賢明な富裕層

日本経済新聞はよく、先のことを何も考えていないポピュリズムが政治の主導権を握る危うさを指摘するけども、ポピュリズムの生みの親は貧富の格差であることをごまかす傾向がある。富裕層を読者に持つからあまり敵対的な記事を書きたくないからだろうけど。

ポピュリズムも、共産主義も、ナチズムも、貧富の格差、富の集中が生みの親。それがなければ生まれようがない。しかし新自由主義が貧富の格差を拡大し、上位10%が所得の46%(アメリカ)、44%(日本)を牛耳るように。戦前に共産主義が吹き荒れた時の48%に迫る。

ポピュリズムが愚かなのではない。ポピュリズムを生み出す富裕層の愚かさなのだと思う。しかし富裕層もまた、考えなしに富を求めて狂奔してしまうのは、政治がそこに道をひらいてしまったから。しかし政治にそうさせようとロビー活動したのも富裕層。となると、やはり富裕層の愚かさ。

しかし賢明な富裕層もいる。そうした人たちは、富の偏在に心を痛める。富が一部の富裕層にばかり集まれば、結局は富裕層自身を破滅に追いやることをよく承知しているからだ。賢明な富裕層は、貧富の格差が拡大しないようにと願っている。そのための手も打つ。

富裕層の方々は、これ以上格差を拡大させることを助長しないで頂きたい。所得が貧困層にも行き渡り、中間層が分厚くなることを目指して頂きたい。あなた方の貢献度が大きいなら、取り分が少し多めになるくらいのことなら別段目くじらは立てられない。しかし現状はバランスが崩れている。

上位10%の人達の所得が44%を占めるのは明らかにおかしい。それは搾取と呼んで差し支えない水準のように思う。そんな調子を続けていたら、富裕層を根絶やしにしようとする社会思想が生まれても不思議ではない。極端が極端を生むからだ。今の極端が逆の極端を生む。

ロシアでの共産主義革命が起きる前夜(1905年)、上位10%に富が48%も集中。
2021年、アメリカは46%、日本は44%、中国43%。貧富の格差が大きいと思われがちな中国より、実は富の集中が見られるのが日本。(日本経済新聞230108)


日本経済新聞230108

富の偏在を、ここ二十年くらいかけて修正する必要がある。この努力を怠ると、いつ共産主義やナチズムに似た「富裕層憎し」の社会思想が生まれかねない。自らの極端が逆の極端を生むのだという自覚を、富裕層の方々は肝に銘じてほしい。賢明な富裕層になって頂きたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?