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都合よく進むから、観てられる

人生の前提について腹落ちしてから観るといい

世の中、思い通りにはならないものである。仕事もお金も、家族も時間もなんもかんも思い通りになっている人なんていないのでは。そこに健康なんて要素が加わったら、最後人間死ぬからなぁーというわけで、誰もが思い通りの幸福マイライフなんてことはない。断言しとこ。

映画の尺内で物語を進行させるには、どこか都合のよさが必要だ。それがフィクションたるものの強みだったりする。

真田幸村なんて、ずいぶん長い間蟄居してたけど、そのへんドラマだと5分ぐらいでサクッと進む。だが、本当の人生はここに耐えられるかにかかっている。

銀行で紛失した100万円と10億円の不良債権

そんなことある?支店内で100万円なくなるって。で10億円の回収不可能な融資。この二つの事件が絡み合って物語が進行する。進み具合は、へぇ~ほぉ~なるほど~といった具合に進む。

テンポいいよな、映画だから。でも、テンポ良すぎない?アドベンチャーゲームだったら、一本道仕様。ファミコンクラスだ。分岐要素がほとんどない。そりゃこの選択肢になるよね、とか、それならまだしも、こんなことする?から、そりゃぁ都合よくねぇか、その落とし物ってな具合で。

人生のほとんどが間抜けの偶然

アレを落とした、コレを拾った、といった話が物語を展開させるドライバーになるのだけど、その要素が多い。異物に敏感なのが銀行なんだと思うけど、だからゴミがゴミじゃないというか(もうネタバレ怖いから言えない)。だけど、それを落とす、とか、無造作に捨てるとか、その辺は意識が散漫というか。。。

整理すると
・見慣れないモノ=「異物」は、落ちていると気づく
・重要なモノ=「自分の立場を危うくするもの」は、落とす/捨てる

この「凹凸」または「+-」のセット芸が物語を高速で進行させる。仕方ないんだけど、パンパカ進むなぁと言った印象。

西木(阿部サダヲ)がスーパーマンすぎる

かなりの注意力と洞察力を備えた男、西木。小説版やWOWOW版のドラマとは少し設定が違うようだけども。いずれにしても、物語の主役だけあって、トップランナーばりに物語の先頭を走り抜ける。駆け抜ける。

解決のカードを持ちすぎている気もする。気持ちいいくらいに物語をスカッと解決していくところは、主役らしいちゃぁらしい。

で、面白いの?

はい、間違いなく面白い映画だと思います。1時間単位でドラマばりに分けて鑑賞しようと思っていたけれど、一気観しちゃったから。

さんざん思い通りにテンポよく進みすぎと言ってきたけれども、それはそれで面白いってことなんだよね。悪い人がハッキリしているし、妙な裏切りもないから安心して観られる。ただね、疑問がいくつかあるんだよぉ

疑問(ネタバレに入ります)

なんで、石本(橋爪功)は不良債権焦げ付かせて、逃げたのに不動産買うってことで支店長・西木と一緒にいるの?この時点で、回収できんものなの?しかも、15億円の不動産を買うっていうだから。少なくとも手持ちの5億は回収できんのかね?

わかる人、コメント欄にコメントください。ホンマにわからんのです。

キャストについて

玉森裕太は本当にいい俳優だと思う。等身大の設定にはピッタリかと。あぁ、アイドルの人、なんて見え方がしなかった。それだけに、没入させてくれる感じ。うまいと思う。こういう若手~中堅手前社員いると思う。

上戸彩は上戸彩である。これは名言かもしれない。なんでだろうね。家が貧しくてとか、学費がって言う風に見えないのだ。イメージに手あかがついてしまっているのだろうか。露出が多いからかもしれない。

阿部サダヲは、べらんめぇ調のオッサン役がぴったりだと思う。今回の役どころ、ちょっと才能が突出しすぎている感はあるが。それは、本人も才能の塊だから、共通軸あるのかな

柳葉敏郎は、悪い役もいい感じだなぁ。若いころはチンピラの役どころもあったと思うけど、いったん室井さん経由したから。払拭力はすごいね。

佐々木蔵之介は舞台調の「おおぉおらぁああ」じゃなくて、淡々とした影のある役どころが上手くハマっていた。『ゴジラ-1.0』とは全く違う。関西弁イントネーションもなく、自然。

この映画のキャストの肝は

木南晴夏
渡辺いっけい
忍成修吾

この脇がつええ!物語を締めてくれている。こういう俳優がいると、フワフワ正義で進みそうな物語に人間臭みが出て、いいよぉ。
特に木南晴夏のイジワルっぷりが、強いなぁ。いるいる、こういう人。イケずというか、いるわぁ。こういう人を避けて生きるんだよねぇ。普通。でも、上戸彩が全力でぶつかるから。それやめておきゃいいのにと、突っ込んだりして。

渡辺いっけいの、「僕そういったよね」的上司は、脚本通りだとしてもこの共感はどこから生まれるのか。この上司いるなぁと。でも最後の方はとてもいい感じの役どころ。

忍成修吾の危うさに、この人が物語を違う方向に進めてくれるのか!何か伏線?実はこの人が?的な期待感が常にあって。それは脚本云々じゃなくて、忍成修吾の俳優としてのオーラ―のようなものなんだろうねぇ。

スカッと面白く最後まで一気観の一作『シャイロックの子供たち』、ぜひご鑑賞くださいませ。



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