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美容室では俗世を忘れていたい

私が通う美容室は、
美容師さんは二人、男性の店長さんと女性の美容師さん。
イスは四脚、シャンプー台が二台。
通い始めた当初は、店長さんと一緒に働く美容師さんかと思っていたが、
しばらく通ううち、どうも違うようだと思い始めた。

私は店長さんにいつもお願いしているのだが、通されるイスはいつも同じ。
もう一人の美容師さんも、お客さんを通すイスはいつも同じのようだ。
つまり、イス二脚ずつ、それぞれが持ち分のようだ。
そして、お互いのお客さんは最初から最後まですべてを担当する。
片方がどんなに忙しくて、もう片方の手が空いていても
シャンプーやブローに手を出すことがない。
どうも、屋根は一つだが、
その下には二軒美容室がある仕組みのようなのだ。

そのせいか、お客さん同士、美容師さん同士が交わることも無く、
それぞれがそれぞれのお客さんと話している。
私を担当してくださる店長さんは、
髪や頭皮の健康についての勉強に熱心で、
新しいトリートメント材や機器が出ると
真っ先に導入して使ってみたくなるらしく、
最新の情報を教えてもらえたり、試してもらえたりと、とても楽しい。
と言いつつ、人見知りな私はあんまり美容室では話さずに
美容師さんの手元をずっと見ている性質たちなので、
話をしなくても全く苦痛ではない。
話が盛り上がるのは三回に一回くらいなものだ。
店長さんもどうやら、人見知りの気があるらしく、
固定客だと認識されるまではあまり話したことがなかった。
話し方も、少し高めの小さな声でぽつりぽつりと話し、
話が途切れるとそれっきり、黙々と手を動かしてくれる。
話題が無いのならいっそ、
黙っていて欲しい、と思う私の願い通りの方なのだ。

もう一人の美容師さんはそれとはちょっと違うタイプ。
施術の間中、ずっと話をしているタイプだ。

そして、その話題が、ちょっと苦手だ。

ずっと、子供の話。
小さいお子さんが二人いるお母さんなのは知っている。
雰囲気も、こう言っちゃなんだが、
「いかにも、お母ちゃん」
といった感じ。
だからといって、白が基調のおしゃれなお店中に響く大きな声で
子供の病気や習い事、保育園の話を延々と聞かされるのは辛い。
常連の男性問わず、女性問わず、子供界隈の話題で盛り上がっている。
出来れば、美容室では身内の話、子供の話、ペットの話は聞きたくない。
普段の頭悩ますいろいろを忘れて、
少しでも綺麗になれるコツや、
美容関係の最新の情報を聞きたいと思うのは私だけだろうか。
素敵に髪を巻いてもらった隣で
大声で子供の成長を報告し合って笑っている声が、
店長さんの説明をかき消してしまうのはちょっと興ざめなんである。
私はアイロンで素敵に髪を巻くコツを教えて欲しいのだ。

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