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この家どうするの?(48)葬儀屋さん今昔・28「ぶっつけ」

お寺さん(2代目)が父の家に来られた。父はいない。なるようにしか、ならない。たいあたり。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1420文字)



ぶっつけ本番

コミュニケーションがとれない、人間が苦手の父。お寺さんに来てもらうのは年に一回。お寺さんは別格だったようだ。

〜直近の登場人物〜

◆A葬祭の社長さん…50歳くらい。まちの葬儀屋さん。冷静沈着・仕事に無駄がない。仕祖母・祖母・父とお世話になっている。
(副題に出てるが今回も出番なし)

お寺さん(2代目)75歳…先代まで、となり町にお寺があった。お寺の息子さんながら、定年まで隣県で一般就職。かたわら「週末お坊さん」でお寺アシスト。先代が亡くなると寺じまい。隣県に住んでいる。

◆父…87歳で孤独死。きのう斎場で骨壺に変身した。名前はまだない。


とにかく、ぶっつけ本番。いきさつを話して、きのう火葬まで終了。お寺さん、あまりビックリせず。こんなこと、たまにあったりするのだろう。


骨壺に変身し仏壇に鎮座する父と対面。まずは、これまでどおり年に一回の供養をしていただく。


お寺さんのガイドでオプションの「初七日法要」。お寺さんも、ぶっつけ本番です。
人生は、ぶっつけ本番のリハーサルなしなのだ。


いっしょに漢字がならんだ帳面をなぞる。お寺さんは、ほんとうにいい声だ。職業柄とはいえ堂々としています。
うらやましい「舞台ばえ」。
脇役のわたしは、だんだんとクチパクになってしまった。
古びた仏壇の白い父も苦笑いしただろう。




てっきりおこられるかと

今後のスケジュール。よくきくあれだ、四十九日法要。そこまで決めておきましょうと黒の手帳を出すお寺さん。パラパラ……。

死んだらすぐ連絡しなかったので、てっきり苦情がくるかと覚悟していた。直葬とはいえ、お葬式での読経なしは、お寺さんの収入減。
お説教を食らうはずが……。


なんにもなかった。助かった。
四十九日の日程を決めただけ。
そうだ、A葬祭の社長さんより位牌いはいの素をもらっているんだった。
かまぼこ板を、ちょっとぶ厚くしたような、足がついて立っている位牌の素……。

これも、わたしはぜんぜん気がつかず。A葬祭の社長さんに感謝です。




位牌のなまえ

ここは宗派によりシステムいろいろなので、お寺さんに頼ります。
白木の位牌の素に名前を入れてくれたのを仏壇屋さんに発注する。
ふむふむ。それで仏壇の黒い位牌になるのか。


シン・父の名前。戒名代というもの。お金はいくらかわからない。お寺さんに聞いてみるしかない。
お寺さんの答えは、Vのように指を2本立て、これくらいですとおっしゃられた。高いのかやすいのか……そのとおりにしよう。


じつは、きょうのお布施?の値段もわからない。年に一回、いくら入れていたのか?とりあえず、これぐらいと思ってお札を入れた。
お寺さんは急なことにも嫌な顔せず業務を終え帰られました。


これを読んだかたは、親御さんに書いてもらう「エンディングノート」に、月命日や仏事の金額も書いてもらったほうがいいです。

約2ヶ月後、お寺さんはまた来られる。支払いその他、その都度つど聞くしかない。父はメモや家計簿を残していなかった。
そんななかで父が「お寺さん10:00」とカレンダーに書き込んでいたのは……。


死期がわかっていたのかもしれない。



(つづきます)

毎週金曜日は
「親の持ち家の日」


いつも こころに うるおいを
現金補給もわすれずに


さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。



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