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公園のベンチにて

今朝、外出して連休を満喫されている方の記事を読み、少しくらいは外出しようかなという気分になってふらっと出掛けてきた。

出掛けた先は春は桜の名所としても有名な、緑の豊かなそこそこ大きな公園。
桜の季節は過ぎたのでそんなに混んでいないかと思いここを選んだのだが、案外にぎわっていた。

昨日ほどではないが暑かったので、園内をぐるりと周った僕は、アイスコーヒーを片手にベンチで涼むことにした。


すると視界にある建物が目に入った。すっかり忘れていたのだが、そこは昔僕の祖父が入院していた病院だ。

僕がまだ幼稚園児だった頃の出来事なので、随分と記憶が曖昧なのだが、僕はよくそこに家族でお見舞いに来ていた。

その病院を眺めていたら、当時のささいなエピソードを思い出したのでそれを書こうと思う。


僕は子どもの頃、野菜が嫌いだった。けれど食べないと叱られるから、いつもがまんして食べていた。

しかしある時祖父のお見舞いに訪れた病院の売店で、親にあるものを買ってもらった。

それはカルビーの『グリーンスナック(今のベジたべる)』だった。それはパッケージに野菜の絵が書いてあるのにも関わらず、なぜかとっても美味しかった。だから僕はそれを喜んで食べた。
そして病室にいる祖父に、野菜が食べれるようになったと自慢したのだ。

当時祖父はもう長く持たない状態だったのに、おかしな自慢をする僕をものすごく褒めてくれた。僕はそれが嬉しくて、しばらくおやつにそればかり食べていた。


今思い返せば、なんという勘違いだろうと思う。
ベンチに腰掛けてアイスコーヒーを飲みながら、もう随分大人になった僕はこう思った。

「おじいちゃん、僕もうちゃんと野菜食べれるよ」と。

ベンチを立った僕は、公園から少し離れたところにある店で蕎麦を食べ、好きなパン屋でパンを買って帰宅した。
ふらっと思い立って出掛けたのに、思いがけず忘れていた子どもの頃の記憶に触れるいい外出になった。

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