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ようこそカレー研究家の実験室へ 一皿に込める食材とスパイスのストーリー

※本記事はインタビューを元に制作しておりますが、内容にはプロモーションが含まれています。

なんだこれは。一口食べるごとに新しい。味覚の冒険と言ってもいいかもしれない。浜松市・成子町のビルの1階に店を構える「Spice&Musica猫の手」。看板メニューのカレープレートには店主であり料理研究家のナカムラタツキさんの食材へのこだわりが詰め込まれている。カレー作りへの思いを伺った。



「頭を使って食べて欲しい」 スリランカスタイルのカレープレート


浜松駅から徒歩で約10分。成子町の交差点にそびえる鳩のマークのビル。入り口を入って右手にある一角でひっそりと営業しているのが「Spice&Musica猫の手」だ。

「カレーって辛いだけじゃなくて、いろいろな味が混ざっている。苦味だったり、酸味だったり。さらにその中でも、風味が分かれている。例えば酸味なら、スパイスやミソのようなもの(タマリンド)で味付けすることもあれば、フルーツを使うこともあるんです」


店主で料理研究家のナカムラタツキさん


こだわりのオリジナルカレーをいただいた。「山羊ラーラー」と「ミーンモーリー(アジとレモンのココナッツミルク煮)」のあいがけカレーだ。


ワンプレートにご飯と様々なおかずを盛り合わせるのは、スリランカスタイル。色彩も楽しめる


「『山羊ラーラー』は北インドの砂漠地域をイメージしています。山羊を食べる習慣のある地域で、中東の雰囲気もあります。ラーラーには王子様が囚われたお姫様を助け出すため、牢屋番の魔女をおびき寄せるのにその香り使ったなんておとぎ話もある。厄除けの意味で、お祝い事のあるときに出されたりします」

「山羊ラーラー」 ごろりと入った山羊肉とチキンを煮込んでいる


「ミーンモーリーは南インドの沿岸部、南国リゾートの雰囲気のある地域の料理。暑い地域なので、レモンを使ってさわやかな酸味を付けています」

「ミーンモーリー」 レモンとスパイスの風味にアジが絡み合い、さっぱりとした味わいに


「その他、日本食でもよく使われる蕨やスリランカの豆の煎餅『パパド』を入れて触感にバリエーションを加えています」

皿の真ん中にぽん、と載っている「パパド」は崩して混ぜながら食べると香ばしい風味が加わる
グレープフルーツの「アチャール(オイル漬け)」と蕨
紫キャベツの「ザワークラウト」。ドイツの漬け物だが乳酸発酵させる製法はアチャールとも共通する



「ぜひ『これなんだろう?』って頭を使いながら食べて欲しいです。新しい味覚との出会いを楽しんでください」


風味の違う料理が一皿に盛られていても、全く違和感がない。むしろ、食べ進めるうちにそれぞれの味や食感が混ざり合い、一口ごとに違う味わいが楽しめる。ナカムラさんの絶妙なバランス感覚は、どこで養われたものなのだろうか。

「もともと香りものがめっちゃ好きなんです。薬味とか、スパイスとか」



食材の香りに魅せられて 辿り着いた『カレー文化人類学』の道


「あまり料理は得意じゃなかった。他の事よりは少しは好きかもなぁってくらい」

 
気が付いたら「料理研究家」になっていたという。
 

「学生時代にあまりお金がなくて、まかないが出る飲食のバイトばかりしていた。ある時、食費を浮かすために、山でタケノコとか自然薯を採ってきたの。食べてみたら、野生の食材の香りの豊かさに驚いた。土の香りっていうのかな。とにかく、それで感動して。料理というより、食材にハマっていったんだよね」

 
和食居酒屋、四川料理屋でのアルバイトを経験する中で、アジア料理、とくにスパイスを使った料理の面白さに気付いたという。

「そこから夢中になっていろいろ調べて。カレーひとつにしても、作り方ってすごくたくさんあるのね。カレーと言えばインドが本場だけど、地域によって風土も歴史も文化も手に入る食材も全然違う。料理と人の暮らしって、切っても切り離せないものだから、自然とその土地ならではの個性が出てくるんだよね。同じスパイスでも別の使い方をしていたりね。そういう文化人類学的な側面から料理を見ることもできるようになった。それもまた興味深くて。『カレー文化人類学』とでも言えるかもしれない。まだまだ研究中です」


研究熱心なナカムラさん。「Spice&Musica猫の手」では、地域の食材を使って現地の味や調理法を再現している。
 
「地産地消は意識しています。いかにここにあるものを使っていくか。その試行錯誤の過程で新しいカレーが生まれたりします」

かつて様々な食材やスパイスが海路・陸路を経て世界に広まっていった。その土地の食材や文化と融合し、独自の食文化が形成された。それぞれの歴史を辿ってきた料理が一枚のプレートの上で出会う。長い長い食の旅の最前線。それが「猫の手」のカレープレートなのかもしれない。



意外なマリアージュ? カレーと日本酒


「カレーと日本酒って合うんですよ」

ナカムラさんセレクトの日本酒たち

意外な組み合わせではないだろうか。
 
「日本酒を合わせるときには、微妙な風味の違いに合わせるのがコツ。レモンの酸味には少しさわやかな日本酒が合うんじゃないかとか。言ってもらえれば、合うものを選んでお出ししますよ」
 
料理の風味を追求してきたナカムラさんだからこそ成せる業だ。



ここはみんなの「実験室」 カレーとお店を通して広がる世界


ナカムラさんの夢は、実際にインドに行くことだという。
 

「今の料理は本で読んだ知識から想像して再現しているに過ぎないんです。現地に行けばまたその土地の風土や食材、調理法を体感できます。そうしたら、またさらにカレー作りが広がると思う」

 
探求心あふれるナカムラさんの思いは、お店のスタイルにも表れている。

 
「ここが新しい文化の実験室みたいになればいいかなと思っています。お客さんにはこの場所を使って、新しいことをどんどん試してもらいたいですね」
 

平日夜や土日を中心に様々なジャンルのイベントが開催されている。


音楽ライブや写真同好会など、イベントのジャンルは多岐に渡る


夜にはあたたかな白熱灯の灯りが迎えてくれる


人が生み出す文化もカレーもまだまだ新しい発見に満ちているのかもしれない。退屈な日常にスパイスが欲しいと感じたら、ぜひ「Spice&Musica猫の手」まで足を運んでみて欲しい。



Profile

ナカムラタツキ
「Spice&Musica猫の手」店主。料理研究家。
日本料理店、四川料理店等で経験を積み、2019年~2021年、静岡市にて「めしと酒 猫の手」。2023年2月より浜松市にて、カレーをメインメニューとした「Spice&Musica猫の手」を開店。


●Spice&Musica猫の手
浜松市中区成子町56 ハトビル1F
駐車場なし(近くのコインパーキングをご利用ください)
月火定休 昼:11:30〜14:00 / 夜:17:00〜22:00(food L.O)


鳩のマークのビルに店主手作りの「のぼり」が目印


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