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罪状「強風にも関わらず洗濯物を干した」

風の強い夜だ。やだなあ。
家賃をケチっている事実を改めて感じさせる隙間風の音。
手探りでスマホを覗き込む。2時かよ。
頼むからゆっくり寝かせてって。

...イヤホンで波の音でも聴こう。

・・・

朝7時

よかった。
結局熟睡できた。
風もすっかり止んでいる。

簡単に朝食。
シャワーを浴びる。
そして、着替えようと室内のハンガーラックに目をやる。





服が少ない。

え?なんで?


あ、失礼しました。

洗濯物干しっぱなしだったわ。
冬服は分厚くて乾きづらいから、長めに出してた。

昨日自分で干してるのにね。気づけよ。
やっぱり寝不足かな。。
カーテンを開け、ベランダに出る。




服が少ない。

え?なんで?


いや、これはなんで?じゃないわ。
飛んでる。明らかに。
ほら、ハンガー足元に落ちてんじゃん。
やったわ。やっぱ特別強風だったんだ。
安い賃貸ではあるけど、言っても築十数年だよね。
今までなかったじゃん。隙間風の音なんて。

・・・探そう。

洗ったものを着ずに汚すとか、洗濯における最大の罪だよな...。

でも、ティッシュと洗っちゃうやつよりはマシか。
その点、俺には情状酌量の余地あるな。

罪人らしく屁理屈じみた自己弁護をしつつ、駐車場に降りる。

あった。
丁寧にアパートの出入口の目立つところにハンガーで引っ掛けてくれてる。あんまり汚れてない。
一人じゃなかった。
こんな俺にも手を差し伸べてくれる弁護士がいた。

あった。
1階の知らない人の物干し竿にかけてくれてる。
まさかさらに上空から飛んできたとは思わないだろうから仕方ない。
この弁護士も全力で仕事をしてくれた。

あった。
集合ポストの上に畳んで置いてくれてる。
住民の動線を考えて、みんなが見る場所にしてくれたんだろうか。敏腕だ。


ベランダから飛び立った証拠品は全て回収完了。
小走りで帰宅して洗濯機に放り込む。
洗濯機もこれくらいの汚れなら許してくれそうだ。

釈放された俺は日常を取り戻し、仕事に向かう。

本当にありがとう、顔も知らぬ弁護士の皆さん。
俺より数時間朝が早い皆さん。

ちゃんと更生して、今後は天気予報もちゃんと見るし、上着を干す時チャックしっかり閉めます。

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