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複業している人事マネジャーは思う。「大企業のおじさんは複業すべき」

3年前から複業をしている40代のパラレル人事ワーカーです。COMEMOのご意見募集「#成長につながる複業とは」を見て、これまでの自分の経験踏まえ意見を書きました。結論は、成長のために「大企業のおじさんは複業すべき」です。


まず、私自身の複業について

3年前に地方に引っ越して、それから在宅ベース・複業もたまに、の仕事スタイルを続けています。複業の頻度は、多いと週に1日(結構大変)・少なくて週に1時間ぐらいです。

普段は大手企業の人事マネジャーとして働いていて、制度企画や運用、研修や労務対応など人事全般を担当しています。培った人事経験をもっと活かしたい・お小遣いを増やしたい と思い、3年前に複業として個人での人事コンサルタントをはじめました。具体的には、研修講師や人事制度設計支援、各種人事に関するアドバイスをしています。

はじめた頃に年に数万円だった複業の収入は、現在は数百万円ぐらいになりました。人事や経理等のコーポレート系の職種は、40代以上でも結構ニーズがありますし、リモートワークが増えたことにより、他社のオフィスを訪問する必要がなくなり、仕事を増やせるようになったことも大きかったと思います。

上記の通り、私の経験は複業のなかでも ”大手企業で働きながら、個人の専門性を活かして個人事業主として複業するパターン” ですので、この後の意見は、このパターン前提で書かれているとご理解ください。それではCOMEMOお題への意見です。

あなたが考える「成長につながる複業」とは何ですか?

これまでの経験を理論化し、専門家という立場で価値を提供しつつ、個人の専門性をさらに拡げられる・深められる仕事が、成長につながる複業だと思います。

複数のお客さまとお仕事をさせていただいていますが、組織が異なれば課題感やルール・運用も異なるので、これまでの経験だけでこなせたことはありません。価値を提供するために常に専門知識をUpdateしなくてはならず、都度大変ですが勉強になり、自身の成長を実感しています。詳細は次のお題で記載しますね。


お題② 個人が1つの組織だけで成長を続けるのは困難で、複数の組織にまたがった仕事をこなしてこそ成長は最大化できる、との考え方をどう思いますか?

一つの組織だけで成長が困難かどうかはそれぞれの会社の社風にもよると思うので、断言はできません(COMEMOさんがあえて大きく振った質問とは思いますが・・・)。

しかし、個人は異なる環境・チャレンジを経験することで、大きく成長できると思っています。チャレンジが無数にある組織であれば一つの組織の中で成長できるでしょうし、あまり変化のない組織であれば、成長は鈍化します。そのため、変化の少ない組織にいる方は、複数の組織にまたがった仕事(新しいチャレンジ)をこなしてこそ成長できる=複業が有効です。個人のネットワークも広がり、刺激も多いと思います。

例えば、私が先日経験したスポーツチームでの複業経験では、お金をいただきながら自分自身とても成長できたと感じました。お客様先では土日に試合があるため、社員も土日に出社することが多々あり、労働時間も長くなりがちです。

しかし、私はこれまで、土日が基本休みの企業でしか働いたことがなく、どういった仕組みがもっとも社員の負担を減らすことができるのか、働き方やルールはどのような形がベストなのか即答できず、勉強し、社長・社員の方々と一緒に考えました。

結果、よい仕組みをつくるご支援ができたと思いますし、自分自身曖昧に理解していた労基法の領域を深く理解することができました。何よりも、契約後にも試合にご招待いただき、最高の思い出になりました!

また、複業をはじめると、なぜこういった事業を始めるのか、自分はどういった人間なのか、どのような価値観を持っているのか ということを深く考えます。元GEでクロトンビルの研修講師を務めた田口力さんは著書「世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本」のなかで以下のように述べられています。

ビジネス・パーソンの「今後の成長」を占う、とても重要な質問があります。「自分がどんな価値観を持っているか、考えてみたことがありますか?」

日々忙しく働いていると、そんなことを考える時間などないのが普通かもしれません。しかし、この抽象的に思える質問は、あなたの成長スピードに大きく関わってきます。

自分の価値観を「意識下に置く」ことで、自分の判断・行動に、自分なりの意味づけができます。この「結果について振り返りを行う→教訓を導き出す→次の判断や行動に生かす」というサイクルこそが、ビジネスパーソンとしての成長を推進するサイクルなのです。

会社員として働き続けると、仕事内容や求められる価値観は会社が決めてくれることが多く(ココが問題・・・)、「自分」を意識しないで定年を迎えることもあるかもしれません。しかし、事業を始めるときは「自分は何なのか?」を考え抜くことが必要です。

複業を始めたころ、お客さまを紹介しようとしてくれた友人に「人見さん、事業内容を説明したチラシをもらえますか?」と聞かれて驚いてしまったことがあります。軽い気持ちで専門性の提供を行おうとしていたものの、これまでの会社員人生で「自分自身のチラシ」を作ったことはなく、恥ずかしながら、そんな必要があるとも思っていなかったのです。

そこから慌てて、何が具体的に提供できるのか、なぜ人事コンサルを始めようと思ったのか等を棚卸しました。それにより、どういったお客様に私の知見がフィットするのかもよく見えてきましたし、個人事業主として申請し、名刺を作り・・・といったプロセスを経て、プロフェッショナルとしての意識が一層高まりました。
また、自分の強みを活かし、差別化した価値を提供するために「(ぼんやりと人事全般でなく)どういったことを経験し、何を学ぶ必要があるか」についても日々考えるようになりました。

さらに、複数の仕事を掛け持ちすることは、仕事を楽しくします。複業先での仕事が楽しいのみならず、元々所属する会社の仕事も楽しくなります。
これは、会社員は一つの組織だけに所属していると、(富岡義勇風に言うと)「生殺与奪の権を握られている」という感覚が強くなるからだと思います。これも所属する組織次第ではありますが、ミスにおそれ・余計な発言は慎み・同僚が先に昇進したら焦る といったことを誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。
Googleのように心理的安全性を高める意識が高い会社はともかく、そういった理解のない上司の下で働くことになると、しばらくは我慢するしかありません。。。

しかし、複業をすると、自分は他でよい仕事をし、認められているので今の組織だけにこだわる必要・恐れる必要はない という気持ちが強くなります。現在の仕事にも挑戦し・言うべきことを言い・ほかの人の処遇が気にならない、といったポジティブな変化が生じます。一つの組織で失敗しても、別の組織で成功していれば立ち直りも早くなると思います。

私自身は、複業をはじめてから、元々所属する会社で以前よりも率直にフィードバックできるようになりました。上司に対しても課題があると思ったら(言い方は気を付けますが)その旨を伝えています。
ご本人のため・チームのためと思って発言するので、当然といえば当然の行為ですが「一社だけに所属する会社員」という立場ですと、これは中々難しかったと思います。
先般、チームメンバーからは「厳しいこともきちんと言えるリーダー」とのうれしいフィードバックをいただき、複業の効果かな~と個人的には思っています。


お題③ 大企業のビジネスパーソンにとって、「複(副)業容認」という流れはラストチャンス、だと思いますか?

大企業のビジネスパーソン・今のおじさん世代にとってはラストチャンスだと思います。特に、山口周氏に「劣化するオッサン社会の処方箋」で”知的真空世代”とまで言われた50代は、多くの企業でコストとパフォーマンスが見合っていないことが多いと言われています。いわゆる「働かないおじさん問題」です。

昨今の競争の激化や変化の激しさ、経験が通用しないビジネスが増えてくると、おじさんのパフォーマンス不足・人件費の負担は組織にとっては本当に問題で、昨年の日経ビジネスでは「トヨタも悩む 新50代問題 もうリストラでは解決できない」という特集まで組まれました。

当社を見ている限り、昨今の20代はデジタルネイティブで柔軟性もあり視野も広く、仕事ができる印象です(発言の時に「一概には言えないと思いますが~」など、自己認知力も高い・・・私の時と大違い)。
中高年の1人分の人件費でこのような人材が1.5~2人は採用できることが分かってしまうと、ますますおじさんに対する風当たりは厳しくなります。人件費を管理する立場として、本当にこの厳しさを目の当たりにしています。

こういった状況の中、複業を支援することは、おじさん達が少しでも市場に目を向け、自己研鑽に励み、意識・意欲を高めて会社にも還元してもらえる可能性があり、リストラに代わる解決策になるかもしれません。

複業のマンガではありませんが、起業をテーマにした「スタンドupスタート」の第一話では、おじさん会社員が「バブルの売り手市場就職と年功序列が生んだ会社の負債」「いっそ辞めてほしいよ」と言われてしまうシーンがあり、会社に尽くしてきた社員の気持ちが赤裸々につづられています。また、そこから起業を志すなかでの本業へのよい影響描く姿を見て、とても共感し、思わず涙しました。

また、大企業に所属するよいところは、困ったことは誰かが知っている点です。一人ではアドバイスが難しいような場面でも、社内のだれかに聞けば支援が得られることは、アドバンテージがあるように思います。


お題④ 個人の成長を考えたとき、複業をどのように活用すべきだと思いますか?

冒頭に申し上げた通り、これまでの経験・専門性を活かせ、その専門性をさらに拡げられる・深められる複業が、一番成長につながる複業だと思います。そのために、ビジネスパーソンは、会社員とは別に個人事業主として自分自身で出世(世に出るの意味)して、自分の肩書を自分で決めて、ローリスクで、楽しくて、成長につながる働き方をデザインすることがよいと思います。

一方で、組織はこういった活動を支援するために、場所や勤務時間・日数についてより柔軟な仕組みを設ける必要があります。タニタさんが取り組まれているように、社員を個人事業主にするのも手段だと思いますし、そういった社員が増えるほど、新たなニーズに伴う仕組みが必要になります。


最後に

COMEMOさんにもある通り、複業を容認する企業は3割程度で、徐々に広がってきたものの、未だ懐疑的な経営者もいるようです。

しかし「働かないおじさん」問題の解決策には手段も時間も限りがあるので、まずは複業を推奨してみて、うまくいかなければ「やっぱり複業禁止」でいいのではないでしょうか。また、複業に躊躇している中高年の方々は失敗しても何も損はありません。

組織・個人ともに、お互いの成長のために、ぜひ一度チャレンジいただきたいと思います!

#日経COMEMO #成長につながる複業とは #副業 #複業

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