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いつも心に生傷を。−−『あの日、選ばれなかった君へ』

『バチがあたるんじゃないか?こんなに選んでもらっている自分が、この本を語るなんて…』

そんな、おこがましい理由なんです。感想を書くのに、1年もかかってしまったのは。(発売した週に即買い、読んだにもかかわらず)

本が発売された頃、僕は実力に見合わない結果が、「選んでいただける」ラッキーが続いてて。ガムシャラにはやってきたけれど、うまくいったのはほんと、お世話になった人たちのおかげ。そんなタイミングで「選ばれない」というテーマについて語るのは、失礼なんじゃないか?そう思って、先延ばしにしてしまいました。

でもそれから……

その「選ばれた」経験が、いつのまにか「次は、選ばれないかもしれない怖さ」に変っていて。

自分が「選ばれる場」に身を置くことから逃げていることに、最近気づきました。

そうして今日、再び手に取った、この本。

「…あれ、こんな内容書いてたっけ?」と思うほど、前回はスルーしてしまっていた言葉が胸に飛びこむ。「1年前の自分が、今の僕のために買ってくれた」そう、感じるほどでした。

特に刺さった言葉を、いくつかご紹介します。

自分に対して、パワハラしてはいけない。大切なのは過去の自分に敬意をもって接することだ。これまで自分が選んできたことをリスペクトしたいと思う。

あの日、選ばれなかった君へ(阿部広太郎/ダイヤモンド社)

そうそう。後悔、とまではいかないけれど「もっとこうしておけば今の自分は違ったかもな」と思ってしまうことはある。でもその時はBESTだったし、きっとそれは将来の伏線にもなるはず。

「え、こんなので?」と思われるんじゃないかと君は恥ずかしさに負けてしまった。(中略)「ちなみに…僕の課題、どうですかね?」と勇気を出して口にすることができず、結局

あの日、選ばれなかった君へ(阿部広太郎/ダイヤモンド社)

そう、いま囚われているのは、こんな恐怖だ。

「プロのコピーライターなのに、こんなレベルの低い文章を書くんだ」
だれかにそう言われそうで、いや、そう思われそうで、気軽にnoteを書くこともできなくなっていた。
ほんと、自意識過剰。そう本気で気にしているのは、だれでもない僕自身だけなのかも。

ド素人のプライドほど厄介なものはない

あの日、選ばれなかった君へ(阿部広太郎/ダイヤモンド社)

ぐはぁっ!!!
もうやめてくれと思うほどに自覚がある。

ド素人とは言わないものの、ベテランでも有名人でもない自分がなにを恐れているんだ。いつから「こんなみっともない文章書いたら…」とか考えるようになったんだ。うまくいったときだって、十中八九、箸にも棒にもかからないアイデアだったじゃないか。それを何回も繰り返して、ようやく、選ばれるものが見つかったんじゃないか。

コピーを書くよりも、恥を書いていた。

あの日、選ばれなかった君へ(阿部広太郎/ダイヤモンド社)

コピーを書くという行為は、効率が悪い作業だと思う。少なくとも僕の場合、ほとんどがボツになるし、褒められるものなど一握りだからだ。でもそのボツがあるからこそ、その案を見せたことで感じる恥ずかしさを乗り越えたからこそ、「これはいい」がたまたま生まれる。

コピーを書くという行動のほとんどは、恥を書くことなのかもしれない。


ひさしぶりに読んで気づいた。
僕にとっては、選ばれない悲しさを癒す本ではなかった。

挑戦する勇気が出ないときに、選ばれないこと、傷つくことを恐れようとする自分に「それでも一緒に前に進んでみよう」と声をかけてくれる経験談だった。

石碑に刻まれたような、過去の成功に手を合わせるのも、たまにはいいけどね。今日、恥をかいた心の痛みを、真新しい生傷を、もっと誇ってもいいんだろうね。

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