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私がイギリスの大学院にオンライン留学した理由 ③(学校決め編)

こんにちは。岸 志帆莉です。

私は2014年から2016年までの2年間、オンラインでイギリスの大学院に通い、教育学修士号(MA in Education)を取得しました。

コロナウイルス禍でオンライン学習がかつてないほど注目を集めている今、私の当時の経験が誰かの参考になればと、当時の経験を振り返ってみることにしました。本シリーズでは、私がそもそも大学院に進むことを決めた動機から、イギリスのオンライン大学院という選択肢に落ち着いた理由、さらに最終的にコースを決定するまでの道のりを全3回のシリーズに分けてお届けしています。

最終回となる今回は「学校決め編」です。数あるオンライン大学院の中で、私がUCL Institute of Education のMA Educationというプログラムを選んだ理由についてお話ししたいと思います。

今後、学びのオンライン化はさらに加速していくことが予想されます。皆様の学びの選択肢を広げるうえで、私の経験が何らかのヒントになれば幸いです。

前回までの記事はこちら:


私が修了したプログラムについて

UCL Institute of Education - MA in Education
(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン教育大学院 教育学修士課程)
http://www.ucl.ac.uk/ioe/courses/graduate-taught/education-ma

まずは私が修了したプログラムについて簡単にご紹介しておきます。
UCL Institute of Educationは、イギリスの名門大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)傘下の教職専門大学院です。イギリスの大学評価機関であるQS世界大学ランキングでは、教育学部門において、2014年から毎年連続で世界第1位にランクされています(2020年現在)。同大学では教育学に関するプログラムが多数開講されており、そのうちほとんどが完全オンラインによる受講に対応しています。私が修了したのは、そのうち最も包括的かつスタンダードな教育学修士号(MA in Education)というプログラムです。

UCL Institute of EducationのMAに決めた理由

大学探しを進める中で、自分の中で譲れない条件がいくつか絞られてきました。

当時既に社会人で家庭もあった私にとって、夜間や週末に通学する必要がないオンライン完結型のプログラムであることはまず最低限の条件でした。その上で、出願プロセスのシンプルさや、国内外で通用する学位など諸条件を加味していった結果、「イギリスのオンライン大学院(教育学専攻)」というところまで選択肢は絞られていきました。

こうして自分が求めるものはある程度クリアになりましたが、「イギリスのオンライン大学院(教育学専攻)」という条件だけではまだ自分に合ったプログラムを絞り切ることができませんでした。そこでプログラムの内容や大学そのものへの評価など、いくつかの条件をより厳密に精査し、最終的に3つの選択肢に絞っていきました。

MA Education (UCL Institute of Education)
MA Education(バース大学)
MA International Education(レスター大学)

とりあえず全てのプログラムに出願して受かったところへ行く、となれば話は早かったのですが、当時の私は強運が味方でもしていたのか、結果として全ての大学院から入学のオファーを頂きました。そこで悩みに悩み抜き、最終的に選択したのがUCL Institute of EducationのMA Educationです。

この選択をする上で、私が最終的に重視していたポイントは3つあります。

1.どうせやるなら、その分野において世界最高峰の環境で学びたい
2.自分が本当に学びたいことを学びたい
3.オンライン学生へのサポートがしっかり整っている環境で学びたい


これら全ての条件を満たすプログラムを絞っていった結果、最後に残ったのがUCL Institute of EducationのMA Educationでした。
以下それぞれご説明していきます。

1.教職大学院として世界最高峰の評価を受ける大学である
UCL Institute of Educationは、イギリスの名門大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の一部として設置されている教職専門大学院です。教育学分野の専門大学院として、イギリス国内に留まらず世界中から高い評価を受けてきました。

国際的な大学評価機関であるQS世界大学ランキングでは、教育部門において、2014年から毎年世界第1位にランクインしています(2020年時点)。ちなみにQSをはじめとする大学ランキング等については、そもそも評価が英語圏の大学に偏りすぎているなど批判もあります。その批判は踏まえた上で、私個人としてはQSの評価内容も参照し、大学選びの上で考慮に入れました。

ちなみにQSの査定基準の内訳は、学術界およびビジネス界からの評価が50%、教員一人あたりの生徒数(=教育のきめ細やかさに対する評価)が20%、論文引用数(=研究に対する評価)が20%、留学生および外国人教員の割合(=国際化に対する評価)が10%というかたちになっています。これら全ての項目において、UCL Institute of Educationは教育部門における最高評価を受けています。

2.プログラムの選択肢が豊富、かつ内容のカスタマイズ性が高かった
3つの大学の中で、完全オンラインで受講できる修士号のプログラム数を比較したところ、UCL Institute of Education(以下IoE)はその選択肢の数が抜きん出ていました。

IoEでは、「教育学分野のオンライン完結型プログラム(大学院レベル)」という条件で検索すると、現在10件のプログラムがヒットします(2020年5月現在)。内容も、初等教育から成人教育、グローバル教育、学校経営、さらに今話題のEdTechなど、多彩な分野から自分の目的に合ったプログラムを選択することができます。

一方バース大学では、同様の検索条件にかけると4つのプログラムがヒットします。最も包括的なMA Education以外では、国際教育学、一般教授法(Learning and Teaching)、学校経営および教育リーダーシップ(Educational Leadership and Management)という各分野でプログラムが開講されています。

もう一つのレスター大学では、同様の検索条件で3つのプログラムがヒットします。国際教育学、教育リーダーシップ、英語教授法(TESOL)などの分野から選択できるようになっています。(ちなみに余談ですが、レスター大学は秋篠宮家の眞子さまが留学をされたことで日本でも一時話題になりました。)

このように比較してみると、IoEが提供する選択肢の豊富さが際立ちます。IoEがここまでオンライン教育に強いのには実は理由があります。次章でお伝えしますが、同大学が通信教育分野で培ってきた長年の歴史とノウハウです。

(※ちなみに、教育学という限られた分野の中でオンライン完結型のプログラムが3~4個見つかるということだけでも類まれなことです。他の2大学がIoEと比較して劣っているということでは決してないことをお伝えしておきます。)

3.長年の通信教育のノウハウにより、オンライン学習のサポート体制が整っている
IoEはロンドン大学の一カレッジです。ロンドン大学は、オックスフォードやケンブリッジのように、複数のカレッジが集まって構成される総合大学群です。ロンドン大学の他カレッジには、『ライフシフト』の著者リンダ・グラットン教授が在籍するLondon Business Schoolや、経済学分野の世界的名門校であるLondon School of Economics(LSE)、東洋・アフリカ研究で有名なSOAS、さらにヒッグス粒子で有名なピーター・ヒッグス氏をはじめ多くのノーベル賞受賞者を輩出するKing's Collegeなど、個性豊かな名門カレッジが名を連ねています。

これらカレッジの集合体であるロンドン大学は、通信教育において長い歴史を持っています。過去150年以上にわたり、イギリス国内のみならず、世界中の学習者達に質の高い通信教育プログラムを提供し続けてきました。例えば、南アフリカの故ネルソン・マンデラ元大統領などもロンドン大学の通信教育に学んでいます。彼はアパルトヘイト下の南アフリカで、27年間にもわたる投獄生活を送る中、ロンドン大学の通信課程に在籍し法律のコースを受講していました。

(ちなみに通信教育から少し話題は逸れますが、日本からも幕末に伊藤博文をはじめとする長州の5人の志士、いわゆる長州ファイブがUCLへ現地留学を果たしています。また明治時代には夏目漱石が明治政府からの国費留学でUCLに学んでいます。私からすれば、これらの方々は遠い先輩方ということになります。以上、ちょっとした自慢話でした。)

長い歴史の中で培われた通信教育のノウハウを、ロンドン大学は現在余すところなくオンライン教育に投入しています。この長年のノウハウを基盤に、テクノロジーの利便性を活用して世界中の学習者にオンラインコースを提供しています。

私がIoEの学生であった当時から、普段の学習内容はオンラインのコースウェア「Moodle」上に全て集約されていました。仲間や教員とリアルタイム(またはスレッド形式)でディスカッションすることはもちろん、時差の関係等でリアルタイムの参加が難しい場合は、後々録画を好きな時間に講義を視聴してキャッチアップすることが可能でした。書籍や学術論文を参照したい時は、オンライン図書館でいかなる資料も閲覧し放題です。また、テクニカルな問題が起こった時には、ITサポートチームが遠隔で迅速にサポートしてくれます。さらに、ハード面以上に心強かったのが事務局や教授陣といったソフトの部分です。彼らもオンライン受講生たちの対応に慣れているため、柔軟かつ余裕を持った対応をして下さる方が多い印象でした。このような綿密かつ親身なサポート体制は、オンライン学習初心者の私にとって非常に心強く感じられました。

以上の3点が決め手となり、私はIoEのMA Educationを選択しました。

まとめ

2014年から足掛け2年間、オンラインでIoEのMA Educationを受講し、2016年に晴れて修了しました。仕事や家庭生活と両立させつつ、三足のわらじを履く生活は生半可なものではありませんでしたが、想像を超えて実りの多い日々でもありました。

2年間を振り返ってみて、私は自分の大学院生活に心から満足しています。日本で働き家庭も持つ私にとって、これ以上の選択肢はなかったと思っています。今回私が選択したMA Educationに限らず、UCLのオンライン修士課程全般はこれから学び直しをしたい全ての社会人の方々に自信をもっておすすめできるプログラムだとお伝えし、本シリーズを締めくくりたいと思います。

「修士号に興味があるけれど、様々な障壁があって自分には無理だ」と思っている方がいらっしゃれば、そんな方にこそオンラインという選択肢を是非一度検討して頂きたいと思います。

自分では無理だと思ってきたことが、意外と無理ではないかもしれません。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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シリーズの全記事はこちら:


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