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女性声優のオタクがスーパーフォーミュラを現地観戦した話

はじめに

演者のオタクというのは基本的に忙しない
推しの出演の報せを聞けばとりあえず情報を集め
作品であれば視聴をし、イベントであれば現地に飛ぶ

必要を感じれば推しの出演の無い前作から履修してみたり
コラボイベントならばコラボ先のことも調べておく
もちろん演者とは色々な方面で活躍するものなので
そうこうしてるうちに、なんか色々と節操のないオタクの行動が出来上がる

勿論、オタクも一応生物学的にはホモサピエンスで社会性の生物である以上、全てを網羅するのは難しいが
自分のキャパシティの範囲で、推しの仕事の領分を反復横跳びしている

私もそんな演者オタクの一人である

私の推しは声優の和泉風花さん

けもフレ3の看板であるドールや
マギレコ Promised Bloodの煌里ひかる
オンゲキ マーチングポケッツの東雲つむぎ
モンスト 天下五剣の大典太光世
カードゲームZ/Xのアイドルユニット SHiFTのミーリィなど
結構広い当たり判定をしているので
意識しないうちに声を聴いたことのある人も多いのではないか

なお、令和の怪作、暴太郎戦隊ドンブラザーズにおいては
嘘つきアイドル『吉良きらら』として実写出演して
オタクたちを震撼させたこともある
声優とは……

そんな和泉さんの新しいお仕事
2024年放送予定の次世代レースアニメ
『HIGHSPEED Étoile(ハイスピードエトワール)』

HIGHSPEED Étoile(ハイスピードエトワール)
2024年放送予定

その主人公、輪堂凛の声優にキャスティングされたのだ
様々な場所で活躍しつつも、なかなかTVアニメのメインキャストからはこれまで縁が遠かったこともあり
ファンとしてはかなり感慨深く、本当に嬉しい

現在メインキャストとティザーPVが公開されているので
興味があったら一度観てみて欲しい、今なら最古参名乗れる

完全オリジナルなので今はなんとも言い難いが
レースアニメといえばな老人オタクの金字塔、サイバーフォーミュラに対して
こちらは実在企業とのタイアップ等も含めて、レースアニメ版のタイバニといった感じ(キャラデザやマシンにここから企業ロゴが乗るらしい)
水樹奈々さん、堀江由衣さんなど、とても令和のアニメとは思えないキャスト陣もあり、なかなか期待度が高い

閑話休題

そんなハイスピ(略称)は実在のフォーミュラレース『Super Formula(以下SF)』とパートナーシップを提携しており
アニメの為の取材協力や、サーキット会場でのコラボ等
来年の放送に向けて色々と企画が発表されている

そんな流れで、今回SFの開催に合わせ
開催地の鈴鹿サーキットにて、主演の和泉さんを招いてのトークステージが開催されることになった
ステージのお相手はSF参加チームの1つであるTCSのレーサー、佐藤蓮さん

『声優とレーサーのトーク……?なんぞ……?』というのが告知を見た際の正直な感想である
最近はお笑い芸人やプロ野球選手、競馬のジョッキーとお話する女性声優の話題も珍しく無くなってきたが、流石に新境地
というかモータースポーツを全く知らなかった私のようなオタクからしてみると『レーサーって壇上でトークとかするんだ……』というくらい宇宙猫になった

行軍

とはいえ、推しに呼ばれたら飛んでいくのが演者のオタク
幸いにも私は愛知に住んでいるマイカー持ちなので、家から車で向かい
途中で敬虔にも推しを追って東京からやってきた、同じく和泉さん推しのオタクを拾って鈴鹿まで高速で走った

ちなみに余談だがそのオタクとは前日東京で会っている
別の女性声優イベントの為に東京に行った翌日に鈴鹿まで走ってるのだ
狂気の行軍である

私にとっては子供の頃以来の鈴鹿サーキット
というか子供の頃はここを遊園地だと思っていた
『鈴鹿サーキット』の『サーキット』が言葉通りの意味だと知ったのは中高生になってからである、ポケバイ楽しかったね

レースの日がこんなに混雑するとは知らず、駐車場探しに一苦労したが無事到着


10年以上ぶりの鈴鹿サーキット

この日は快晴で、気温もなかなか
モータースポーツにとってはわからないが、運動会なら最高の天気

現地にはハイスピのコラボブースも出展しており
メインキャラの缶バッジガチャが置かれていた
ガチャと聞けば回すのが悲しいオタクの性なので、推しの担当する輪堂凛目当てに挑戦
20連分くらいはかかったものの、問題なく引けた

缶バッジガチャ 勝利

推しイベ in 鈴鹿サーキット

ということでお目当てのトークステージ

ステージ前はプログラムを通しで観てる方も多いらしく
ずっと沢山のレースファンが集まっている
推しの無銭イベではなかなか見ない人数

あとなんか普通に野生のカメコにカメラ沢山向けられてる
確かに撮影禁止という触れ書きはなかったけどちょっと驚いた

※レースファンの方々には当たり前の光景かもしれないが、声優界隈は基本的に肖像権の扱いが厳しく、一般のカメラが撮影OKとなることはあまり無い(というかそもそもそんなイベント有るのか?というレベル)
実際に去年の3月、和泉さんは痛車天国という痛車のイベントに登壇していたが、その際も登壇中は撮影禁止となっていた

そんな文化の違いには多少驚きつつも始まったトークイベント
レーサーと声優、全く違う界隈ではありつつも、お互いを立てつつレーサーならではの視点でハイスピのティザーPVを語ってくれたりと、ファンとしてもなかなか新鮮なトークだった

というか佐藤蓮選手、めちゃめちゃ若い
事前に調べたのだが2001年生まれの21歳
女性声優界隈で言えば花谷麻妃さんと同学年である、ビビる
勿論推しより年下である(推しは年齢非公開であるものの、二十代中盤)

推しイベの後

完全に慣れない空間でも立派にお仕事をこなした推しを見届けた後は遅めの昼食
鈴鹿サーキットの名物らしい焼肉ランチと牛串を食べることに
……のだが焼肉ランチを販売している場所がとんでもなく遠かった……
流石サーキット、会場敷地のスケールが違う(物理)


凛ちゃん、焼肉ランチだよ
凛ちゃん、牛串だよ

こういった場所のご飯はかなり割高なイメージがあるが
そこまでといった感じではなく、ボリュームもしっかりあって美味しかった
この写真で一番金がかかってるのは缶バッジ

そうこうしてるうちに決勝レースの時間が近づいてきた

参加するマシンが並んだところでグリッドウォークが始まり
グリッドウォークに参加している推しを見つけてフェンス越しに眺めてたら、自分のオタクに気づいた推しからファンサが返ってきたりした
こういうところ推しは本当に偉い、好き

※グリッドウォーク…レース開始前にマシンとレーサーが並び、参加券を持った観客や招待客がコースに降りて
マシンを眺めたりレーサーに声をかけたりする、いわゆる接近戦
グリッドウォークの参加券付きチケットは今回だと4万円↑、女性声優のお渡し会なら10周くらいできる
ちなみに私はその前日3000円で1回の女性声優の接近戦を5周してました(なんで?)

そしてグリッドウォークも終わり、いよいよスタート目前、私が人生で初めて現地で観戦するレース

前方の声優オタク、後方のモタスポオタク

ところで、私はオタクとして決めている考えがある
それは『初のイベントはできるだけ良い席で』ということだ

一番最初の想い出になるものはなるべく良いものを見て、次回もまた来たいと思えるような体験にしたい
特に今回、ハイスピの展開を考えればサーキットを訪れる機会は今後も沢山あるだろう、その為のモチベーションにもなる

さて、ここでひとつの疑問
サーキットにおける『良い席』とは?

まず私のようなサーキット初心者に大前提をお伝えしておくと、少なくとも今回のSFのようなレースでは、会場の大部分が自由席(他レースについては詳しくないので雑な知識はお許しください)
観戦するにはサーキットの入場チケットだけで十分だったりする
かなりの観客がいたとはいえ、サーキットの座席数はその敷地面積分だけデカい
鈴鹿サーキットは収容人数15.5万人らしい
池袋地下のアニメイトシアターの745倍、サイエンスホールの378倍である
ちなみに和泉風花さんのフォロワー数の13倍(2023年5月時点)
F1クラスになるとまた話も違うのかもしれないが、自由席でも正直好きな場所選び放題なのだ

そんな中に設定された有料の席
今回の鈴鹿サーキットでざっくり分けると
①先述のグリッドウォーク等に参加できるプレミアムな席
②複数人で利用できる個室やブースのような席
③有料指定席
④有料エリア席(エリア内では自由に座れる)

という具合

①は先述の通り、流石に初心者が手を出せる価格帯ではなし
②はそもそもグループ利用前提なので除外
ということで③の有料指定席を利用することにした

鈴鹿サーキット座席

地図のV2と表記されたエリアの一席である
よりコースに近いV1の席は今回は自由席エリア

……声優のオタクに限らず、イベントに行くオタクの感覚は「席は前方であればあるほど良し」という学生時代の席順と真逆の法則があると思うのだが、サーキットはそうでは無いらしい
有料のV2エリアでも、ある程度以上後方の席のほうが人気のようだ、後方彼氏面席だ

私が実際に座った座席からの景色がこれである

後方彼氏面V2席からの視点

……なるほど

後方で高い位置から見られる分、ホームストレートの奥行きがよくわかるうえ
その裏手にあるピットもよく見える
写真には写せていないが、左方向には最初のカーブも視界に入るので、この近辺のマシンの駆け引きはかなりしっかり観ることができる

後方彼氏面席にこんなに人権を感じる日がくるとは
アソビストアにも見習ってほしい

そして決勝レース

そんなこんなで決勝レースのスタート時間

※以下、レースの内容については完全に素人ゆえ多少大目に見てくれると助かります※

ついに待望の決勝レースが始まり
各マシンが一斉に動き出す、と、思ったが

各マシンが動き出す中、私の前で1台のマシンが完全に停止したままだった

実況を聴くに、どうやらエンジンストール(=マシントラブル)らしい
自力で走れないマシンが、作業メンバーの手押しでコースの外へと去っていった

いきなり波乱の幕開けになった……と思うのも束の間
更にマシントラブルで1台のマシンがピットレーンに帰ってきてしまった

……先ほど和泉風花さんとトークステージに立っていた
佐藤蓮選手のマシンだった

流石にショックが大きい
ついさっきはステージで推しとガンダムトークをして、二人して「止まるんじゃねぇぞ」のポーズをしたり
何故か人前でイラストを描かされていた人だ

私にとって初めて生で見たレーサーで、当然個人的に「どんなレースを見せてくれるんだろう」と期待もしていた
その選手が、そもそも勝負のスタートすら切れない
これがレース、モータースポーツの世界
私にとっても、おそらく一緒にステージに立っていた推しにとっても、レースの現実を鮮烈に焼き付ける展開となった

既に2台が脱落するというトラブルが起きたものの、レースは周回数を減らしそのままスタート
マシンがとてつもない爆音を鳴らしながら、最大時速300キロオーバーで駆け抜ける
鈴鹿サーキット29周、およそ170kmの勝負が始まった

一応、私も推し案件である以上、前戦の富士スピードウェイのSFはアプリで観戦していたが
正直……その時点では、あまり面白さを感じなかった
レースについての知識も素人である以上、テクニカルな要素は全くわからず、それについては正直仕方ない面もあるが
子供の頃チキチキマシンやらマリオカートやらでマシンがガンガンぶつかりあったりドリフトしたりといったものを見てきたせいで、フォーミュラのような接触しない、ドリフトもないレースにエンタメ性を見出せなかったというのもある

しかし、現地で、自分の目で観るレースは全然違った

まずスピード感が画面越しとは全然違う
更にそのスピードの中でマシンが接近する距離が信じられないほど近い
こんな高速で、あの距離の近さで、人を乗せた金属の塊が、相手を抜こうとしたり進路を塞ごうと駆け引きしている
画面越しでは伝わらない、信じられない光景だった

特に、SFにはOTS(オーバーテイクシステム)というシステムがある
有り体に言えば、マリカのキノコだ
一度のレースで合計200秒間、一時的にマシンを超加速させる代わりに、一度使うと再使用まで100秒間クールタイムを要する
この加速力は脅威で、前に多少離されていても一気に追いつけるし、目の前の1台相手なら容易に抜き去れる
マリカと違うところは、マシン同士が接触すれば自分諸共大事故になる為、前方車は後続の進路を塞げば使用をやめさせることができること

見事にOTSが炸裂し順位がひっくり返れば歓声が上がり
前方車が巧みなハンドリングでOTSを使用不能にすればどよめきが上がる

正直めちゃくちゃ熱い

そして、ピット作業もまさに圧巻
ものの数秒でタイヤ4本が完全に入れ替わる
女性声優のお渡し会でも剥がしはこんなに速くないだろってくらい早い

そしてレースが中盤から終盤に差し掛かる頃
タイヤ交換を終盤まで控えていたトップのマシンがピットインしてタイヤを交換
その数秒間でトップの順位変動が起こり会場が沸く

ピットイン中にトップから3位に後退したマシンがコースに復帰し、ここからレース終盤というタイミングで先ほどとは違ったどよめきが走った
先ほどタイヤ交換を終えたばかりのマシンとその後ろにつけていたマシンが接触しクラッシュが起こったのだ
ホームストレート、丁度私の対面にある客席の裏手から煙が上がり、大勢の観客がクラッシュの様子を確認していた
つい先ほどまでトップを走っていたマシンが脱落

……しかもそれに接触した後方マシンのドライバー野尻智紀選手は、レース前に推しと一緒に写真を撮っていた人である
いやなんでやねん

沢山の波乱を生み、最終盤まで順位の入れ替わりが起きたレースは
全22台のうち12番目の位置からスタートした宮田莉朋選手の初優勝という形で決着した

99年8月生まれ、推しも所属してるアミューズ声優のグループ、アミュボの最年少富田美憂さんと同学年である、これまた若い……(そういう比較しかできないのか?)

観戦を終えて

自分自身の目で初めて目撃したレース、その優勝で大はしゃぎしている姿を見ると、素人でもかなり感慨深いものがあった

レース自体の波乱さというのもかなりあったとは思うが
(実際に知り合いのモタスポ勢に聞いても、こんな波乱のフォーミュラレースはなかなか無いらしい)
画面越しでは決して湧かなかった『レースってこんな面白くて熱いの……!?』という驚き
失礼ながら、正直当日までは「推し案件のついで」という意識が大きかったのだが、本当に面白い世界を知ることができた

推しのこの感想、素人ながら本当に共感する

サーキット現地まで来るのは、モタスポガチ勢以外には決して楽じゃない
けれど確かに、それだけの苦労をしても実際に現地で観てみたいと思える魅力があることを痛感した

と、こんな感じで初のスーパーフォーミュラ現地観戦を大満足で終えることができたが
やはり初心者には色々な面で難点もいくつかあった

①アクセスの大変さ
というかこれが9割
ここ数年オタク界隈では競馬ブームで、実際に競馬場まで足を運ぶオタクも珍しくないが、サーキットのアクセスの厳しさは競馬場の比じゃない
まぁそれもそのはずで、1周数キロのコースを作れるとんでもない土地面積に加えて、静音性なんてあったもんじゃないレースマシンの爆音が鳴り響く場所なんて人の多い場所に作れるわけもなく、必然的に僻地になる
今回の鈴鹿サーキットはかなりアクセスが楽なほうではあるものの、それでも公共交通機関でのアクセスはなかなかハード
更に地方のサーキットにまでなると……

②会場の広さ
これに関しては事前の調査不足でもあるが、行きたい施設や食べたい食事などがある場合、事前に詳しい場所を調べておかないと迷って結構な距離を歩くことになる
時間に余裕をもって行動する必要が大きい

③天候と日差し
たまに屋根がある程度の屋外なので天候の影響がかなり大きい
私の今回の日程はほどよい快晴だったので問題なかったが、レースは当然雨の中でも開催される
また晴れても、今度は日差しと照り返しがキツイ
私は普段から日の当たらない場所ばかりで生きているインドア陰キャオタクだったので、ろくな日焼け対策をしておらず地獄を見た、日焼け対策くらいはしろ

最後に

話を大きく戻すと、私は今回そもそも推しである声優の和泉風花さん
その和泉さんが主人公役として出演するアニメ『HIGHSPEED Étoile(ハイスピードエトワール)』のコラボステージへの出演を目当てに、サーキットへ足を運んだ
アニメの放送は来年、今後は更に放送に向けてタイアップイベントも頻繁に開催されるようになるだろう
もしかしたら某競馬コンテンツのように、アニメ視聴をきっかけに実際のレースに興味を持つ人も増えるかもしれない
たしかにサーキット現地に行くハードルは高い
けれど実際に足を運んで、とてもいいものを観せてもらった一人として、何かのきっかけがあればサーキットでレースを観てみてほしいと思う

推しの待望の主演作、そしてそのベースになっているモータースポーツが、これまでこの世界を知らなかったオタク達の話題になってくれることを願って
女性声優オタクは、これからもスーパーフォーミュラを楽しませてもらおう

ハイスピコラボブースでコンパニオンの清水サニさんと
ツーショットを撮る女性声優のオタク

ところで、SFの次戦は大分県のオートポリス
まだ全く不明なものの、再びハイスピコラボで推しが呼ばれるなら当然オタクは飛んでいくので、初の大分旅行になるのだが、どうなることやら……

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