見出し画像

銚子市、千葉科学大学の公立化問題、効率化が叶わなければ撤退止む無し


銚子市、千葉科学大学の公立移行問題

千葉県銚子市にある千葉科学大学が定員割れを原因とする経営難に陥っています。

その状況を打破するための公立化が議論されていますが、どうやら暗礁に乗り上げているようです。

検討委員会では誘致効果の検証が行われています。

千葉県銚子市の「千葉科学大学」が要望する公立大学への移行について検討する委員会で、大学を誘致した効果の検証が行われ、地元への経済効果は誘致した当時の見込みを下回り、年間およそ22億円と推計されました。
(中略)
一方で、市は大学を誘致した当時、経済効果は年間69億円、税収は20年間で79億円増加すると見込んでいましたが、いずれも大きく下回る結果となりました。

検討委では想定よりも少ない経済効果しか得られていないことが問題となっています。

 同大の財務状況データについては「公立化要望とは企業取引にたとえれば、買収提案に当たるが、内部留保や借入金など、大学単体に帰属する財産の状況がわからない」。公立化により数年後には定員割れがほぼ解消するとしたシミュレーションに関しても「3パターンくらい作ってほしい」との注文を付けた。

加えて財務状況データなどを公開せずに話が進んでいることも市側の不信を買っているように見えます。

銚子市とはどんな都市か

この問題に関して話題となっている大学誘致における経済効果に関しては資産が難しいのが現実です。

そもそもが人口減少著しい地方都市に大学を誘致しているわけで、学生を呼び寄せている一方で、それ以外の世帯の社会減や高齢者の自然減を止めることは不可能だからです。

では、銚子市とはどんな都市でしょうか。

千葉県の東端に位置する人口5万人強の都市で、主要な産業は漁業です。現在でも銚子漁港は水揚げ高でトップを争う巨大漁港となっています。

しかし人口減少に歯止めが止まらず、近年は周辺都市(旭市、神栖市など)への移住、進学就職に伴う東京近郊への転居が増加しているようです。

私や少し下の世代ではNHK教育テレビの小学3年生の社会の番組「このまちだいすき」で舞台となった町として覚えている人も多いかもしれません。

現状を冷静に分析する限りにおいては、今後人口増加が見込まれる地域とは思えず、千葉科学大学がかろうじて人口減少の防波堤となっているのは間違いないようです。

明らかに市側の分が悪い

今回の問題に関して、公立化が受け入れられない場合は千葉科学大学は撤退をする意思を検討委で示したようです。

検討委では脅しに近いこの言説を戒めたようですが、実際赤字を垂れ流すだけの大学であれば大学側としては撤退止む無しという姿勢を崩すことはないでしょう。

学生への責任といった情緒的なもので批判する向きもあるようですが、今回の場合大学を経営する加計学園は複数の大学を抱えているため、学生を学園内の他大学に割り振ることで一応の責任を果たした体にすることは容易です。(学生の希望に沿うかどうかは別として)

したがって学園側としては公立化ならばすべてを譲り渡して終了、公立化ならずとなれば撤退、と非常にシンプルな選択肢しかありません。

一方で銚子市側としては、公立化をしたとして学生をどこまで確保できるか、経営をどう安定させるか、という大きな問題があり、他方で公立化を否決した場合は若者を集める効果が曲がりなりにも存在した大学そのものを失うということになります。

公立化をすれば、少なくとも数年は黒字化できるであろう学生の集客は可能でしょう。しかし、東京都市圏の端(あるいはそのすぐ外側)に位置する立地に対して、公立化がどこまで神通力を持っているかは未知数です。

この辺りも西日本の状況と大きく異なります。西日本では国公立信仰が根強く公立化の効果が高いため、同様に事例の場合、おそらくは10年以上は安定した大学経営に移管できた可能性は高いでしょう。

検討委、市側の強気な姿勢に違和感

今回の検討委と大学のやり取りに関して、個人的には違和感があります。それは銚子市が上からの姿勢を崩していない(ように見える)点です。

前項で述べたように、今回の事例の場合選択権は大学側に存在し、圧倒的優利な立場で話をできるはずなのに、行政側や検討委はどうもそう感じていないように見えるのです。

大学は公的な側面を持ち得るとはいえ、あくまでも民間団体です。撤退に関する選択権は大学側に存在するのに、行政側が何らかの権限や強制力を持っている、あるいは大学側が経営の継続を望んでいるように勘違いしているように見えます。

しかし現実には大学側が主導で行っている事業です。この視点を忘れてしまっている行政サイドのスタンスはどうにも滑稽であると同時に、問題への理解の浅さを感じさせるものでしょう。

学校法人グループ、コングロマリット、財閥

この問題の出口はおおよそ見当がついています。条件の悪い公立化を銚子市側が受け入れるか、あるいは千葉科学大学の撤退を受け入れるかです。

それにしても加計学園の経営手法はなかなかに見事です。愛媛の獣医学部誘致にしてもそうですが、国の制度や地方の状況、補助金を上手く活用しつつ運営する手法が確立されているようです。

今後少子化が進む中で大学の淘汰は進むことが考えられます。こうした学校法人グループ、コングロマリットに私立学校が集約されていくのは間違いないでしょう。

こうした例は全国規模では帝京大学、日本大学、近畿大学、東海大学など、またその地方ごとにもそれぞれ独自のグループが存在します。今回の加計学園は中国地方、福岡では第一薬科大学などを運営する都築学園などがそれにあたるでしょう。

今後20年で18歳人口が20万人減少するなか、こうしたグループの離合集散はさらに激化することが予測されます。今回の千葉科学大学の動きは地方の今後の学校運営のモデルケースとなるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?