番外編〜初対面のnoteの人と旅した話〜
「3月から日本一周します!」
という記事を書いた。
その中で、「noteで会ってもいいよって方がいれば会いに行く」という文言を記したが、まぁ誰も連絡してこないだろうな、と思っていた。それが当たり前だし。
しかし、どうやら世界は広いらしく、何日後かに一件のメールが届いた。
「突然の連絡、失礼します。
もし都合があえば、私の街に来てみませんか?」
イタズラかと思った。
ヤバい人かなって思った。
でも、会ってみることにした。
なぜならこの方とは既にnoteでお互いフォローしていて、「この人の文章好きだなぁ」と思っていたからである。
それに、久慈は知らない場所だったので、行って自分の目で確かめたいと思った。
だが、それだけ、である。
知ってる情報は、久慈在住の2個上の女性?ってことくらい。
それで会うんだから、自分も大概ヤバいかもしれない。
1日目
2024年 3月8日
これの続き。
(以下Aさんとする)
Aさんが紹介してくれた、Aさんと繋がりがあるらしいシェアハウスに、2泊することにした。(この時点でちょっとよく分からない)
16時に宿に到着。Aさんは夕飯から合流する。
入口が分からず、ウロウロしてると、オーナーの奥さんが迎えてくれた。
奥さん
「あ、◯◯君?Aちゃんから聞いてる、よろしくね。」
自分
「あ、初めまして。Aさんに紹介してもらいました。2日間よろしくお願いします」
紅茶をご馳走になって待つこと数分、オーナーさんが来て同様に挨拶。
オーナーさん夫婦は完全に赤の他人の自分を、優しく受け入れてくれた。
自分の状況としては、知らない人に知らない人の宿を紹介されたことになる。
でも、Aさんはnote読む感じ信頼できそうだなって思ってたし、オーナーさん夫婦は会った瞬間に、この人達なら安心できる雰囲気を持っていた。
夕飯までの時間、好きにして良いよと言われたが、折角なのでオーナーさんと散歩に行くことに。
連れてってもらったのは、702コーヒーというカフェ。
他にお客さんは居らず、カウンターに座る。若い女性店員さん2人と、計4人での話が始まった。
やはり自分とオーナーさんの関係に驚かれた。そりゃ2人でカフェ来て「会ったの20分前で、紹介した人は知らない人」なんだから。久慈の町のことから、最近見た映画のことまで色々話した。
お店が18時までなので、解散。
最後に、「日本一周頑張って!また来て下さいね!」と言ってくれた。こんな東京から来た部外者に対して、そんなこと言ってくれるのか。
思えば、この時にはすでに久慈の魅力に取り込まれていたのかもしれない。
18時半にAさんが来るということだったので、宿のリビングで待機。超人見知りの自分は緊張で気が気ではなかった。
玄関でドアが開いた音がする。
ドキドキ。
「お待たせしました!」
と、若い女性が明るい笑顔で入って来た。
部屋に入って来た瞬間、あぁ、緊張する必要なかったな、と思った。初対面だが急に場が温かい雰囲気になった。
席に着いて、早速夕飯を頂く。
ん〜美味しい。
味が美味しいのはもちろん、ここ1週間1人で食べて来たから、誰かと食事をする大切さを噛み締めながら食べた。
人見知り野郎が、突然知らない人3人と食卓を囲んでるこの状況。しかし、この3人の温かい雰囲気が、初対面だと感じさせない。
大事な初対面の場面だが、残念ながら日本酒を結構飲んでしまい、あまり覚えていない。
ただ、ほんとに美味しくて楽しかったのは覚えている。
明日はオーナーさん夫婦は予定があるようで、Aさんとドライブ。9時半に宿に迎えて来てくれる、って大事なことを覚えてた自分偉い。
あとちゃんと解散際に青森のお土産渡せたのも偉い。
ご馳走様でした。おやすみなさい。
2日目
8時半にアラームで目が覚める。
そうだ、今日はドライブだ。
昨日の記憶は少し曖昧だが、Aさんがとても話しやすい人だったのははっきり覚えている。
オーナーさんは用事で9時に出発。
自分は落ち着かないので、1人でラランドの声溜ラジオを聴いて緊張を緩和させる。
9時半。かっこいい車だなと見てたら、乗ってるのはAさんだった。
「おはようございます!昨日は眠れました?」
昨日と変わらず明るく声をかけてくれる。
「酔ってたのですぐ寝ました笑」
助手席に乗り込む。車内はなんだか良い香りがする。
昨夜渡した青森のお土産というのはアップルパイで、朝食で食べると言っていたので、気になってどうだったか聞くと、
「美味しかったです!オーブンで焼いたら、部屋中にリンゴの香りが広がって…」
この言葉遣い。やはりあのnoteはこの人が書いてる。
疑ってたとかじゃないけど、noteの文章の感じそのまんまの表現と声で、なんか安心する。
最初に向うのは、中野白滝。ここから20分かかんないくらい。
安心するとはいえ、緊張しない訳ではない。出身地も仕事も聞いてなかったから、まずはそんな話。仲良くなる順序が普通じゃないんだよな。
自己紹介的な話をしてたら、目的地に到着。
着くと、滝までは長い下り階段で、先が見えない。しかも雪が10cmは積もってる。1人なら全然行くけどAさんはどうかな…と思い振り返ると、「行ってみましょう!」と言ってくれた。よし、行こう。
夏なら5分くらいの階段を、15分くらいかけてひたすら降りる。めっちゃデカい足跡があったので、その跡を踏んでく。クマかな?
下りながら、そういえば最近1人旅したって言ってたなーと思い聞くと、函館に行ったらしい。
自分も前日函館から来たって話すと、なんと函館で泊まった宿が一緒だった。そんなことある??親近感。
そんなこんなで終盤。
写真じゃ伝わらないけど、アンガールズの2人でもすれ違えない細い橋。慎重に渡ると
多少の氷瀑ときれいな滝。
しばし滝の音に耳を澄ませる。
自分はこういうのじっくり見るタイプだけど、相手は無言気まずいとか、寒いから戻りたがってないかな?とか、この時は少し気にしていた。
来た道を戻って、無事駐車場へ。
すぐ近くに寄りたい駅があるというので、そこに行くことに。
それは、有家駅。
夏の晴れた日の写真見せてもらったら、めっちゃ綺麗だった。今は冬の曇った日だもんな。
「ここが通学路の人いるんですよね」
「ね、すごいですよね」
時刻表を見ながら呟く。
東京の中央線で、戦争みたいな通学してた自分とは大違いだ。
彼女を見てると、悪天候だけど、そんなの関係なくこの空間を愛しているんだな、って伝わる。
次は、自分が元々行きたいと言ってた琥珀博物館へ。
ここから車で25分。25分かぁ〜。長いな、そろそろ言わないとな〜と思い勇気を振り絞って
「タメ口でもいいですか?」
と聞いてみた。
すると、
「もちろん!」
と言ってくれた。一応年下だし、初対面だし敬語を使っていた。でも敬語だと緊張しちゃう。自分の良くないところ。
ひとまずタメ口で話せるようになり、一安心。少し緊張が溶け、家族の話とか仕事の話とか出来た。
博物館に到着。彼女は2回目というから申し訳ない。
様々な色、形の琥珀が置いてある。珍しいな、綺麗だな、と眺める。
別館は琥珀を使った美術館みたいな感じで、2人して「器用だね」と言った。
満足して車に戻る。Aさんが2回目なのが少し気ががりだったが、「2回目でも十分楽しい!」と言ってくれた。
もう13時を過ぎたので、ランチに。
モカという喫茶店を提案すると、「めっちゃ良いチョイス!」と。というのは、何日か前に彼女がLINEで久慈観光リストを送ってくれたのだが、モカはその1番目に書いてあった店なのだ。
しかも、「ここのナポリタン以外食べられない」とのコメント付き。行くしかねえ。
モカに到着。
彼女は先週もここに来たらしい。この町への愛を感じる。
迷わずナポリタンを注文。Aさんがシェアを提案してくれたので、たまごサンドも。
待ってる間、今まで撮ってきた写真を見せたり、エッセイ好きなんだよねーって
話をした。
話しながら「あれ、自分めっちゃ喋るな」と思った。
自分は人見知りでいつも壁を作ってしまうんだけど、Aさんは、昔から知り合いだったよね?前もモカで一緒に食べたよね?ってくらい話しやすい。
やっぱnoteでどんな人柄か知ってたからなのかな?
10分も経たずに美味そうなのがやってきた。
美味しい。麺がもちもちで、味も濃過ぎなくて、すごく好み。体感5口くらいで食べ終わった。
個人的には、たまごサンドのが、他のたまごサンド食べられなくなるくらい美味しかった。
ご馳走様でした。
車に戻る途中、勇気を出して、今夜バーに行ってみたい、とお誘いしてみた。モカの雰囲気を知って、久慈の他のお店も気になったのだ。また、人生初のバーにこの人と行ったら素敵な思い出になりそうだなと思ったのだ。
良いよ、と言ってくれた。嬉しい。
次は、昨日オーナーさん夫婦と今日どこ行くかって相談した時、三船製菓っていう、かりんとうが有名なお菓子屋さんがあるというので、そこへ。
到着。店内に入るとニコニコしたおばちゃんと、猫の声マネをする少年がいた。
2人とも無事ゲット。猫の少年はもう少し年齢が上がると絶対お客さんの前に出てこなくなると思うので、今のうちに是非。
Aさんが出してくれた。ありがとう。
次は大移動して、北山崎というリアス式海岸を見に行くことに。したかったが、道中で雪から吹雪に変わった。高速から本来は海が見えるらしいのだが、真っ白で何も見えない。
道中、なんかの拍子にラランドの声溜ラジオの話になった。お互いリスナーで、彼女は#70とか、自分は#100とかまで聴いてた。
このラジオネームいつも居るよねとか、楽しんごさんがゲストの回良かったねとか。まさか声溜ラジオの話で盛り上がれるとは。ありがとうラランド!
北山崎到着。当然誰もいないと思ってたら、レストハウスみたいなとこでなんかの撮影してた。
雪道に新しい足跡を付けながら、展望台まで行ってみる。
見えねー。
でも積雪した針葉樹林の綺麗さにはうっとりさせられた。
近くの道の駅、田野畑に寄り道。
すると、北山崎で見かけた撮影隊がいた。調べたら盛岡ローカルTVの撮影みたい。カメラの後ろ通ったから一瞬出演してる気がする。TVデビュー。
またしても近くに無人駅があるので、行ってみることに。
道中、震災の話になった。
ぜひ聞きたかったけど、デリケートな話題だから、話してくれて申し訳ないと同時にありがたかった。
東京の友達と話しても、小学生の時大きい地震あったね、くらいだから。こっちだとなんならもう復興終わってるんじゃないの?みたいな感覚。現地に行って、地元の人と話したり、「ここまで津波来ました」って看板みると、生々しく、胸が苦しくなる。
話してくれてありがとう。
もう日没も近いので、久慈に戻ろう。
最後に道の駅久慈に立ち寄る。
これ、地味にすごい。写真では伝わらないと思うけど、建物3階分の山車が迫力ある。めちゃくちゃでかい。
これを見るだけでも久慈来る価値ある。祭りの時はこれが何台も来るらしい。
Aさんが家に車を置いてくるので、再び店で会おうってことで一旦解散。
さて、ここから1軒目に居酒屋行って、2軒目にバーというゴールデンコース。
Aさんが家に帰ってる間、先に店に入って待つことに。店に入ると「先程のお電話の?」
ん?どうやらAさんが先に電話して予約してくれてたみたい。なんて仕事ができる人なんだ。
Aさん到着。料理は時間かかりそうだったので勝手に肉と魚とサラダを注文したのだが、それを「スマートだね!」と言われた。そんなこと言われたの初めてだよ。
飲みながら、「生まれ変わったら何になりたい?」って話してて、Aさんは今の職場の建物になりたいと答えた。
「変わってるね笑」と言うと、友達にもよく言われるらしい。それに対して
「心を開いてるってことだよ」って言ってくれた。人を喜ばせる天才か。
ご飯の美味しさ、提供の時間、店員さんの接客どれをとっても素晴らしかった。
さて、本命のバーへ。
先に結論を言うと、最高だった。
他にお客さんは誰も居らず、ひっそりジャズが流れている、落ち着いた空間。
初めてでメニュー見ても何も分からなかったが、オススメが5品くらい書いてあったのでそれを注文。助かる。
ビールに合う濃いおつまみとかじゃなくて、上品な味。
スクリュードライバーとかXYZっていうお酒を頼んだ。ジュースみたいで飲みやすい。後日調べたら度数12%くらいあるらしい。あぶねぇ。
カクテル言葉ってものがあるんだねって話になって、調べるとスクリュードライバーは
「あなたに心を奪われました。」
いつか使う時が来るかな?
昨日の夜初めて会った人と、朝からドライブして23時にはバーいるって、すごいなぁ。
バーにいる頃には、緊張していた時のことなんて遠い昔のように感じていた。
Aさんが眠そうになってきたし、明日は朝日見に行こうって約束だから、早めに解散することに。タクシーに乗って解散。
運転疲れたよね、丸1日お出掛けしてくれてありがとう。
3日目
朝5時、アラームが鳴る。よく起きた。
Aさんも起きたみたい。
5:15にまたお迎えに来てもらった。
昨日の吹雪と代わって、高速から海が見える。車が進むと同時に、空がオレンジ色に包まれてゆく。
防潮堤に到着。まだ誰にも踏まれてない雪道を歩き、1番乗りで朝日を見る。なんと贅沢な。
堤防に登り、ガチガチに震えながら考える。明るくなるに連れて、お別れの時間が近づいてることを意識させられる。昨日の濃い、濃すぎた1日を思い出す。楽しかったなぁ。太陽が上に来る頃には、もう次の目的地に向かっているのかな。また1人か。
すると
冷えた身体がポカポカと温められる。
こんな朝日を見ると、さっきまでの悩みがちっぽけに感じる。朝日が暗くなった心に光を届けてくれる。
太陽が海に反射して眩しい。そんな海に近付いて見たくなり、浜辺に降りる。
ちなみに、Aさんは4月から職場が異動になる。もうここで朝日を迎えることは日常ではなくなる。
だから、彼女の愛したこの景色を、彼女含めて撮りたくなった。
「この辺で自由に動いてて」
と言って、写真を何枚か撮った。
後ろ姿だからどんな表情か見えないが、後ろ姿から、彼女がここで過ごした楽しかった日、辛かった日などが目に浮かび上がってくるようだった。
久慈での最後の思い出作りに貢献出来たなら嬉しいな。
一旦宿に戻り、荷物を全部まとめる。
オーナー奥さんが宿に居たので、お別れの挨拶。
「昨日楽しかった?彼女めっっっちゃ良い人でしょ!大丈夫?惚れてない?笑」
と、自分の自慢の娘みたいに言われる。彼女がこの宿の人にとても愛されてるのが伝わる。
「楽しかったです!」
お世話になりました、と伝えて宿を出る。
最後に温かいチャイを渡してくれて、「いってらっしゃい」と送って下さった。ありがとうございました。またご飯食べに来ます。
Aさんに車で駅に送ってもらうと、ホームまでお見送りすると言って付いてきてくれた。
電車の発車まであと3分。自分だけ電車に乗り込む。あれ?これドラマとか映画でよくあるやつじゃん。泣いちゃうやつじゃん。
最後に紙袋を貰った。何だ?
列車のアナウンスが入る。
ベルが鳴る。
プシューとドアが閉まる。
ホームで手を振る彼女に手を振りかえす。聞こえるはずもないのに「ありがとう」と言ってしまう。
列車は進み、彼女の姿は見えなくなった。
しばらく窓の前で茫然とする。
車窓にはこの2日間行った思い出の景色が、映写機のように移り変わってゆく。
最後にもらった紙袋は何だろう。
中身を見てみると、岩手が舞台のエッセイ、普代の渦巻かりんとう、お茶、そして久慈と描かれたキーホルダー。
モカで話した、「エッセイとか好きなんだよねー」といった雑談。一緒に買いに行ったかりんとう。
色んな思い出がギュッと詰まった最高のプレゼントだった。
涙が溢れそうになった。これは悲しい涙なのか、嬉しい涙なのか分からないけど、とっても心が動かされた。
久慈の旅は、一生忘れない思い出になるだろう。
ただ観光地に行って写真を撮る。そんな旅行はもう卒業だ。これからはこの3日間みたいな、心を満たす、そんな旅にしよう。
美しい海岸線を見ながら、そんなことを考えた。まだ旅は始まったばかり。
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