見出し画像

この家どうするの?(40)葬儀屋さん今昔20「つながるしごと」

A葬祭さんから出発、いや出棺。
社長さんが、みずから運転。助手席にわたし、うしろに棺桶かんおけすがたの父が乗る。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1307文字)


プロの気づかい

黒い車がゆっくりすすむ。あとは斎場 (火葬場)に行くだけ。家から、徒歩・約10分のA葬祭さん。いろいろとお世話になり感謝……あれっ、車が家のすぐちかくに止まった。

わざわざ父のために家に寄ってくださったのか!

オットの両親、義父と義母のときは、そんな配慮はなかった。家から3分ぐらいの集会所だったのに……。大手葬祭さんだったけど、斎場に直行だったのだ。


おとうちゃん、家やで。
入れんけど、さいごによう見ときや。


家に連れて帰らんとゴメン……。
監察医事務所から家ではなく、A葬祭さんのお部屋に行ってもらった。冷たい娘だ……。


「長女さん、もういいですか?」
ハッとした。そうだった。
すこしの停車、また車がゆっくり動きだす。


気がついた。社長さんは、わたしのことを「長女さん」と、よぶ。
たくさんの案件をかかえているのだろう。名前をまちがえてはいけない。


きっとここでは固有名詞より「喪主さん」「長女さん」「長男さん」に、なるのだろうね。


むかしばなし

「はい、ありがとうございます。父の迎えと、お部屋に寝かせてくださりお世話になりました。」


「いいえ……たしか平成7~8年に、おばあさんの葬儀を当社ウチで、と言わはりましたね。
ぼく、調べました。そう、そのころから父に学んで、この仕事に入ったんです。」

祖母のとき? 30年くらい前。そうか、お世話してくれたのは先代の社長か。そういえば、若い男の人がアシスタントで付いてた。
つながるしごと。
それが、いま車を運転してる現社長か……。

「そうでしたか。お世話になります。祖母のときは△△斎場でしたが……」
「斎場の統廃合で、なくなりました。きょうは□□斎場です。渋滞はないとおもいます。火葬は12時からです。」

渋滞とか、いろいろと調べてるんだな。やっぱりプロだな。そうだ、どうしても聞きたいことがあった。聞いてみよう。



火葬場のしつもん

「あの……ネットニュースで、火葬場不足〔一週間は待機〕とあったのですが?……」

「いえ、空きはあります。ウチはすぐに取れます。疫病の場合は斎場は決まっていますから。」

えっ、そうなのか。てっきり父も火葬待機とおもって帰宅はパスした。こんなに早いとは……。


□□斎場まで30分ほど。ヘンテコな質問にも答える社長さん。


自治体にもよるが火葬待機の期間、お部屋代とかドライアイス代とか別途加算されるはず。これも商売かもしれない……。

実父の葬儀なのに泣きもせず「ヘンテコな質問をする長女さん」のわたし。父は突然死なので介護もなかった。わたしの疲れも涙もなし。
親子の不仲は、きっとバレてる。


百戦錬磨、いや何千、何百万練磨の社長さんだ。
何もかも見抜いているだろう。
気がラクだ……。


50歳くらいの社長さんが、くちをひらいた。


ぽつりぽつりと。


     (つづきます)

毎週金曜日は
「親の持ち家」の日

いつも こころに うるおいを
 水分補給も わすれずに 

さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?