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【ほっこり読める小説】塩のサジ

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オリジナルの小説を書こう!と長年の夢を形にしました。「塩かげんのサジかげん」と題し、省略して「塩のサジ」。10分程度で読めるショートショートをベースに書き連ねていきます。まずは、… もっと読む
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記事一覧

【短編】わかりあう、ふたり

「ねぇ、もう終電なくなるんじゃない?」  早田早紀は澤井雄二の断固として帰らなさげな素振…

塩かげん
13日前
45

【連載】蜘蛛の手をつかむ-第1話

 立木陵介が菜緒と交わした最後の言葉は、「蜘蛛の巣、何とかしておいてね、陵ちゃん。お願い…

塩かげん
2週間前
41

【短編小説】最初から、好きだったふたり

「吉野くんのことは嫌いじゃないけど、恋人っていうか付き合うっていうのは、なんというか」 …

塩かげん
1か月前
40

【短編小説】埋める、悪党

 どうにもこうにもおっかねぇ。小学校の通学路にまた、ひび割れができていやがる。  独り言…

塩かげん
1か月前
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昼メシな総務課【第一話・サムギョプサル】

 会社の総務部総務課はいわゆる掃きだめのような部署だ。一線から退いたというと聞こえがいい…

塩かげん
2か月前
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昼メシな総務課【第二話・餃子】

 前回アップした総務課動画はそれからも伸び続け、一週間も経った頃には二十三万回再生で落ち…

塩かげん
2か月前
17

【短編】隕石に、眠る

 不治の病って、ふじの病なのか、ふちの病なのか。どっちかなんて、まぁ今考えても仕方ない。俺は治る見込みのない、不治の病なのだ。未知のウィルスに侵されているようだ。  半年前の隕石騒ぎ、月極のガレージに落ちたあの隕石。買ったばかりの車が大丈夫か見に行ったせいだと思う。隕石に付着していた未知のウィルスが俺の体の中に入り込んだようだ。正確な原因はわからない。いまはこの現象の方が重要だ。  国内外の研究者たちは、俺の体の中に偉そうにふんぞり返っている《《未知のウィルス》》が細胞の

【短編】ノート

 先に入ってて、と言われて居酒屋に一人で入るのはなんだか嫌な気分だ。もう三十三にもなるん…

塩かげん
2か月前
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【短編小説】となりのスニーカー

 俺のモノじゃない靴が玄関に一足。吉村はじっと靴を見た。俺のじゃない。なぜウチの玄関にあ…

塩かげん
3か月前
17

【短編小説】ただ、恐ろしい

 池田優作の平日は職場と家の往復だ。自転車で通勤できるほどの距離だ。片道自転車で十五分、…

塩かげん
3か月前
14

【短編小説】夢見る家族

 六月八日(木)、午前十時  田辺健一はスマホの着信音で目覚めた。会社からだった。そのま…

塩かげん
3か月前
21

短編小説おまとめ版ベスト3

塩かげんってのは、私の屋号でして。本業はコピーライター&プランナー&編集者&WEBディレク…

塩かげん
3か月前
15

【短編小説‐後編】おふくろの味を、もう一度

【前編はこちら】 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓  俺の生命線は基本的に給食だ。中学で給…

塩かげん
3か月前
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【短編小説‐前編】おふくろの味を、もう一度

 雨がやんだ、すっごく天気がいい。あれ、雨って天気の一部なんじゃないの?雨じゃない時に【天気がいい】って言い方って、なんだか雨が仲間外れみたいだ。そしたら、曇りも仲間外れみたいなもんか。  天気って、晴れだけのことを言うのかな。そんなことを考えながら、裕也に今日もプリントを持って行った。あいつが学校に来なくなって、二か月。あいつの雨は、もうすぐやむかもしれない。でも、雨も曇りも、あまり見なくなったアイツの晴れも、すべてひっくるめて裕也なんだと思う。 「こんばんは。プリント