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世界一周と言う言葉に憧れ、旅に出た少年の物語

『カッコいい男になりたい』そんな想いで、 
旅に出た少年はカッコ悪い男との出会いであった

世界一周するなんて大口叩いてこなければ良かったと後悔する少年


ある一人の少年は世界一周の旅にでた。「自分探し」とでも言おうか? 日本での生活に何か違和感を感じ、日本をでた。世界にはどんなものが待ち受けているのだろうか?

少年は不安と期待を背にフィリピンの首都マニラに向かう飛行機に乗っていた。 心躍る少年に待ち受けていたのは、深夜の到着にも関わらず、タクシーの運転手の客引きの渋滞。目を疑いたくなるような光景に、少年は一旦空港の中に引き返してしまった。 

少年は『世界一周』という言葉に憧れていた。『カッコイイ男になりたい』という『カッコワルイ男』の夢があった。

世界一周をやり終えた後の僕は、カッコイイ男になっているのではないだろうか?そんな想いで旅へ出た。

旅に出ることになったのは、世界を巡りたい以上にカッコイイ男になりたい、そんな邪な気持ちからだった。

空港に引き返した少年は後悔した。”オレはなぜ1年間も世界を旅する”と周りに大口を叩いて日本を出てきてしまったのだろう? 
少年は、カッコイイ男になるはずだったが、空港の外にすら躊躇ってしまうダサい男に出会った。

彼に待ち受けていた世界一周の旅は「カッコイイ男になる」旅ではなく、「ダサい男」との出会いだった。

気を取り直して、少年は再び、小さな勇気を振り絞って、空港の外へ。そして、無事、予約しておいた宿の迎えの車に乗り込み、薄暗ーい宿に到着。

そして、シャワーを浴びて、ベットに潜り込む。いわゆる雑魚寝のドミトリー。知らない人が隣で寝ている。そんな経験したことがなかった。何か薄暗い、何かジメジメした不気味な室内。寝れるはずもなく、朝を迎えた。

なぜ、道に人が寝ているのだろう?

朝起きて、マニラの街を歩いてみる。昨日は夜で真っ暗だったので、気づかなかったが、街が汚い。
ゴミが道にこれでもかと落ちていた。道に人が横たわっていた。道がアスファルトではなかった。店の前に鉄の棒があって万引き防止用になっていた。何か変な匂いがする。動物の糞があちらこちらに。
何かジロジロと見られる。歩いているだけで何か不気味笑いをされる。なぜだろう? 

日本で当たり前にあった街と、マニラで当たり前にある街とは違っていた。

なぜかセブンイレブンに、ウインナーがあって、パンがあってセルフで取れるようになっていた。なぜだろう? 
なぜかドリンクバーがあった。なぜだろう? 
ガソリンスタンドの前に人だかりができていて、赤い振り棒を持った人がいて、ハイエースが止まって、人がいなくなっていく。
なぜだろう?

頭が混乱した。なぜ? なぜ? なぜ? 頭では処理しきれない『『なぜ?』』が連続した。

1時間ほど歩いただろうか? 
この1時間は1日いや1週間、いや1年分ぐらいの情報量に匹敵しただろうか? 
処理しきれない情報量にぐっだりして宿に帰った。

お前、死ぬ気か?

僕が予約していたのは、日本人宿。現地の日本人が宿を経営していて、日本語が通じるので、お客さんもほとんどが日本人。
そこのオーナーと喋る少年。空港で会った瞬間から、あまり好きではない雰囲気の人だった。
僕は三人兄弟の末っ子なので、人の顔色や人の性格の良し悪しを他の人より機敏に見極める能力あると自負している。 
そのオーナーに色々と根おり羽織り聞かれた。

『なぜマニラに来たんだだい?』
と、オーナー。

『世界一周に来ました』
と少年。どうだ凄いだろう?
二十歳そこそこにして、これから1年間世界一周の旅に出るんだぜ。ワイルドだろ〜?
と言わんばかりに意気揚々とすかして答えた。

『と言うことは、英語は喋れるのかい?』
オーナー。

『喋れません』

確かに。自分は英語は喋れない。
英語なんて喋れなくても、笑顔とボディーランゲージがあれば旅できると、予習してきていた。

沢木耕太郎の深夜特急も読んでいたし、高橋歩の『行かずに死ねるか』も何度も読み返してきていた。
旅人が読むであろう本のほとんどは読んでいた。
しかし、英語の本は一切読むことなく、旅をスタートさせた。
そして、英語を勉強せずに来るのがカッコイイ男とさえ思っていた。

『英語も喋れずに、海外一周なんて、お前死ぬ気なんか?お前みたいな日本人がいるから困るんだよ。』
確実に、少しイラッとした表情のオーナー。

『はい。すみません』
当たり前の事を伝えられて意気消沈した少年は、自信喪失。
カッコイイ男になる為に来たはずがまたもやダサい男と出会ってしまう。

なぜか、ボクシングをすることに。

僕は、これからどうしようかと思い部屋でボーと意気消沈していると、同じ部屋に、ある一人の男性が入ってきた。
話をしてみると、40歳間近で、ボクシングを練習にフィリピンのジムに来ているそう。
何か一人で寂しいそうにしている僕を見兼ねてか、一緒にジムへ行くか?と誘ってくれた。そして、ジムの住所を渡された。

なぜだろう?一緒の宿に泊まっているし、目的地が一緒だったら、一緒にジムへ行ったら良くないか?住所を渡すのはな~ぜ? な~ぜ。な~ぜ。
ここはフィリピンだから? 彼はボクサーだから? なぜだろう。

そして、翌日目を覚ますと、ボクサーの姿はなく、ジムに既に行った模様。
そうか、朝早いから、後からゆっくりジムに来たらいいよと言うボクサーの親切だったんだと理解した。

そして、教えてもらったバス乗り場へ向かう。
ボクサーに教えてもらったバス停を探しても、バス停は探せど、探せど、一向に見つからない。
そして、ガソリンスタンドの前にいた赤い棒を振る人に尋ねる。
『where Bus?』ここだ、と言うジェスチャー。
そうか、昨日見た、人がハイエースに乗り込んでいく場所がバス停だったのか。
少年は理解した。何の標識もない場所がバス停だった。

行き先がハイエースに書いてあるはずもなく、棒振りのマンに行き先を書いた紙を見せて、『これだ』と言う合図のもと、いざハイエースに乗り込む少年。改造された車内にはギュウギュウおばちゃんとの陣取り合戦。
そうこうしている間にジムに到着。

ジムに到着して、日本人ボクサーがいた。そうして、僕はパンチの打ち方をレクチャーしてもらう。
ストレートを打つ時は、肩が伸び切らないといけないんだよ。と。
世界を旅するはずが、なぜがボクサーにボクシングの指導を。なぜかボクシングをやることに。

次章へ続く。

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