暗黒GM術奥義「何ィ!こちらの8割を削る一撃だと!?」

はじめに


本稿では、TRPGの戦闘等においてプレイヤーに手応え・歯応えを感じて貰う為のマスタリングテクニックについて解説する。

手応えは不要、という場合には本稿の内容は読む必要がない。
(例えばプレイヤー全員が初心者でチュートリアル的なセッションを行う、という場合など)

先立って幾つか前置きをさせて頂く。

GMの立場

「GMは敵ではない」とよく言われる。
より厳密には「GMは敵になってあげることができない」と言う方が的確かもしれない。
無限のリソースとルールの裁定権を持つGMは、対等な立場でプレイヤーの対戦相手になってあげることができない。真剣勝負が成立しない。

対戦相手ではなく、また競技的なゲームの審判とも微妙に違うため、プレイヤー達にアドバイスをしても立場上は問題ない。

かと言って過剰なアドバイスや露骨な手加減をすればプレイヤーの興を削ぐ。
加えて敵キャラクターを演じる際には、悪役に相応しい『真剣な』演技も求められる。
(難儀なものである。そりゃGMはハードルが高いと言われるだろう)


適度なバランス調整の方法

奥義を説明する前に、一般的な『歯応えのある』バランス調整手法について解説しておく。
(シナリオ制作者とGMが同一である場合、特にやりやすい)

それぞれ真逆の手法となるが
①敵を強めにし、データを隠し、GMの現場判断で手加減する
②敵を弱めにし、データを公開し、一切手加減しない
の2パターンがある。

①はエネミー識別手段が存在しないか、存在するがHPは公開されないシステムと相性が良い。
最初は真剣に戦い、プレイヤーが不利になってきたら手加減を始める。
特技やアイテムをわざと使わず抱え落ちするとか、本当はHPが残っているのに倒されたことにする、などである。

古くから熟練のGMには知られた手法だが、これはつまり露骨な手加減である。
特に昨今のように、ネットで公開されているシナリオを回すような場合、十中八九後でバレる。
(書いておいて何だが、筆者もあまり推奨しない手法である)

②はエネミー識別手段などにより敵データを全て公開できるシステムと相性が良い。
敵が元々弱くとも、プレイングで加減はしないのだから、真剣勝負の形は取れる。

ただしこれは、プレイヤー側も戦闘シーンに慣れていることを前提とした手法である。
プレイヤーが戦闘に不慣れな場合、そもそも何が起きていて有利なのか不利なのかも分からず、歯応えを感じる段階にさえ至れない。
(本稿では深掘りしないが、いわゆるアルファプレイヤー問題を生む可能性もある)

前置きが長くなったが、ここから『敵データに依存しない真剣勝負っぽさの演出法』を解説する。

暗黒GM術奥義・GM自身が解説役になる

敵味方が行動する度に、『今何が起こっているのか?』『それによって状況はどう変わったのか?』特に『プレイヤー側にとって有利になったのか?』を逐一解説していく、という手法である。
嘘や誇張は必要ない。逆だ。状況を正確に真剣にプレイヤーへ伝える。
ただしGMによる感想は述べても良いだろう。


以下、具体例を交えて説明していく(文中の固有名詞は架空のものである)

⚪︎普通の会話
「Aさんの攻撃でエネミーは50%のダメージを受けました。まだ立ってます。」

⚪︎暗黒GM術奥義による会話
「Aさんの攻撃でエネミーは50%のダメージを受けました。っはぁ〜ヤバいな。こっち回復ないし次のターンまで回ったら死ぬんだけど。てか今のダメージ乱数下振れしてこれやろ?次のBさんの攻撃が上振れしたら耐えられないんじゃね?」

GM視点での戦況を知らせることで、GMは戦いに真剣に向き合っていることを伝える。
(ついでにさりげなくプレイヤー側へアドバイスを行なっている)

この手法は特に、プレイヤー側にとって好ましくない状況が起こった際に威力を発揮する。
具体例を挙げる。

⚪︎普通の会話
「Aさんの攻撃を〈絶対回避スキル〉で無効化します。ダメージは受けません。」

⚪︎ダメな会話
「Aさんの攻撃を〈絶対回避スキル〉で無効化しまーす。残念でしたねー。そんな攻撃通りませんよー。」

⚪︎暗黒GM術奥義による会話
「Aさんの命中判定直後、考えまーす。データ確認いいですか?Aさん〈威力増強スキル〉残ってますよね?あー、通したらワンチャン死ぬんか。やりたくねー。〈絶対回避スキル〉使用、通りますか?〈打ち消し〉は効きます。温存?了解です。ではダメージ無効化して、次Bさんの手番どうぞ……あ!じゃねーミスったか!?〈威力増強スキル〉他人にも使えるやん。Bさんの攻撃で確殺する為に〈打ち消し〉温存したんか。上手いなー。えー巻き戻しは出来ませーん。行動どうぞ。」

…………架空の会話である。筆者の体験談では、ない。多分。

ともかく。状況説明と解説を行うことで、GMは手加減をしておらず、持ちうるリソースを余さず使っていると伝える。

余談だが。上記の『ダメな会話』はGM発言としては確かにダメなのだが(煽りになるので)、少し内容をいじって敵キャラクターの発言として行えば、程よく悪役に相応しいセリフ回しとなるだろう。



本当に真剣勝負なの?

違う。断じて違う。

競技性の高いゲームにおいては、自分の思考をわざわざ垂れ流すことは不利を招く。
ゆえに前述の会話は、本当の真剣勝負に臨む人々から見れば手加減の一種である。

だがTRPGは競技ではなく、GMは対戦相手ではない。
全員が楽しむ、という共通目的を達成する為の『真剣な方法論』を用いることに、何の問題があろうか?いや無い。


まあでもこれ、ただのリアクション芸の一種なんですけどねー。

終わりだよ〜



(○・▽・○)


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