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職場にいる「タイプの違うあの人」を、あなたはうっすらバカにしている

仕事をしていると「この人とはちょっと合わないな……」って人に出会いますよね。

「え? なんでそんな言い方するの?」「なんでそんなことで怒るの?」と不思議に思った経験が、誰しもあるはずです。

プライベートなら、それっきり関わらなければいい話ですが、仕事だとそうもいきません。我慢して一緒に働いたり、取引を続けたりしないといけない。それによって、ストレスを溜めている人も多いと思います。

僕も昔はそうだったのですが「あること」に気づいたことで、人間関係の悩みを格段に減らすことができました。

今回のnoteでは、そんな話をしようと思います。

転職後、いきなり上司に嫌われた?

コンサルタントになりたての頃のこと。

上司に「三宅さん、ホテルや不動産業界を分析して、資料にまとめてくれ」と指示を出されました。

僕は「簡単だな」と思って、その作業を1時間くらいでサッと終わらせて、すぐに持って行きました。3枚か4枚くらい紙にまとめたものを「はい」って渡して。

すると上司は「何これ?」という様子で、ポカンとしていました。おそらく彼は、3日から1週間くらいかかる想定で、僕に仕事を頼んだのだと思います。

上司はちょっと困った様子で「いや、もっと細かく分解してみて」と僕に言いました。でも僕は「え? これ以上細かく分解する意味あるかな?」と疑問に思ったのです。

ただ上司が「もう一度やってください」と、ちょっと強張った顔と口調で言うので、僕はしぶしぶ作業に取り掛かることにしました。

2時間後、僕が持っていったのは、さっきとほとんどクオリティの変わらない資料。それを見た上司はすごく不満そうで、何も言わずにずーっと考え込んでしまったんです。

当然ながら、場の空気がギスギスし始めました。

僕からすると、その上司はやたらと細かいことを気にしていて「本質的な人ではないんだな……」と思ったんです。「そんなに深く調べてどうするの? 誰が求めてるの?」と。反対に、上司からすると僕の分析は雑で、もっと丁寧かつ深いものが欲しかったようです。

でも、僕はいまいち納得できず、様子を見にきたマネージャー(上司の上司)に「なんか、この指示、あんまり意味ないと思うんですよね。細かいことばっかり気にしても仕方ないと思うんです」と言ってしまったのです。

上司は、そんな僕の雰囲気を感じ取ったのだと思います。僕と上司の関係はギクシャクしてしまいました。

その後も、お互いに溝ができたまま、最後まで打ち解けることができませんでした……。

なぜ「この人、苦手だな」と思ってしまうのか?

僕からすると、上司は何が気に食わないのか、不思議でなりませんでした。

「なんでそんな細かいことを気にしてるの?」「どうでもいいでしょそんなの」という感じ。自分を正当化するためか、相手のことを「バカなのかな……」と思おうとすらしていました。

でもいま振り返ってみると、単に「タイプが違った」だけなのです。

どちらかのリテラシーが低いとか、頭が悪いとか、イジワルをしているとか、そういう理由ではありません。人間としての特性に違いがあるだけなのです。

では、そこにはどんな「違い」があるのでしょうか?

「共感タイプ」と「深掘りタイプ」

人間は大きく2つのタイプに分けられます。

それを「共感タイプ」「深掘りタイプ」と呼んでいます。

それぞれ、以下のような特徴がある人たちです。

共感タイプ

・コミュニケーションが得意
・要領がいい、全体像をつかめる、作業が早い
・思考が浅い、おおざっぱ、飽きっぽい
・他人の意見に影響を受けやすい
・楽観的

深掘りタイプ

・深い思考ができる。ひとつの分野をとことん調べられる
・数字に強い、論理的思考ができる
・他人の意見に影響を受けづらい。ブレない
・コミュニケーションが苦手
・要領が悪い、作業が遅い
・悲観的

多くの人間は、どちらかの特性に偏りがあります。

冒頭の話でいうと、当時の僕は共感タイプ、上司は深掘りタイプでした。それぞれの特性の違いから、話がまったく噛み合わなかったのです。

お互いのことをバカにしている

この話を講演でする機会があるときには「自分がどちらのタイプだと思いますか?」って聞くようにしています。すると、だいたい半々くらいになります。

ただし、商社に行くと共感タイプがやや多かったり、メーカーに行くと深掘りタイプがやや多くなったりはします。

手を挙げてもらったあとに「お互いのことをバカにしてますよね?」と聞くと、だいたいウケます(笑)。図星なのでしょう。

実際、共感タイプだった僕は、深掘りタイプのことを「細かいことばかり気にする無愛想なヤツ」と思っていました。

会議や打ち合わせの場にいても、ただただ喋らないんですよね。

なんだか不機嫌そうな、あるいは暗い顔で黙っている。共感タイプからすると、それがすごい不気味なんです。「なんでここで黙るの?」と思ってしまう。ニコッとするだけでもいいのですが、それすらしてくれないんです。

プレゼンをすると「ここの数字、おかしくないですか?」みたいに、細かいことを突っ込まれます。すると共感タイプは「えっ、そんな細かいこと、どうでもいいじゃん」と思ってしまう。「とにかくいい感じになるんで、大丈夫です!」って言いたくなるんです。

反対に、深掘りタイプは共感タイプのことを「調子がいいだけで浅いヤツ」だと思っているようです。

共感タイプは、とにかくベラベラしゃべりまくるんです。だからその場の空気はよくなります。でも、あとで振り返ると、何も言ってない可能性があるんです(笑)。

共感タイプって、いわば「広く浅い」感じの人たちです。だから深掘りタイプからは「ただの中身がない人」に見えている可能性があります。

それぞれのタイプを理解すれば、人間関係もうまくいく

お互いをバカにし合うことで、自分は正当化できるかもしれません。でも、それだけでは何も生まれないですよね。

そもそも、この「タイプ分け」をするメリットは何か?

僕は「客観的な視点から、人間の特性を理解できる」ことだと考えています。

どうしても「あいつはこうに違いない!」と主観的に他人をジャッジしてしまうことがありますよね。

でも、この「タイプの違い」を知っておけば、もう少し冷静に人のことを見られるはず。怒る前に「悪気はないのかも」「サボってるわけではないのかも」と想像をめぐらせることができます。

僕自身、この「タイプ分け」をするようになってから、他人に対してイライラしたり、衝突したりすることが激減しました。

それどころか、別のタイプの長所に気づけて「その能力を身につけたい」とすら思えるようになってきました。

そうやって相互尊敬ができるようになれば、人間関係は良くなるはずです。それによってできる仕事の範囲も、格段に広がります。

ここからは、2つのタイプの特性について、より詳しく書いていこうと思います。

自分はどっちのタイプかな? 嫌いなあの人は、もしかしてこっちのタイプなのかな?   そう考えながら読んでもらえると、理解しやすいかもしれないです。

共感タイプはどんな人なのか?

①コミュニケーションが得意

共感タイプにとって、最大の関心ごとは「人」です。

「あの人はどう思っているか?」ということに、とにかく注目がいくんです。

人をよく観察しているので「相手の言って欲しいこと」を読んで、先回りできます。「いま話しに行ったほうがよさそう」とか「いまは声を掛けないでおこう」といった判断も得意。

コミュニケーションに対して苦手意識がないので、社外の人にも積極的に会いにいきます。

そして一度会った相手とは、ちゃんと仲良くなって帰ってくる。どんどん人脈を広げて「この課題を解決するためには、あの人に会おう」みたいに、すぐ動くことができるんです。

他人の意図をくみとったり、言動からその人のパーソナリティを分析したりするのも得意です。

「たぶん、〇〇さんはこういう意図で、この話をしているんだな」みたいなことが、簡単に読めたりします。

意思決定をするときも、ファクトではなく、そういう「人の反応」を見て決める。いわば「合気道」のような感じです。

②要領がいい

学生時代、テスト前になると突然現れて「ノートをコピーさせてくれ」って言ってくるヤツいませんでしたか?

それが共感タイプです。

普段はぜんぜん勉強しないのに、友達のノートと過去問をゲットして、それだけで試験を乗り切っちゃう人。覚えてきたことをテストで吐き出して、その日の午後には忘れている人。

つまり、器用で要領がいいんです。

仕事でも、渡された書類をパッと見て「ここが大事なことなんだろうな」って瞬時に感じ取れる「ここだけ覚えとこう」と判断して、効率よくこなします。

おそらく、物事の全体像をつかむのが得意なんです。細かいところは置いておいて「ようするに何の話か?」「つまり何が言いたいか?」がわかる。物事に深く没入するのではなく、俯瞰的な視点に立つクセがついているのだと思います。

細かいことを聞かれるとぜんぜん答えられないのですが「つまりどういう話?」と、ちょっと俯瞰的な質問をされると「こうだと思います!」とすぐに説明ができちゃいます。

③思考が浅い

ただし、共感タイプには最大の弱点があります。

それは、とにかく「浅い」こと。

たくさんの人と会って仲良くできるし、アウトプットも早い。でも深く話を聞いてみると、何も考えていない可能性があるんです。

細かいことは気にせず「全体が理解できたからいいや」で済ませてしまう。少し踏み込んだことを聞かれたら、途端に「それはそれはちょっとわかりません」となってしまう……。

心当たりのある人は、共感タイプかもしれません。

たとえば社内での報告会でも、共感タイプは「人から聞いたこと」をそのまま話してしまいます。

「〇〇さんに会いにいったら、こう言われました」って、ただそれだけを報告する。上司に「理由はなんで?」と聞かれると「う~ん、なんででしょうね」と二言目にはこうなります。

それで「もう1回聞いてきます!」と言って、また外に行ってしまうんです。

帰ってくると、再び「相手から言われたこと」だけを報告してきます。「他は? こういう理由もあるんじゃない?」と聞くと「え、わかりません。だったら先に言ってくださいよ!」と言って、また聞きに行ってしまう……。

共感タイプは感じがいいので、友達は多いんですよね。仕事で会った人も、はじめのうちは仲良くしてくれます。

でも、だんだんその「浅さ」がバレ始めると、相手にしてもらえなくなることがある。

話していると「なるほど!」とさも理解したかのように相槌を打つのですが、実は何も理解していない。あとになって、それが判明します。

すると相手からは「いいヤツだから友達としてはつき合いたいけど、一緒に仕事するには、ちょっと信頼できないな……」と思われてしまうかもしれません。

プレゼンは苦手

ちなみに、意外にも共感タイプはプレゼンが下手です。

共感タイプは、日常的な会話は得意なんです。だからつい「いけるいける」と思って、自信を持って話はじめます。でも、途中でだんだん不安になって、しどろもどろになってしまう。

プレゼンって、基本的に相手からの反応はないですよね。ずーっと1人で話し続けないといけません。

すると、聞いている側の気持ちが気になってきてしまう。

話している最中に「あの人、つまんないと思ってるかな?」と考えてしまうと、余計なことを言っちゃったりします。説明がぐちゃぐちゃになって、自分が何を言ってるかわからなくなることが、けっこうあるんです。

一方で深掘りタイプは、他人の気持ちは気にせず「自分が言うべきこと」だけをビューッと言える。だから、意外にプレゼンはうまい。書くのは苦手な人が多いのですが。

ミーティングや議論は得意だけど、プレゼンになるとなぜか話せない……。そういう人は共感タイプなのかもしれません。

深掘りタイプはどんな人なのか?

①深い思考ができる

では、反対に深掘りタイプはどんな人なのか?

共感タイプの場合、最大の関心ごとは「人」でした。一方で、深掘りタイプは「もの」に関心があるのだと思います。

「もの」というのは物質に限らず、事象や概念も含みます。「対象物」くらいの意味ですね。理系っぽい人が多いかもしれません(もちろん、文系でも深掘りタイプの人はいるので、あくまで傾向の話です)。

観光地にある、お寺についての説明とかをやたらと読み込んでいる人。これは深掘りタイプです。細かいところまで忘れないように、写真を撮りまくったりもする(笑)。

それに対して共感タイプは、そのときの気持ちとか雰囲気のほうが大事だと思っている。

だから旅行先で、やたら立ち止まって写真を撮っている友達を見ると「何してるの?」って思ってしまう。「お寺の歴史なんか、あとで調べればいいじゃん」と言ってしまう。それで、深掘りタイプの人にムッとされる(笑)。

仕事においてもそうです。深掘りタイプは、コンテンツそのものに強く関心を持てます。

「この業界について調べよう」と決めたら、ものすごく深いところまで調べていく。それも「人に言われたから」ではなく、自発的にどんどん知識を吸収してしまう。

論理的な思考力にも長けていて、数字にも強い人が多い。物事を定量的に把握しているので、地に足のついた話ができます。

プロジェクトを進めるうえでも、共感タイプだけだと「たぶん、こうなんじゃない?」とフワッとした議論で終わることがありますよね。

でも、深掘りタイプの人がいれば、議論は一気に進みます。詳細な数字やファクトを元に「こうすれば実現可能なんじゃないか?」という具体的な話ができるのです。

②人に会うのが苦手

ただし、深掘りタイプは人と話すのが得意ではありません。そもそも、人に会いにいきたがらない。

「会いにいってこい」と言って1人で放り出しても、ジトーッとしているだけで何も生まれない。下手すると、ひとこともしゃべらない可能性があります(笑)。

ミーティングでたびたび沈黙が訪れて、気まずい雰囲気になってしまう。相手が共感タイプだと、その雰囲気に耐えられないんです。

別に不機嫌なわけではなく、ただ話すのが苦手なだけなんです。でも相手からすると「なんか怒らせるようなこと言ったのかな……」と気を遣ってしまう。

「人」への感度が低いので、帰ってきた深掘りタイプに「どんな人だった?」と聞くと「よくわかんないですね」と返ってきます。もしくは、すごく的外れなことを言います。

僕の尊敬するコンサルタントの中に、深掘りタイプの方がいらっしゃいました。その彼ですら「あの人はこうに違いない」って決めつけすぎていたり、そのピントがズレていたりすることがあるんですよね。

ただし、ミーティングの中で大事なことを発見するのは、むしろ深掘りタイプのほうが多いです。

共感タイプは反応がいいので、一見するとちゃんと話を理解しているように見えます。でも実は、調子がいいだけで何もわかっていない(笑)。

一方で深掘りタイプは、会議が終わったあとで「あれ、どういう意味なの?」と聞いてみると、すごく重要なことに気づいていたりします。

「相手の話を受けて、コンテンツのどこを進化させたらいいか」みたいに、ちゃんと考えている。その場では沈黙しているので、あとで確認しないとわからないのですが……。

他人の意見を殴る

共感タイプは、他人の意見を否定するのに気を遣います。

「この人の意見を否定して嫌われたらイヤだな……」とか「まとまりかけてる話を今から否定するのもな……」と考えてしまって、自分の意見を言えないことがある。議論を前に進めることより、その場の空気がヘンにならないことを重視してしまうんです。

でも深掘りタイプはそうじゃない。「違うな」と思ったら、一瞬にして相手の意見をボーンって殴ります。

うちの会議でも、深掘りタイプのメンバーは「そもそもさ」ってよく言います。途中まで進んでいた議論を、ボーンとひっくり返すんです(笑)。まわりの人からすると「ちょっと待ってくれ!」というくらい、ひっくり返す。

でもそうすることで、議論はグンと進化します。

だから「とりあえず深掘りタイプの人に話を振ってみようかな」と思う。面倒くさくはなるのですが、そうすることではじめて意味のある議論になる。

ただし、相手のことをロジカルに論破してしまうので、嫌われることがあります。

人の話に対して「でも」「いや」から入ってしまうんですよね。それによって、企画そのものを潰しちゃったり、相手が話してくれなくなったりすることがあります。

せっかく「いい意見」を言っているのに、相手と気まずくなって帰ってくることがよくあります(笑)。

それはすごくもったいない。「たしかにそういう考えもあると思うんですけど、別の言い方をすると~」みたいな言い方ができるといいですよね。

③アウトプットが遅い

深掘りタイプの1つの弱点は「アウトプットが苦手」なこと。

いろんな業界の本を読んだり、分析をしたり、とにかくインプットするのは得意です。でも、それをぜんぜんアウトプットしてくれないんです。

仕事を振っても、ずーっと1人で深いところまで調べているばかりで、アウトプットが遅い。

途中経過も見せてくれません。「こんな感じで作業を進めています!」って報告してくれるだけでもいいのに、それをしない。水の中に潜りっぱなしで、ぜんぜん顔を出してくれないのです。

だから周りからすると「あれ? 何もしてないのかな? サボってるのかな?」と思ってしまう。でもよくよく話を聞いてみると、いろんなことを調べてはいます。

「調べたことを話してみて」というと、要領を得なくて説明が長い。文章を書いてもらっても、妙に複雑で「ようするに何の話なのか?」がぜんぜん掴めない……。

完璧主義すぎる

おそらく深掘りタイプの人たちは「完璧主義」っぽいところがあるんだと思います。

「Quick & Dirty」をイヤがるんです。どれだけ深く考えていても「こんな浅いものは見せられない」「中途半端なものを出して怒られたくない」と思っている。

でも実際は、むしろ遅いほうが怒られる場合が多いんですけどね。

アウトプットの質が特別高いなら別ですが、そこそこのクオリティだった場合「これだけ時間かけて、こんなもんか!」となってしまう。

上司からすると「だったら、もっと早く50%のクオリティで出してくれ……!」という気持ちになります。

だから深掘りタイプの人は「あえて雑にする」くらいでちょうどいい。細かいところにこだわり過ぎない。あとは期限を決める。「少しグレードを下げたものを、早く出す」くらいの意識でいいと思います。

深掘りタイプを尊敬できるようになった

共感タイプだった僕は、どうしても深掘りタイプにイライラしてしまうことが多くありました。

でも、そんな僕が「深掘りタイプ、カッコいいな」と思えた出来事があったんです。

実は、冒頭のエピソードに続く話です。

僕とその上司のチームには、すごく優秀なマネージャーがいました。彼は、僕と上司のいざこざを見ていました。

そして数日後に「要するに、こういうことでしょ?」って、僕と上司のアウトプットを活用しつつ、ものすごくレベルの高いパッケージを作ってきたんです(僕が作ったものはレベルが低すぎて、ほとんど使われていなかったのですが……)。

それを見て、僕はすごく感動しました。「こんな秀逸なアウトプットがつくれるんだ! これがコンサルタントか!」って。そのマネージャーは、深掘りと共感を併せ持つタイプの人でした。

僕は「広く浅いだけだと、コンサルでは通用しないんだ……」と痛感しました。そこからは、自分に足りない「深掘り力」を持った人を尊敬できるようになったんです。

組織にはどちらのタイプもいたほうがいい

どうしても上司と部下でタイプが違ったりすると、最初はお互いに反発しがちです。

冒頭のエピソードはまさにそう。

共感タイプの上司は、深掘りタイプの部下に対して「仕事は遅いし、何もしてないんじゃん」と思ってしまう。逆の場合は「考えがペラぺラに薄く、ぜんぜんダメだな」と不満に思う。

部下からすると、そうやって自分の特質を評価してもらえず、批判されるだけなのは、すごくしんどい。それが原因で気を病むことも少なくありません。

こういう話をすると「じゃあ、上司と部下を同じタイプにすればいいんじゃない?」と言う人がいます。

たしかにタイプが同じであれば、仲良くはできるかもしれない。でも「そうだよね!」「わかるわかる!」とお互いに同調するだけで、結局は何も生まれないと思います。いいアウトプットも出なければ、部下の成長にもつながりません。

結局、どちらのタイプも一長一短です。

「共感タイプのほうが優れている」とか「深掘りタイプのほうが優れている」とか、そう思った時点で、個人としても組織としても成長できません。

お互いのタイプの特性をちゃんと理解する。そして「自分にはないもの」を相手が持っていることを理解して、相互に補い合う。

すると、いつの間にかお互いのことを尊敬し合えるようになっているはずです。

互いの長所を生かす

それぞれのタイプの長所を生かすことで、生産性は格段に高まります。

たとえば、新規事業を考えるとき。

共感タイプはアウトプットが得意なので、どんどん新しいアイデアを出します。ただし、考えが浅く楽観的なので、詳細はしょぼいんです。実現可能性も低い。「たぶんイケるでしょ!」という感じ。

一方で深掘りタイプの人は、物事を深く考えるために、悲観的なことが多い。「これ、本当に実現できるのかな?」と深く悩んでしまう。

だから共感タイプが出したアイデアを、深掘りタイプが詰めていくのがベストです。細部にツッコミを入れたり、論理が弱いところをブラッシュアップさせたり。ファクトをもとに、単なる「妄想」を現実的なものにしていく。

「100」あるうちの「1」進めば、完成した気になる共感タイプ。反対に「99」まで進んでも、まだ道半ばだと思う深掘りタイプ。

2つのタイプが役割分担することで、斬新で、かつ実現可能なビジネスモデルが設計できます。

社外の人に会いにいくときだってそう。

場の雰囲気を良くするのは共感タイプで、相手の話から大事なものをつかむのは深掘りタイプ。2人で外に行くことで、はじめて意味のあるミーティングができます。

お互いに協力して、それぞれの長所を生かすことで、組織として大きなパワーを発揮できるのです。

2つの要素を持ち合わせるのが理想

ビジネスパーソンとして理想的なのは、ひとりで2つのタイプの要素を、高次元で持ち併せる人です。

2つの能力を身につけることで、キャリアを通して成長し続けられるようになります。逆に言えば、共感、深掘りの片方だけだと、いつか成長が頭打ちになってしまうと思うのです。

たとえば共感タイプの人が、そのまま歳を重ねるとどうなるか?

「社内政治家」的な人になっていく。組織の力学を理解して、うまく出世はできるかもしれません。でも、これといったスキルも深みもないまま、組織の「調整」をするだけの人になってしまう。

部長になったとき「あなたは何ができるんですか?」と聞かれて「部長が得意です!」と答えてしまう。それってちょっと寂しいですよね。

反対に深掘りタイプの人は、共感力を鍛えないと「職人」気質になっていく。

特定の分野の仕事だけは極めているけど、それ以上には広がらない。任せてもらえる仕事の範囲も狭いし、部下の面倒も見られないから出世もしない。それはそれで悲しいです。

それに、実は「共感力」と「深掘り力」にはつながりがあるんです(ここからは、ちょっと複雑な話に感じるかもしれません)。

「深い分析」ができないと「要するに」はわからない。また「要するに」がつかめないと「深い分析」はできない。

俯瞰する力と深く潜る力は、相関していると考えています。

だから共感タイプが深掘りを鍛えることで、さらにレベルの高い共感力が身につく。逆に、深掘りタイプが共感力を鍛えることで、さらに深掘り力の質も上がるんです。

自分と違うタイプの人を参考にして、反対の能力を鍛えてみる。そうすることで、ビジネスパーソンとして無双できるはずです。

それなりに頑張らないといけませんが、不可能な話ではないと思っています。





では、具体的にどうすれば苦手な能力は身につくのか? 詳しい話は書籍で解説しております。

本来、人間には「共感力」と「深掘り力」の両方が備わっており、片方は眠っているだけです。意識的に鍛えれば、どちらの能力も身につくはずなんです。

自著の宣伝で恐縮ですが、ぜひ読んでいただけると嬉しいです!


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