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研究者日記 Day33

ここ2~3日の間に見た、「気になる水中考古学」関連ニュースの紹介。

脈略、順番関係なし。ただし日本のニュースをトップに持ってきました。皆様には、ぜひリンクをクリックして読んで欲しいです。翻訳機能フル活用かな…。


その1

にゅーすというか、お知らせ。

たくさんの人に参加して欲しいですね。水中遺跡を実施に見つけるのは漁師やダイバーの方々。そこにはまだまだたくさんの情報が眠っている。


その2


長野県諏訪湖の曽根湖底遺跡。日本ではじめて水中遺跡の調査が行われたのは明治時代なんです。水位変動により遺跡が水没したとみられていますが、地球科学的な研究成果と考古学の成果がマッチング

縄文遺跡から見つけた諏訪湖の水位変動 60年前の研究成果を最新調査が裏付け|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト (shinmai.co.jp)


その3

万博! 行きたい! (本当かな…)。いや、このスペインのパビリオンは面白そう。水中遺跡調査の技術を見れるんだって!


とはいえ… 大阪万博の会場って埋立地なんですよね。日本は、アセスメントの義務がないから、たくさんの水中遺跡が破壊されているわけ。つまり、スペインが遺跡保護の技術を展示するその真下にはぶち壊された遺跡があるってこと。そして、そのことに全く気が付かない人々がたくさんいる。もちろん、政治家さんなどね。


その4


結構、重要な内容を語っています。ぜひ読んで欲しい。何か真新しい発見とか、そんなニュースではない。キャリア40年の研究者が語る、重みのある言葉。

Efforts to raise a Revolutionary War gunboat from Lake Champlain discussed | WAMC

水中遺跡の研究とは何か、保護とは何か? 
今まで水中遺跡を引き揚げることなど考えたことがほぼないという。遺跡を守るには、その場で保存が一番。ところが、最近の水温上昇など環境の変化により水中遺跡への影響が出始めている。今まで冷たいところにいなかった生物が北上している…そして、それは遺跡を喰ってしまう。

遺跡を守るためには、引き揚げることも選択肢に入るのか…


その5


ちょっぴり前のニュースですが…
サウジ、頑張ってますね。来年、行こうかな…?

紅海に8,000件の遺跡があると推定
70件の遺跡探査を実施(計画)中
これまでに8件の遺跡で調査(一部発掘)済

優等生ですね。先進国と似たような数字です。たくさん遺跡を特定して、遺跡を現地で保護し、本当に必要な遺跡だけを掘る。

日本はね…オカシイデス
387件登録、そのうち200件近くで発掘調査済
う~ん、この件数については、後にいろいろ書きたい。つまり、見つけた遺跡は大体掘ってる。調査件数は意外に多い。でも、それは世界の常識から反対方向なんだよね。サウジはまだまだこれからですが、世界を見習っているのは、さすがだと思う。

https://www.arabnews.com/node/2442076/saudi-arabia

こっちのニュースの方が分かりやすい。


その6

第2次大戦中。銀塊を積んだ南アフリカの船が旧日本軍によって撃沈。
その船を、とある有名なイギリスの投資家が銀の売却目的で引き揚げ。ところが、これに南ア政府が反対。

裁判になり、投資家が負け。

銀塊などの引き上げ費用などすべて投資家の自己負担で儲けはゼロ

今後、似たようなケースが世界でも起こる可能性が高いですね。スペイン政府も何度かアメリカのトレジャーハンターと裁判を起こしています。トレジャーハンターに勝ち目はないのか。世界の流れは水中遺跡保護を優先しています。


その7

おなじみのコロンビアで発見された沈船、サンホセ号。スペインの船です。1708年沈没。世界最高額の財宝を積んだ船なのだとか、ハッキリ言って、そんな財宝にみじんも興味ありません。とはいえ、それに振り回されている人々がいるのが事実。しかも、メディアが先導してウソを並べています。いや、ウソではなく、思い込みで書いてしまっている場合が多いです。財宝とか大金とか書けば読む人が増えるからね…。くだらないです。

南米の先住民族グループらが遺跡の所有権をUNESCOやスペイン、コロンビアに対して主張しているというニュースです。

まあ、アメリカのトレジャー会社がコロンビアと契約を結んで、数十年前に見つけたらしいです。が、コロンビア政府が正当な支払いを拒否。サンホセ号ではないと却下。その後、数年前にコロンビア政府が発見を報道。トレジャーハンターは自分たちが見つけたんだから財宝を引き揚げて売却すべきと主張。コロンビアはそれを無視。コロンビアが発見をしている、トレジャーハンターは別の船を発見しているから主張は受け入れられないと…

まあ、そこにスペインが登場。われわれが所有する船だから、トレジャーハンターやコロンビア政府は触ることはできない!と主張。

さらに、南米の先住民コミュニティーが声明(今回のニュース)。積まれた財宝は、不当にも当時のスペイン政府が我々から略奪した財宝である。そのため、遺物の所有権は我々にある!と主張。

コロンビアは、遺跡自体は自国にあるので自分たちの管轄にある。

で、結局誰のものになるの?と数年前から揉めている。この手のニュース、「自分たちの所有権を主張している=財宝を手に入れるのは我々だ」と書いてあるのは本質を理解していない証拠。特に、日本のメディアではそのよな書きぶりが多い。しっかりとソースを読むのと文化遺産の保護の現状を理解しないといけない。

所有権を主張=財宝を引き揚げて儲けたい   ではない。 

もう一度書く…
自分のものだ=財宝を売却   ではない。 

真実は…
  所有権を主張=現地にて保存・守るべき存在   である。

スペインは、特に力強く主張している。我々のモノを勝手に触るな。文化遺産なんだから、調査や保存に関しては我々の意見を尊重すべきである、と。

まあ、例えるならスペインにとって過去の自国の船は動く姫路城 

例えば、海外の観光客が姫路城を勝手にバラバラにして部材ごとに売りさばいたらあなたはどう思いますか?


こちら、同じニュースですが、水中の写真などがあるのでご覧ください。
Indigenous groups claim stake in sunken Spanish ship, cargo off Colombia (msn.com)


コチラ…あまりにも突っ込みどころの多い、事実誤認、勝手な妄想、とんでも説など何でもあり、不思議です。7万回以上視聴されているのですが、そのうち何人がここで紹介していることが事実だと思っているのか。

エンタメとしては、面白いです。

その8


スペリオル湖の発見。ここ最近、このような発見が増えてますね。


その9


こちらも、似たような記事。そう、沈船を見つけるのは考古学者ではない。

最近は、簡単に魚探で水の中が見えるので沈船や水中遺跡の発見が相次いでいる。日本でもおそらく発見されているのだろうが、それを遺跡・貴重なモノであるという理解が薄いのだろう。

これは、非常に残念なこと。その国で発見された遺跡数(先進国では数万件単位)は、その国の水中遺跡に対する国民の理解度に比例している。だって、遺跡を見つけるのは、ごく普通の人だから。

水中考古学者が遺跡を見つけるなんてこと、ほぼありません。漁師やダイバーからの情報をもとに、遺跡の正体を突き止め歴史的意義を与える仕事をしています。

その10

イギリス周辺海域、引き揚げ遺物がたくさん見つかっています。多くは、未報告だとか。いくつか報告から発見へと結びつく。しっかりしているようだが、まだまだ法整備の行き届かない現状が知れる。

What lurks beneath: Treasures, wrecks and curios (msn.com)


その11

メキシコの水中考古学。水中文化遺産の保護活動では、とっても優秀な国。初期hの頃は海外から積極的に技術を取り入れ、その後は国内の研究者の育成を中心に。ユネスコなど世界の流れの中心にあります。資金はあまりありませんが、国の組織に専門家20人、その他に地方などにも数名専門家が活躍しています。

今回、バハカリフォルニアで探査プロジェクトが行われるとのこと。様々な時代に遺跡が見つかることを期待。

Mexico launches search for sunken ships off Baja California coast (mexiconewsdaily.com)


その12


エストニアの国立海事博物館がリニューアルオープン。
写真100枚ほど公開されているので、雰囲気が伝わってきます。館内のリニューアルのため5か月ほどかかったようですね。意外と早い。大阪万博もエストニアの方々にお願いしたほうが良いのでは?

そうそう、日本にも国立海事博物館が欲しいですよね。

Gallery: Seaplane Harbor Museum's new permanent exhibition opens this week | News | ERR


その13

以前からニュースで話題となっている沈没船。3600年ほど前に海で沈没した商船だと考えられてます。トルコで発見。

ちなみに、水中遺跡という観点では旧石器時代の水没遺跡などたくさんの遺跡があります。また、もっと古い時代の船も出土しています。まあ、クフ王の船とか。縄文時代の丸木舟などもあります。日本だと、神津島周辺の海域に黒曜石がありますが、あれは遺跡じゃないのか…。ひと月ほど前、イタリアで石器時代の積み荷が水中で発見されましたね。黒曜石を積んだ船が転覆したのではないか、とのこと。それは商船ではないのかもしれないですね。

まあ、なので海で沈没した商船の遺跡で積み荷と船体が残っている(可能性が高い)遺跡としては、世界最古の例となりますね。


World's oldest shipwreck left undisturbed at the bottom of sea | World | News | Express.co.uk


その14


まだ続きます…
スペイン。ローマ時代の沈船です。浅いところで見つかってます。アンフォラがゴロゴロ。その中身の研究が面白い。オリーブ、ワイン、木の実など、そして、アンチョビなど魚。おそらく魚醤(ガルム)のようなものかと思います。その分析。船の積み荷から当時の食生活の様子がうかがえます。アンフォラ表面には文字(インク)も残っていました。

水中遺跡は有機物などの保存状況が良いことがよくわかります。


その15


アドリア海の水中遺跡
旧ユーゴスラビア時代には、活発でなかった水中考古学。各国は独立後、水中遺跡調査を本格化させています。今では、特にクロアチアなどはヨーロッパ・世界を代表する水中文化遺産保護センターを立ち上げています。

デジタル記録方法の発展も後押し。主に一般向けに水中遺跡を紹介する取り組みんなど。水中遺跡のVRを見れるスマホアプリもあります。私もインストールしました。初期は、ちょっとこれは…扱いにくいな…と正直思いましたが、この前見たら使いやすくなっていました。


スマホのアプリです。水中遺跡VRを楽しめます


その16

再度メキシコ

セノーテ  ユカタン半島などにたくさんありますね。今は水没した鍾乳洞ですが、氷河期時代は水位が低かったため人が住めるような洞窟でした。そう、1万年以上前、アメリカ大陸に来た人々は生活の場として使用し、今は水中遺跡となっています。アメリカ最古級の遺跡がここにあるのはちょっと不思議。当時の状況そのままで残っています。

そんなセノーテの発掘方法や記録方法を学べるフィールドスクールが開催されるようです。これは参加したい!

水中鍾乳洞で発掘体験ができてしまう。面白そう…水中鍾乳洞特有の技法がいろいろありますね。ダイビングの技術、記録方法などなど。安全面も重要です。


こちらは、フォトグラメトリーで作られたセノーテ・水中鍾乳洞にある遺跡の3Dモデル動画・・・こんなところで調査してみたいと思うけど、ちょっぴり怖いですね。

https://fb.watch/s1DNj8U0Rn/


書いてたら疲れた… だいたい毎日5~10件ほど世界の水中考古学ニュースが入ってきますので、それらを読んでいます。その中で、ツイッターで紹介するのは1~2件程度ですね。


おまけ

オープンアクセスで面白そうな論文

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10572414.2024.2320774?src=exp-oa

沈船が残りやすい場所を特定する…

海底面の堆積層の質(種類)、流れなど。よく使われる海路であるか…。様々な条件から沈没船が最もよく残っていそうな場所をみちびきだすモデルを創っているとか…

遺跡を探しても無駄な場所とは、トロール漁船・底引き網漁の漁場が目立ちます。遺跡破壊の原因のひとつです。世界では、水中遺跡のある場所を特定して、その周囲では網を入れることを禁止しています。




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