この家どうするの?(37)葬儀屋さん今昔16・発掘
高齢者は貴重品をどこに隠すのか? ちいさな一軒家で探す娘。
キレイ好き、潔癖性の父だった。モノを複雑に隠すとは思えない。孤独死はとつぜんに、やってきた。
(980文字)
捜索ひとくぎり
朝から、ひとりでゴソゴソ捜索。父の「預金通帳と年金手帳」これだけ。収納するところは探した。古着・古布・古紙……捨てるものしか出てこない。それでもモノはすくない。わたしの住むマンションよりも。
ちょっと休憩。ひとりだと気楽でいい。明日の火葬までに出てきたらいい。区切りというか、ふんぎりというか……。
期限つきのほうが集中して探せるとは思うので。
オットには「捜索のため実家に泊まり込む。明日の火葬まで、ひとりで終わらせる」と、連絡。
気楽この上なし。
とりあえず、休憩。喫茶店でも行くかな。お腹は減る、薄情な娘だ。外へ出る用意をする。
きのうの刑事さんのガサ入れで、2階は多少散らかっていた。
わざと引き出しを開けたまま、
すこし中味がとびだしたまま、
押し入れや天袋の奥が見えたまま。
みな、もとのていに戻らずのままだ。きっと捜索済みのマーキングなのだろうね。わざと、ここは探しましたと。
キレイ好きの父には耐えられないことだが、わたしは平気。さあ、外に出ようっと……。
なにか、きこえる
しかしどうも、引っかかる。
フタつき収納ケースを、ワイヤーラックにきちんと戻さないまま、階下に下りようとすると、ざわざわとノイズが入る。
ワイヤーラック。
金属加工職人の父……。
睡眠不足で幻聴なのか、父が呼んでる。
おかしいな。気がつけば、もういちど2階に上がっていた。ワイヤーラックから声がするみたい。父はもう幽霊になったんかいな?
なんかわからないが、ワイヤーラックを見に行く。
こんなところに
ワイヤーラックの側面にS字フック。なにかが、ぶら下がっている。こんなところにリュックサック。
こぶりで薄手のリュックサック。
災害時の持ち出し用かな?
ちろっと、リュックをのぞく。入っているのは「厚手の長靴下」。登山でもいくのか?
足首あたりで、ふたつ折りの靴下。
靴下の中身は「固いボール紙」の感触だ。
なんで固い紙を、ボール紙と言っていたか不明だが、通帳サイズだ。
これや。
通帳2通。はんこ。年金手帳。
いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに
さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。
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