松ちゃん

福井県在住。福祉職員 もとデザイナー兼ライター。主な著書に『萬福そば天国』福井新聞社刊…

松ちゃん

福井県在住。福祉職員 もとデザイナー兼ライター。主な著書に『萬福そば天国』福井新聞社刊 があり、企業や協会関連の50年年史などの作成・歴史部分の文筆に携わる。カメラをもってバイクでツーリング、地元周辺の温泉巡りが趣味。

最近の記事

誰かが体験した奇談。其三 『怪談の正体』

叔父が語る『怪談の正体』 叔父は昔、児童文学の作家たちと親しくする機会があったそうだ。児童文学といってもどちらかというとSF寄りの話を書いている作家たちだったということだ。 そんな叔父に怖い話ないかと聞くと、にやりと笑って怪談の正体を知りたくないかと話し出した。 叔父は語る。 昔は、週刊誌のマンガの本には読み物があった。 マンガも好きだったが、そういう読み物も好きだったんだ。 夏になると、いつも怖い話が載っていてね。 全国各地の怪談というものも載っていた。私が住んでいたと

    • 誰かが体験した奇談。其二 『お台場』

      東京の友人のひとりが語る『お台場』 変わった話と言えば、こんなことを思い出しました。 よくある話かもしれませんが。 今なら東京のお台場と言えば、大きなテレビ局もあり、ちかくには東京ビックサイトもあるし、豊洲なども近くにある東京の名所の一つにもなっているのでは思います。 私がよく行っていた頃は、まだレインボーブリッジが作られている頃で、何もない所でした。それでもお台場海浜公園をたまにデートしたものです。人があまりいないことが気に入ってました。 第三台場の跡が海の中にあって、

      • 誰かが体験した奇談。其一

        ある女性が語る。『鏡』 それはずっと昔の話です。お断りしておきますが、それほど怖い話ではありませんよ。 でも、あなたは奇妙なことというのは日常で気が付かないほどだとおっしゃるのですから、そういうものかも知れませんね。 私が中学生の頃で話ですから、もう何十年も前の話です。今はすっかりおばぁちゃんですけどね。 私が通っていたのはS市にあるC中です。今でこそ落ち着いた街ですが、昔はS市の中でも振興住宅の多い新しい街でした。 物の怪が住むような伝説の森などもありましたが、新しい

        • 私が体験した奇妙な事。其七

          十年前の私が語る。『おい』 十年ほど前の事だった。そのころの我が家は、全員で食事をする習わしだった。別に強制ではないが、親父を中心に食事をするのが当たり前だった。 ある日の事だった。 親父は正面からテレビが見える特等席に座っていた。好きな日本酒をちびちびとやりながら家族そろってバラエティ番組を見ながら食事をするのだ。私の席は親父の左隣だった。 おふくろもいるし、小さな子供もいる。嫁さんは、私の顔を見るとご飯をよそい始めた。 いつものなごやかな風景。 私が座ろうとしたとき

        誰かが体験した奇談。其三 『怪談の正体』

          私が体験した奇妙な事。其六

          ライダーの私が語る。『後ろからくる車』  ずいぶん前の話だ。  私の住むF県は北と南が峠でつながっている。その昔、汽車は峠を避けて海岸近くの線路を走っていたという。今は、長いトンネルが出来てその峠の下を快適につなげているのだが。  海岸線ちかくの線路は、やがて道路になり、たくさんのトンネルがある道となった。それでも、大きな道路とは離れているので通る人はめったにいない。その道路に出るだけでも、迷子になりそうなくらいだった。  そこにあるトンネルの一つは、細くて車一台しか通れな

          私が体験した奇妙な事。其六

          私が体験した奇妙な事。其五

          ライダーの私が語る。『鎮守の森』  東京にしばらく住んでいたことがある。移動には込み合う電車よりバイクのほうがいいとバイクに乗っていたが、性に合っていたらしく、やがてオフロードバイクでテントを持って近くの山に出かけるようになった。  キャンプと言えば聞こえはいいが、昔風でいえば『野営』。走るために目的地まで行ってテントを張り寝るだけ。朝には林道を走るのだ。目的は走ることであり、とにかく眠るところがあればよかった。    都内を離れ、近くの県にあるK湖にはよく出かけて行った。

          私が体験した奇妙な事。其五

          私が体験した奇妙な事。其四

          大学生の私が語る。『どくろ』  私は大学の時、音楽系のサークルに所属していた。自分で歌を作ってライブで発表したり、楽しいサークルだった。  夏には合宿があった。  昼間は、まじめに練習などをしているのだが、夜は怪談サークルとなる。毎夜怖い話を語り、肝試しをするのが毎年の恒例だった。  今思えば、『てけてけ』の原型となる『カシマレイコ』のそのまた原型となる富山の滑川の踏切事故だという『きじまさんの話』などが語られていたのを思い出す。体験談も多くけっこう本格的だったのだ。  

          私が体験した奇妙な事。其四

          私が体験した奇妙な事。其三

          数年前の私が語る。『みえない猫』  人類が蛇を怖がるのは、蛇の日常がわからないからだという説をどこかで読んだ記憶がある。蛇の日常が分かれば怖くなくなるという話だったと記憶している。  では行きかう人が怖くないのは、人間が何を食べて、どんな日常を過ごすのか、恋をしたり、子供が出来るとどうするのか想像がつくからだろう。でも、本当に行きかう人が「ひと」でなければどうなのだろう。本当に歩いているのは人間だけなのだろうか。そう見えるから安心しているだけではないのか。  ある研究では

          私が体験した奇妙な事。其三

          まっちBOX Street 11 掌編小説

          まっちBOX Streetという掌編について 1995年から2001年まで、福井県の無料自動車情報誌に連載していたものです。 当時のデータがあり、そのままの形で転載します。だから古い車やタバコ吸っていたり、スマホじゃなく携帯だったりしますが、そのままお楽しみください。 73編あるのでぼちぼち公開します。 No11 洗車日和 ブルージーンズにお古のトレーナー。いつもの洗車スタイル。髪は後ろで束ね、化粧はしない。 幸江がその格好で朝ご飯を食べていると、母親がいつものよう

          まっちBOX Street 11 掌編小説

          まっちBOX Street 10 掌編小説

          まっちBOX Streetという掌編について 1995年から2001年まで、福井県の無料自動車情報誌に連載していたものです。 当時のデータがあり、そのままの形で転載します。だから古い車やタバコ吸っていたり、スマホじゃなく携帯だったりしますが、そのままお楽しみください。 73編あるのでぼちぼち公開します。 No.10 ソロ・ライダー  ブレーキをかけながら、ぽんぽんとギアを落とした。バイクが暴れ出さないように抑えながら、コーナーに進入する。リアがグリップとスライドのあ

          まっちBOX Street 10 掌編小説

          私が体験した奇妙な事。其二

          小学生の僕が語る。『夜の足音』  我が家は僕が小学三年生の時に建てられた。今でこそ住宅街の真ん中だけど、建てられた当時はの中の一軒家だった。二階建てで、二階はこども部屋だった。  もともとは、廃線になった電車の操車場だったとか。その前は田んぼだったようだ。父ちゃんが、サルが楽しく遊ぶ田んぼだったのかなぁと話していたのを覚えている。「猿楽田」とでも書いたのだろうか。小さな山も近く、猿が出てもおかしくはないのだけれど。    二階は姉たちが占領していたせいで、僕の部屋は階下の小

          私が体験した奇妙な事。其二

          私が体験した奇妙な事。其一

          幼稚園児の僕が語る。『雲の階段』  僕のおばぁちゃんは優しかった。顔は覚えてはいないけど、赤ちゃんだった僕をゆりかごに乗せ、寝かしつけたてくれたおばぁちゃんが優しかったのを覚えている。  キラキラ明るい。そんな思いで。  あばぁちゃんとお別れしたのは、何もわかっていないころ。  叔母に促されて、暗い部屋で横になっているおばぁちゃんの口に、筆で水を塗ったのを覚えている。  姉達には厳しかったおばぁちゃん。僕には優しかった。長いこと奥の部屋にいたきりで、会いに行こうとすると止

          私が体験した奇妙な事。其一

          まっちBOX Street 09 掌編小説

          まっちBOX Streetという掌編について 1995年から2001年まで、福井県の無料自動車情報誌に連載していたものです。 当時のデータがあり、そのままの形で転載します。だから古い車やタバコ吸っていたり、スマホじゃなく携帯だったりしますが、そのままお楽しみください。 73編あるのでぼちぼち公開します。 No9 約束  暖かい春の日、幸雄は上機嫌だった。  やっとのことで免許を取り、車までやって来たのだ。もちろん中古車だが、念願のパジェロだ。あと、卒業式をすぎれば、晴れ

          まっちBOX Street 09 掌編小説

          まっちBOX Street 08 掌編小説

          まっちBOX Streetという掌編について 1995年から2001年まで、福井県の無料自動車情報誌に連載していたものです。 当時のデータがあり、そのままの形で転載します。だから古い車やタバコ吸っていたり、スマホじゃなく携帯だったりしますが、そのままお楽しみください。 73編あるのでぼちぼち公開します。 No8 バレンタインKiss 「えっ。 買った車ってこれ?」 会社の駐車場で驚いている深雪先輩に、雅行はうなずいた。彼女 は会社の先輩で、黒の似合うあこがれの人だ

          まっちBOX Street 08 掌編小説

          まっちBOX Street 07 掌編小説

          まっちBOX Streetという掌編について 1995年から2001年まで、福井県の無料自動車情報誌に連載していたものです。 当時のデータがあり、そのままの形で転載します。だから古い車やタバコ吸っていたり、スマホじゃなく携帯だったりしますが、そのままお楽しみください。 73編あるのでぼちぼち公開します。 No7 二十歳の夜 ハンドルを切るたびに、恭子が声にならない声を上げる。里美の操るインプレッサスポーツワゴンは闇を切り裂くように走っていた。 「ねぇ、もう少しゆっくり行

          まっちBOX Street 07 掌編小説

          まっちBOX Street 06-b 掌編小説

          まっちBOX Streetという掌編について 1995年から2001年まで、福井県の無料自動車情報誌に連載していたものです。 当時のデータがあり、そのままの形で転載します。 73編あるのでぼちぼち公開します。 No6-b イブの日の女の子 その女の子はわりと大きめの箱を抱えて、郊外の道路沿いにたたずんでいた。おずおずと左手の親指を立てている。ヒッチハイク。そう気が付いて勲はハイエースを止めた。 「どこまで?」 女の子はまだ高校生のように見えた。もちろん、じっくり見て

          まっちBOX Street 06-b 掌編小説