お金の価値を担保するものの歴史 金兌換紙幣、石油兌換紙幣、借用書としてのお金

私が大学生になる30年ほど前まで、「なぜ紙切れでしかないお金をお金と信じることができるのか?」の説明は、「政府への信頼」だった。なぜお金がお金として機能するのか、当時の学者もよくわかっていなかったみたい。何か理論に基づいて後から現実が構築されてた訳じゃない、という証左でもある。

第二次大戦後、アメリカのドルは金兌換紙幣だった。お金を銀行に持って行けば金の塊と交換してもらえる、と約束されたお金。それによってお金の価値は保証されていた。他の国のお金は、ドルとの交換レートを固定することで、日本の円なんかも間接的に金兌換紙幣として価値が担保されていた。

激震が走ったのはニクソン大統領の時。1971年8月15日、ドルを金(ゴールド)と交換する金兌換制度を廃止した。これにより、ドルは不換紙幣となる。ドルの価値を担保するものはなくなり、ただの紙切れとなるかと思いきや。この時、恐らくキッシンジャーが、巧みな仕組みを用意していた。

世界中のどこに行っても石油はドルでしか買えない、という仕組み。世界中の国は、石油を手に入れようとしたらドルを手に入れなきゃいけない。ドルを手に入れるにはアメリカに何かを売り、その対価としてドル札をもらうしかない。こうしてアメリカはドル札刷るだけで世界の商品を手にできた。

アメリカが「双子の赤字」と言われるほど、巨額の財政赤字、貿易赤字を出していても世界中の国がアメリカに商品を売り続け、アメリカはドル札印刷するだけでそれらの商品を手にできたのは、「石油はドルでしか買えない」という構造、いわば石油兌換紙幣の仕組みがあったからこそ。

様子が変わりだしたのはイラク戦争から。イラクのフセインは、ドル以外のお金でも石油を売ろうと企んでいたらしい。イチャモンつけてフセイン政権を潰した背景には、石油兌換紙幣であるドルの地位が脅かされるという心配があったからかもしれない。

しかし結局は、石油産出国は次々とドル以外のお金(ユーロとか)でも石油を買える仕組みを導入した。唯一の石油兌換紙幣として機能していたドルは、もはや「唯一」という絶対的地位を失うことに。それ以来、ドルをはじめとするお金はどうやって価値を担保してるかというと。

政府が国債を発行し、その国債の分、お金を発行し、それが市中に流れる、という仕組みになっている。政府は国債の分のサービスを国民に提供するという約束をすることで、お金として信頼してもらう格好。つまり、回り回って「政府への信頼」でお金がお金として機能してる。

政府は、国民から集めた税金と国債を発行することでできたお金を、道路工事などの公共事業や、介護などの社会保障として使う。そこで働く人達はそれで給料をもらう。その時に、お金と労働の交換レートが決まってる格好、と理解すればよいように思う。

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