あてのない手紙

この あてのない手紙 というタイトルでは、日記のように 日々のさまざまな出来事を書いてゆこうと思います。
興味のないかたは スルーして頂けましたら倖いです。

ひとりごとのようなもの
作品にするまでもないもの
忘れたくないもの

日々の出来事をとおして わたしという個体が どんなありようであるか
淡々と破片のようなものを 書き置いてゆこうと思います。


昨日 お客さまから甘栗を頂いた。
接客業であり 対面販売という性質上
お客さまとの交流は 欠かせない。
売り子さんの応対の仕様ひとつで 売り上げが変わってくるのよ とは 
昔 とあるお客さまから頂いたお言葉である。今もなお 忘れない。
この先も ずっと忘れないだろう。

甘栗をくださった お年を召された奥さまは、ご主人さまが急逝されたことを わたしに伝えにきてくださった。

いつも朝の7時ごろ お買い物にきてくださっていたという ご主人さまと 奥さまが わたしの中で結びつかなくて どんな感じの方だったか 訊ねてみたが 悲しみの深さゆえか お言葉をいただけなかった。

ほぼ毎朝 来てくださっていただろうに。それなのに、お客さまの数が多すぎて どのお客さまなのかがわからない。お顔を想いうかべて お店を可愛がっていただいたことへのお礼をお伝えしたかった。

奥さまは もうあんまり来れなくなる
そう言って 甘栗をわたしにくださった。

お客さまが多い時間だったので ゆっくりお話ができなかった。お近くへいらしたときに またお顔を見せてくださいねと言うのが 精一杯だった。

ご主人さまのことを 知っているはずのわたしと お話しがしたくて来てくださったのかも知れない。
本当に申し訳なく 充分に心を汲んでさしあげれなかった自分が 情けなかった。

頂いた甘栗を ぱくぱくと下品に
食する気持ちにもなれず
ようやく 今日になって袋をあけて
ひと粒の栗を 口に含んでみた。

甘栗は 甘くてやわらかだった。
いろんなことをおもう。
いろんなことを感じる。
胸がしめつけられるように痛む。

泣くよ。
甘栗が なみだの味になった。
栗の味だけでない 奥さまのあのときのこころの味がした。 

あのときの あの表情のときに
抱きしめてさしあげればよかった。

また来てくださることを願う。
わたしに 機会を与えてくださることを願う。















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