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喫茶店で珈琲は飲めず…パインジュースを飲んでいた頃


高校の二学年上の先輩
私は一年生
その年の文化祭のステージでは
アコースティックギターで
弾きがたり

低音の
女性ボーカルと二人で歌う
「落陽」は圧巻
ギターの弦の
弾ける音色が
大好きだった
ダンっと
足裏で床を鳴らし
取るリズムも

彼は高校を卒業して
すぐに
喫茶店を開店
マスターになった
そこは
すぐに
音楽仲間と
後輩たちの
溜まり場になった
少し悪(ワル)を気取った者たちは
その独特の
個性的な
音楽論や
思想を語りながら
ギターを鳴らし
想いを
歌詞に起こし
メロディに乗せていた

高校生の私は
ドキドキしながら
喫茶店…という
初めての空間に
恐る恐る身を置き
きっと
背伸びをしていた
カウンターの
一番隅っこに座り
そこに集う人たちの
会話も
何も
意味さえ
わからなくても

ただ頷いて
わかったフリをしてまでも
その輪の中にいたかった

マスターになった先輩から
いつも
私は
あだ名で呼ばれ
それも
特別扱いのようで
とても嬉しかった

時に
店には
誰もいなくて
マスターと
二人きりの時には
カウンターで
パインジュースを飲みながら
人生相談のような
会話をしていく
好きだった人への
叶わない想いやジレンマを
話していた

マスターが
サイフォンで淹れてくれる珈琲が
飲めるようになったのは
ずいぶんと後の事

珈琲の美味しさが
わかるようになった頃には
それなりに
私もいろいろと経験し
パインジュースを
飲んでた頃の自分を
かわいかったと
羨むほどの
寛容さと図太さを
身に付け
大人になったのだろう

できるものなら
もう一度
あの店を訪れ
何を悩んでいるの?と
聞いてくれたマスターに
会いたい

珈琲よりパインジュースを
飲みたい

その店は
今は
法律事務所に
変わってしまったと
そんな話を
ふるさとの友から聞いた

https://youtube.com/watch?v=mVHydUNHCdE&si=3h3gBLwHeLQAC-N6




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