問題は何ら変化していないことからも、九州内におけるワーストから脱するのは難しいようにも感じます。

またその効果自体も佐賀県立大学の立地も大きく左右するでしょう。

武雄アジア大学のように佐賀県内でも中心部とは言い難い、武雄市にキャンパスを設置した場合、果たして県内学生が集まるかどうかは微妙です。

佐賀県立大学に関してはいろいろと先行き不透明ではありますが、、九州内に新しく公立大学ができるという動きは久しぶりのものでもあり、受験に関わる身としては楽しみにしたいところです。




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