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【一縷(いちる)】

そう彼女の愛情は一人分しか無かった。


その対象が僕から君に移っただけのことだ。
とはいえ君に恨みなんてあるはずもない。
だから本当に感謝している産まれて来てくれて。

あのときグズる君に精一杯の愛情を伝えた。

「お腹が空いたのかな?」
「それとも眠いのかな?」
「分からなくてごめんね…」
「でも君のことが大好きなんだよ…」

そっとぎゅっと抱き締めた。
もしも僅かでも残るものがあったのなら嬉しい。

コンビニで幼児を連れている父親を見掛けた。

「パパあれ買って!」
「ダメこっちにしなさい」
「ヤダヤダあれがいい!」
「もうしょうがないな…」

ほんの些細な親子の会話が、
僕にはもうないその未来がとても羨ましかった。

誰が悪い訳でもない、
遅かれ早かれこうなる運命だった。

ただ気づくのが遅かっただけ、
僕が間に合わなかっただけだった。

ほんの小さな歯車でも狂えば、
いつかその仕組みは瓦解する。

創造するのは困難を極めても、
破壊するのは刹那的で一瞬である。

人生に正解はない。
人はその都度毎に選択するしかない。

人生に正解はない。
その先に何が待ち受けているかは分からない。

人生に正解はない。
それでも選ぶしかないのだ。

人間だもの。

未練がないと言ったら嘘になる。
彼女には恩があった。

あのとき助けてくれたのは彼女だけだった。
だから幸せにしたかった。

そう三人で幸せになりたかった。

しかしその恩人が望んだことだから、
僕は叶えるしかなかったのだろう。

人生は仕方がないことだらけで出来ている。
そして一寸先のことすら誰にも解らない。

別れがあるのなら再び交差することや、
新たな出逢いもあったりするのだろう。

まあ今はそんなことはどうだっていい。

澄みきった空に願うのはただ一つ。
キミ達の幸せだけでいいんだ。

困ったときは今度は僕が助けになるから。
だから僕はこれからも書いて往くよ。

いいでしょ?






…こんな僕を愛してくれて、ありがとう。




~The end of something is also the beginning of something.~


2019/03/12(Thu): 今日から三年ぶりの上京です、楽しみですよ。 「東京バナナ」を必ず買います、大好きです。