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この家どうするの?(49)葬儀屋さん今昔・29「葬儀代金」

年に一度の「お寺さん」ですが、父の四十九日で続投の連続登板。
日程を決めて、白木の位牌をあずけます。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1242文字)



わすれもの

「75歳で後期高齢者」とカミングアウトしたお寺さん。四十九日とは、どうのこうの……そんなホトケの業界話はありません。


お寺に生まれて、すぐ継がず。お寺さんは民間企業で定年までお勤めだけある。つかみから、プレゼンがうまい。退職金もあるし追徴金もナシ。
説教くさくなくて助かった。


シャバの空気と、都会の絵の具に染まることも必要だ……
Ω\ζ°)チーン  。 あら、私のスマホで「チーン」と打ったらこんなのが出た。

片づけをして、お寺さんは退場。
玄関先で頭をさげて、お見送り。
父の家には椿の木が一本。植木にも水をあげないと。チラと見て家にはいる。
さてつぎは。
仏壇に目をやると、お寺さんの商売道具が置いたまま。忘れものだ!


朱肉ケースそっくりの煙の出るやつ、これの名前はわからないし、お寺さんも困る。他県まで宅急便で送るのは気が引ける。
とにかく追いかけよう。


そうだ、遠くのパーキングに車を停めたはず。お寺さんの帰る方角へパタパタ。仏具を持って、はしる。


遠いパーキングでよかった。ゆっくりあるくお寺さんが見えた。近くだったら発車して排気ガスの雲の中だろう。いや青雲か。


呼びとめて、お返しする。お寺さんも忘れていた。遠方だし来るだけで大変だ。すこし汗ばむ、わたしは還暦。


もしお寺さんが廃業したら、どうなるのやろう? ご高齢だし。
そんな一抹の不安もあります。
Ω\ζ°)チーン。




A葬祭さん集金


やれやれ。なんやかんやで、お昼ちかい。ピンポーン。
次はA葬祭の社長さんがやってきた。出入りがはげしい。
はいはーい。
まるで吉本新喜劇。

こちらの社長さんは、シャバの空気と都会の絵の具に染まれし者をあの世におくるのが仕事。人生のさいごと遺族を見すぎたら、どんな景色がみえるのだろう?


いろいろ、お世話になりました……。
黒いスーツのA葬祭の社長さんから葬儀代の明細をうけとる。
すこし確認してお金をはらう。これは父のタンス貯金でまかなった。




葬儀代におどろけ!

直葬のわりには、葬儀屋さんサイドは手間がかかった依頼だろう。検察医事務所まで父をお迎えにいってもらったり、泊めてもらったり。
遺影もお花も何もなし、儲けなし。


現金と引き換えに領収証。
「では諸届出の同行は、□月△日に
午前9時区役所入り口でお待ちしています」
有能な秘書よろしく、次の予定・役所に必要な持ちもの用紙をヒラリ。そして退場していった。
じつにあざやか。


この業界、ベタベタしないのがいちばん。そう思った。
お見送りをして再度、葬儀代の明細を見る。
仏壇のまえで。Ω\ζ°)チーン。


お父ちゃんの葬式代やで……
びっくりしてや!


うわ〜
ずってんコロリん。



仏壇の父に
吉本新喜劇を見せた娘であった。



毎週金曜日は
「親の持ち家の日」


いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに



さいごまでお読みくださりありがとうございます。

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