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商品コンセプト/3.塗りの話②

ご無沙汰しております。國吉真矢です。
だいぶ間が空いてしまいましたが私は元気です。
嘘です。観光が復活するのに合わせて注文が集中しかなり忙しかったんです。
加えてここ2週間は下の子が夜中3時から30分おきに目を覚ますという強制スヌーズ機能にやられております。
眠いと頭働きませんね。。。ちかれた。。。

それはさておき前回、塗料として漆を検討した結果、
「速乾でカブレない漆で、採算の合う高価なものを作る」
という結論になってしまいました。

かなり危険な香りがします。笑
起業したての若手(ベテランが多い業界なんで・・・)が高価な漆のものを作って売れますかね?
買って下さる方は探せばきっといらっしゃるかとは思いますが、期待値を超えられるかが非常に高い壁になりそうです。
期待値を超えられなかった場合、継続性は非常に厳しいものになるでしょう。
ですのでこういうのは高い技術を持つ熟練の職人さんのものですかね。
私も高い技術がないわけではないですが、これから作ろうとしているのは新しい商品なんで技術の蓄積という意味では少し足りないかなと。

ほかの選択肢はないのでしょうか。

実は本漆(=漆の木の樹液由来のもの)以外にも塗り物に使われる塗料はいくつか存在します。
なので今回はそれらを順番に検討していきます。

検討すべきは以下の3つの切り口です。
・乾燥速度
・カブレ
・サステナビリティ

漆の弱点である乾燥速度とカブレ、これらをカバーしつつ、私の商品コンセプトの一つ、サステナブルであることを満たしうるものを探します。

なお価格に関しては漆>>>>それ以外なんでほぼ気にしなくていいです。漆に比べりゃ誤差だよ誤差。

①カシュー塗料

おつまみでおなじみカシューナッツ。
その殻から採れるオイルといくつかの物質を混合し、化学反応で硬化させる塗料です。

乾燥速度はそれなりで15~20時間ほど。
カブレは稀に発生するようです。
価格としては代替塗料の中では割とお高めです。

サステナブルの観点については後述。

②ウレタン塗料

石油合成素材の一種で硬い強度を持ちながら樹脂のようにしなやかな特性を持ちます。

乾燥速度も速く~12時間程度です。
カブレは全く発生しません。
価格も非常に安価です。
扱いやすく、人体有害性もほとんどないため、世界中のほとんどの塗装の場面で使われています。
こちらもサステナブルの観点については後述。

①、②をこうしてみると漆に対してもアドバンテージがあるな、というのがお分かりいただけますでしょうか。

質感としても(作り手の側にきちんとした技術さえあれば)はっきり言って大差はないです。もちろんじっくり見れば細かい違いはありますが。

ですが、(私の商品コンセプトとして)重要なのはこの後です。

サステナブルの観点


サステナブルという観点で考えるとどうしてもぶつかる壁があります。
それは「薄め液」の問題です。

「薄め液」とはまた聞きなれないですかね?
塗料はそのままだとハチミツぐらいこってりとした液体のため薄めて使用します。
例えば漆はテレピン油という松の根から採れる揮発性の高い液体で薄めて使います。
その薄め液によって扱いやすく滑らかにすることで薄く塗布することができます。

問題はここまで挙げたカシュー塗料、ウレタン塗料はその薄め液にシンナーを使うのです。
(なのでこれらを総称して油性塗料といいます。)

シンナーは有機溶剤です。
それには2つのデメリットがあります。
1つは健康面、もう1つは環境面です。

健康面に関して


シンナーはそもそも毒性の非常に高いトルエンやキシレンを含んでおり、作業時それに曝される危険性があります。
近年はトルエン・キシレンを含まないものが主流になっていますが、そういったものでも長年曝され続けると健康被害を起こすことがあります。
そして作業性にも大きく影響を与えています。
上記のような健康被害を起こしかねないため、職場環境という意味では悪影響は間違いないでしょう。作業時は対応ガスマスク必須です。
ガスマスクで長時間作業は辛いんですよねぇ。蒸れるし痒いし。
他にも引火性があるため、管理には気を使います。
使用のためには資格が必要で、換気のための設備投資も必要とコスト面でもデメリット有です。

環境面に関して


有機溶剤は揮発性が非常に高く、そのほとんどは大気中に飛散してしまいます。
そのため大気汚染を引き起こします。
光化学スモッグやPM2.5の原因の1つですね。

そういったデメリットに加え、もうひとつ嫌なことがあるんですよ。

とても個人的ですが、私が体質的に合わないんです。
匂いを嗅いだだけで気分が悪くなり、うっかり吸い込むと頭痛や吐き気がするんです。
もうこればっかりはしょうがないんです。

なので、シンナーを使わない漆しかないか、と思っていたのですが、テレピンも実際はほとんど大差ないというですね。。。
毒性に至っては一部石油製剤より強いとか。。。うーん。
もちろん私の体質に合いません!くさい!

解決策

ですが、解決策がありました。
それは水性塗料です。
油性塗料の有機溶剤と違って薄め液が水なんですよ、水道水でオッケーなんです。
そのためシンナーを使うデメリットが丸々無くなります。これだ!

しかしそこにも難点があります。
それは水性塗料は耐久性に劣る点です。
なぜなら水性塗料はアクリルといった低強度なものしかなかったのです。

さらに私が作ろうとしている塗り物は食器です。
食器に使える塗料は「食品衛生法」で厳しく制限されています。
食品衛生法対応の水性塗料がなかなか販売されなかったんです。

しかし!近年やっと水性かつ高強度かつ食品衛生法適合の塗料が一般に流通しだしました!やったー!!

それは水性のウレタン塗料です。

水性の高強度ウレタンは自動車用など出始めていたんですが、食品衛生法適合がなかなかでなかったんです。

それがここ数年でようやく広く流通が始まりました
いまやホームセンターで気軽に入手可能です。(店にもよりますが)

これによって私の文字通り頭痛の種だった有機溶剤から解放されることになります。

今のところ水性ウレタンを使用している同業の方はどうやら多くはないようです。(調べたところ未確認)
しかしじきに恐らく低価格帯の商品を作っているほとんどの業者さんがこちらにシフトすることになると思います。
多少コスト面で油性ウレタンより高くつきますが、扱いやすいという点は何にも代えがたいと思います。

以上のことから
・速乾
・カブレ
・サステナブル
という点をすべて満たす水性ウレタン塗料を採用することにします!


そもそも合成塗料はどうなんだ、という意見もあるでしょう。
ですが、私は「完璧ではなくともよりマシな選択肢」を作りたいんです。
サステナブルはいかに折り合いをつけてより良くしていくか、というのも大事だと思います。「factfulness」でいうところの「悪いがよくはなっている」というやつですね。


さらなる便益


そして、水性ウレタン塗料を採用することは新たなメリットをユーザーにもたらします。

それは「自分で修理が可能」という点です。

塗り物は表面に硬質な層を作って本体を保護するため、表面の層を塗り直せば長く使えます。

これまでの漆、カシュー、油性ウレタンは扱いが難しく、よほど好きな人以外は修理をするにはメーカーに対応してもらう他ありませんでした。
それは多くのユーザーに時間的・金銭的コストを要求してしまいます。
あるいはメーカーに問い合わせても修理は未対応のものもあたったりします。

しかし、水性ウレタン塗料は誰にでも扱え、乾燥も早く、しかもどこででも手に入ります。

これは確実に大きく製品寿命を延ばします。
購入者に大きな便益といっていいのではないでしょうか。

さらにそのことは次に購入するまでの時間を稼げることから空気中の炭素の削減に非常に寄与するでしょう。(製品寿命>素材の成長するまでの期間が成立すればよい。)
サステナブル!

というわけで「水性ウレタン塗料」を私の商品には採用することにします。

そして先々「速乾で無害の漆」を採用することも検討したいです。
(ほとんどの業者さんが水性ウレタンを採用し私の強みではなくなるであろうタイミングですかね?とはいえテレピンがなぁ。。。)

以上でーす。

実は塗料の話はもっと突っ込んだことになりそうな感じもしてるんですよね。。。おかげで筆が重い重い。
塗料に関しての次回がないことを祈ってます。
今後の試作の進行次第というか、半ば運みたいなところもあるので何とも言えないのですが。

それ以外はサクサク投稿したいですね。
息子よ、頼むから寝てくれい。

そんなわけでまた次回。
次回は書き溜め分から出すんで、すぐ清書します。



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