助詞で読み解く広告の意志
こんばんは、Shiraneです。
クリスマスに日本に帰国、年末があっという間に過ぎ去りました。
皆さんは年末年始、いかがお過ごしでしたか?
私には時差ボケと正月ボケがありましたが、世の中は年の瀬も変わらず動き続けていたみたいです。
”広告”も四六時中働き続けるものの一つ。
諸説ありますが、人が一日に目にする広告の数は2000にのぼるそうです。
ウザったい側面もありますが、
現代人の情報源の一部を構成をしていることに違いありません。
今回は帰宅時に目にした河合塾の構内広告を取り上げ、
今回は日本語を掘り下げることで新たな広告の見方を探っていきます。
1.は? 助詞が与える印象
『河合は、1月開講。』
女子高生を真ん中(中心)に立たせる →生徒ファーストの強調
明朝体のフォント、白と黒を基調 →教科書をイメージ(学生と親御さんにとって親しみやすいもの)
こういった非言語の特徴もありますが、ここでは言語を深掘りましょう。
河合は固有名詞、1月開講は名詞。
特に注目したいのは、「は」という助詞です。
品詞分類では付属語
話しの中で意識されることが少ない
そんな控えめな印象の助詞。
助詞全般を指す「てにをは」という言葉もあるように、助詞にもそれぞれの特徴があります。
何の助詞を選択するかで、印象だけでなく意味もガラリと変わる。
今回の広告で登場した「は」は、客観的に事実を伝える際に用います。
”主語を強調したい時には「が」
事実を伝えたいときには「は」”
「は」を使うことで河合の広告は1月開講という事実を強調したかった。
品詞の特徴を知ることで、一つの助詞が与える読者(見た人)への印象は随分変わりますね。
2.「よそはよそ。うちはうち」マーケティング
助詞を巧みに使うことで上のキャッチコピーは、そのメッセージ性を明確にすることに成功しました。
河合塾は、1月開講という事実の宣伝はマーケティングにおける競合他社との差別化としても効果を発揮します。
念のために触れておくと、河合塾は三大予備校のうちの一つ。
予備校業界は寡占状態と言えませんが、少なくとも2社は河合塾にも存在することがこれより分かります。
一般的に予備校は3~4月といった進学・進級あわせて入塾を検討することが多いとされます。
そんな中で、河合塾は1月から始めますよ。
というのが広告の主張です。
よそはよそ、うちはうち。
そんな、他の家庭を羨んでも無駄だよといった言葉も広告の世界では意味が変わります。
他の企業(家庭)と違う。
その事実が企業間の差別化、河合塾のブランドや優位性を際立たせます。
3.副助詞としての「は」
助詞には格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞という4つの区分があります。
その中で「は」は、副助詞に位置付けられています。
※先ほど登場した「が」は、格助詞です。
この副助詞は複数の機能性を持ち、場面によって意味が変わる助詞とされています。
先ほどは「客観的な事実を伝える」という意味で「は」を見てみましたが、他にも”強調”があります。
やや大袈裟に言えば、
「(他の予備校ではしていないけど)河合塾(だけ)は、1月開講(しているよ!)」
といった解釈も可能ですね。
英語に助詞は存在しません。
また、2.のマーケティングという考えも西欧から渡来したものです。
以上から、企業戦略においては
2.の事実を打ち出した企業間の差別化として「は」は用いられた可能性が高いです。
その一方で、強調表現は、言葉に抑揚を与えます。
これにより企業PRの面においては
「1月開講といえば河合塾! 1月のこの時期から検討してね~」
といった主語を強調したメッセージ性が見えてきます。
「は」の2面性を理解すると、一枚の広告も見え方が変わってきますね。
4.まとめ
今回は助詞から広告の2つの意志を読み解いていました。
広告も見る人によってはただの紙切れです。
ですが、知識・視点があるとまた違った顔が姿を現します。
この広告の多面性にはどこか惹かれる趣深いものがありますね。
年末を越え、年始。
私は、いつも初詣の帰りに「こんぽた」ならぬ伊藤園のコーンポタージュを買ってしまいます。
じっくりコトコト
という響きがいいのもそうですが、つい寒空のもと帰路につくなかで飲みたくなるんですよね。
そんな私も、見事に広告に引っかかっているのかもしれません(笑)
「私は年始にこんぽたを飲みたくなる」
「私は年始にこんぽたが飲みたくなる」
どちらでも言えそうなことです。
ですが少なくとも、私にとっては
こんぽたは年始に限ります。
~Fin~
参考記事:
ALTENAS
『「てにをは」とは?助詞の使い方をマスターして日本語力を高めよう』
https://altenas.jp/blog/about-postpositional-particle#index_1F_dZoME
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?