オミクロン株 考

オミクロン株はデルタ株と比べれば症状がやや軽く、重症化しにくいということで「ただの風邪だ」という、新型コロナで何度も繰り返されている言説がまたもや強まっている。専門家や政治家からは「正しく恐れよう」とアナウンスされるけれど、今一つわかりにくい。そこで私なりに言語化を試みる。
オミクロン株は「ただの風邪」ではない。次の二つの条件を兼ね備えるものは他に見られないから。
①インフルエンザに匹敵する症状のきつさ
②インフルエンザとは比較にならない、感染力が強かったデルタ株よりもさらに強い感染力
2条件を兼ね備えた風邪は他にない。これが医療システムを破壊する。
医療関係者によると、基礎疾患のある人がインフルエンザにかかると重症化、死ぬことがあるので感染には十分注意しなければならないが、インフルエンザの感染を防止するのは比較的対策しやすいのだという。インフルエンザは新型コロナほど感染力がなく、適切な処置で感染を防ぐことができる。しかし。
新型コロナは、インフルエンザと比較にならない感染力。新型コロナの感染者がなかなか抑えられない中、インフルエンザの流行が全くと言ってよいほど起きないのは、その証拠。新型コロナは、インフルエンザと比べて医療従事者も相当の処置をしないと感染を防げない。その労力が半端ではない。
オミクロン株は、新型コロナの中でも感染力が強いとされたデルタ株よりさらに感染力が強い。このため、基礎疾患のある人に感染が起きないようにすることが非常に困難。もしそれを実施しようとしたら、医療者の負担、病院の負担は非常に大きくなる。結果、治療に費やすべきマンパワーが失われる。
オミクロン株は重症化しにくいということだけど、よく指摘されるように、「重症」のイメージが一般と全然違う。一般人にとっての重症は、医療者にとって中等症でしかない。そしてオミクロン株は一定程度、中等症を起こすくらいの症状のきつさはある様子。https://www3.nhk.or.jp/.../20210730/k10013169711000.html
インフルエンザとは比較にならない、従来の新型コロナの株よりもさらに強力な感染力をオミクロン株が示すうえに、インフルエンザ並みのきつい症状を引き起こすため、基礎疾患の人が感染するリスクが非常に高まっている。そして高齢化した日本では、基礎疾患持ちの人が非常に多い。
通常に医療が機能していれば、基礎疾患持ちの人も普通に働いている人が多く、社会を支えてくれている。しかしオミクロン株の出現で、死の危険にさらされている。病院はこの人たちへの感染を防ぐための対策に労力をはなはだ削られていて、十分な治療を行えなくなり始めている。
本来なら、ガン患者など、手術を要する人たちがいるのに、オミクロン株の感染を防ぐための対策でマンパワーをとられ、その人たちの治療ができない。この人たちは、オミクロン株に感染すると死ぬリスクがある。だから感染は防がなければならない。しかし流行している間は、治療もままならない。
よく、医療崩壊する前に、飲食店などの経営が崩壊し、経済的な死が増えてしまう、という指摘がある。これは確かに重い問題。ただ、経済的死が起きるから医療崩壊なんかして構わないか、というと、それも違う。医療崩壊したら、人体で例えれば、免疫機能を失っても働け、というようなものだから。
医療が適切に機能するから、私たちは健康をそれなりに維持し、社会生活を営める。しかし医療崩壊すると、適切な治療が受けられない。透析が受けられない腎臓病の患者に働け、というようなもの。やはり、医療崩壊は避ける必要がある。
経済的な死も増やしてはならない。医療崩壊も避けなければならない。この両方の目的を達するには、オミクロン株の流行をできるだけ早期に抑える必要がある。ともかくインフルエンザとは比較にならないほどの感染力なのに、インフルエンザ並みに症状がきついというのが厄介。
以上が、どうやらオミクロン株というものの実態のように思う。繰り返すが、①インフルエンザ並みの強い症状、②インフルエンザや従来の新型コロナとは比較にならない感染力の強さ、この2条件を兼ね備えたオミクロン株は、「ただの風邪」ではない。そんな風邪、他にない。だから対策が困難。
感染リスクのある行動をなるべく控える。それが今回のオミクロン株への、最も有効な対策の様子。
気になるのは、ステルス・オミクロン株とか、オミクロン株の亜種と呼ばれているのが、従来のオミクロン株以上に感染力が強いらしい、ということ。これが世界的に流行しつつある。本当に厄介。
前回のデルタ株の流行とはまた違う形で死者が増え、医療崩壊する可能性がある。オミクロン株にかかったら死ぬ恐れのある基礎疾患のある人たちに感染し、死に至らしめる、という形で。それを防ごうとして医療関係者が疲弊し、十分な治療を行えなくなる、という形で。
今回の私の言語化が、わかりやすくなっているかどうか心もとない。ともかく、オミクロン株は①インフルエンザ並みの強い症状、②インフルエンザとは比較にならない感染力、という2条件を兼ね備えていることから、「普通の風邪」では断じてない、という点だけは、ご理解いただけたら、と思う。

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