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関わりの深さを可視化する「コミュニティファネル」とは?

こんにちは!コミュ売れ総研 主任研究員のSHINです!

このコミュ売れ総研ではコミュニティを”科学”することによって、データに基づく再現性の高い手法で、企業や団体のマーケティングやコミュニティ運営の成果に繋げる方法を模索しています。

第3回目の今日は、コミュニティ構築に重要な考え方である「コミュニティファネル」についてお話しします。

前回はコミュニティをより良いものにする重要な存在、KOCについてお話ししました。

ただ、KOCがいるだけでコミュニティがよくなるというものではありません。例えば、スポーツチームのコミュニティに入ったとして、いきなり既存のコミュニティメンバーの会話に混ざっていけるでしょうか?できる人もいると思いますが、多くの人は戸惑ってしまうと思います。そうすると、メンバーが定着しにくく、コミュニティの活性化に繋がらないでしょう。

目的に合わせて正しくコミュニティ設計をすることで、KOCがうまく活躍でき、ユーザーも楽しみやすい環境が生まれます。

そこで今回は、従来のマーケティングファネルに我々の提唱する「コミュニティファネル」という構造が加わると、どんなメリットが生まれるのかについてお話ししたいと思います。


マーケティングファネルとは?

一般的なマーケティングファネルについて

マーケティングファネルとは、消費者が商品を認知してから購入する行動過程を段階ごとに分けてモデル化したものです。
ファネルは「漏斗(ろうと・じょうご)」の意味で、広く集客した顧客がフェーズが進むつれて少数化するという、消費者の購買行動を示す形にそっくりなことから、「マーケティングファネル」という用語として使われています。

マーケティングファネルには「パーチェスファネル」と「アンバサダーファネル」というものがあり、その2つを合わせてダブルファネルと呼ばれています。それぞれについて簡単に説明していきます。

パーチェスファネルは購入までの流れ

顧客が商品を認知し、購入するまでの一般的な心理変化の段階をパーチェスファネルと呼びます。

「①認知」>「②興味」>「③比較・検討」>「④行動」の4つのステップがあります。例えば、化粧品を買うときはCMでその商品を知り、口コミで興味を持ち、お店で他の商品と試し比べて購入するという流れです。

これはAIDMAモデルという態度変容プロセスモデルがベースとなっています。AIDMAモデルは1920年代にアメリカの著作家であるサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱されたとされるモデルで、消費者がモノやサービスを知ってから購入するまでのプロセスを表しています。

このAIDMAモデルを発展させて生まれた考え方がパーチェスファネルであり、見込み顧客がどの段階でどのくらい存在し、どこで離脱してしまうのかを可視化して、自社のマーケティング施策の改善に繋げることができます。

購入後の行動にフォーカスするアンバサダーファネル

パーチェスファネルを経て、その次のステップとしてアンバサダーファネルが存在します。
アンバサダーファネルは「①継続」>「②紹介・共有」>「③発散・拡散」>「④ロイヤル化」の4ステップで構成されており、購入という行動を起こした消費者がどのようにその価値を発展させていくかを表しています。

ある商品を購入して使ったら使い心地が良くて継続購入し、その使い心地の良さをSNSで友人に共有することで情報が拡散され、自身もその商品への愛着がより深まるといったイメージです。

これはAISASモデルというものを参考にしています。AISASモデルは2004年に電通が提唱した考え方で、AIDMAモデルと同じ消費者が商品選定から購入に至るまでの流れに加えて、購入後に他の人に共有することを図示したものです。主にインターネット上での買い物を想定したモデルとなっています。AIDMAモデルと比べると、購入前の「Search」と購入後の「Share」が組み込まれていることが特徴です。

既存顧客の維持や新規顧客の創出にも繋がるダブルファネル

今まで説明した「パーチェスファネル」と「アンバサダーファネル」を組み合わせたものがダブルファネルです。それぞれの色の領域の広さは「人の数」に関係していて、パーチェスファネルでは認知をしてから購入までの間にだんだん見込み客の人数が減る様子がわかります。一方、アンバサダーファネルでは購入後のユーザーによる情報発信によって、商品の関係人数が増えていく様子が表されています。

限られた数の購入者に良質な顧客体験を提供することで、商品への愛着が生まれます。それに加えて、SNSや口コミを使った情報伝達によって新たな顧客を開拓することで、その商品のファンがどんどん増えていくのです。

コミュニティファネルによる相乗効果

ここまで説明してきたマーケティングファネルに我々が提唱する「コミュニティファネル」という概念を重ね合わせることで、更なるメリットが見込めます。その内容について説明していきます。

コミュニティファネルとは?

コミュニティファネルとは、デジタルコミュニティの中でのユーザーの関与度の深さを表したものです。ユーザーがあるコミュニティを知った時、まずはどのような場所なのかということについて調べたり、ちょっと覗いてみたりすると思います。そこからコミュニティに入り、だんだんとその場に根付いていく、その行動変容の3つの段階をコミュニティファネルと呼んでいます。

先ほど説明したダブルファネルにおいて、新規顧客の創出を狙うパーチェスファネルから、既存顧客維持へとシフトするアンバサダーファネルに導いていくフェーズには高いハードルがあります。一度購入してくれた顧客が継続的に自社の製品・サービスを購入してくれるためには、商品を気に入って継続購入してもらうための施策が必要になります。

しかし、今の流行りであるバズマーケティングでは一過性の認知しか得られず、顧客を自社商材に定着させることはできません。そこで、初購入から継続購入に顧客を導いていくタイミングでコミュニティを活用することを推奨しているのが、コミュニティファネルになります。その構造について、解説していきます。

コミュニティファネルの3つの構造

コミュニティファネルは「VISIT」「FRIEND」「VALUE」という3つの行動ステップで構成されています。

この3つのステップはデジタルコミュニティだけでなく、会社・サークル・クラブ活動・学校など、現実の人が繋がる場でも同じですので、学校の部活動を例にそれぞれのステップについて説明していきましょう。

VISIT:コミュニティにアクセスし、情報を得る段階
ここは、ユーザーがコミュニティを初めて訪問(VISIT)する段階です。
部活動に入る前に学校の掲示板に各部のチラシや新入生歓迎のポスターなどがありますよね。または先輩による部活動紹介などが行われ、各部活動の概要や活動内容、練習スケジュールなどを把握できて、関心が深まるきっかけとなることもあるでしょう。
このように、ここは初心者が最初に通る「入口」の段階であり、コミュニティ設計においては情報掲示板や既存メンバーによる歓迎・挨拶など、インフォーメーション/ウェルカムエリアとして構築されます。

FRIEND:コミュニティ内で交流し、つながりを持つ段階
ここは、メンバーがコミュニティ内で交流し、友人関係(FRIEND)を築く段階です。部活動で言うと、試合や大会に向けての分析や作戦計画、合宿でのコミュニケーションなど、実際の活動を通してお互いの理解を深め、友人との絆が生まれていく時期です。
コミュニティ設計では、共創活動やテーマトーク、イベント企画などを通してメンバー同士の遊び場となるアクティビティエリアとして構築します。この段階になると、メンバーは自発的にコミュニティに来たいと思うようになります。

VALUE:コミュニティに価値を生み出すメンバーとなる段階
ここは、メンバーがコミュニティに愛着を持ち、新たな価値(VALUE)を生み出す段階です。かけがえのない日々を過ごすことで仲間との絆が深まり、大会での優勝を目指して一致団結したり、負けを悔しがったりと、大人になっても忘れられない青春の思い出という特別な体験をする時期です。この経験は大人になっても忘れ難く、OBとして後輩を指導することで関わり続ける人もいるでしょう。
コミュニティ設計ではロイヤリティエリアとして、認証された人しか入室できないプライベートルームや特別な体験をできるスペシャルな空間などを作るといいでしょう。

これでコミュニティファネルのイメージがついてきたのではないかと思います。ではコミュニティファネルを用いることでどんなメリットがあるのでしょうか。

コミュニティファネルがあることで行動が可視化される

端的に言えば、コミュニティファネルを用いることで、一般的なマーケティングファネルにおいてどの段階の人がどのくらいいるのか、ということを定量的に可視化することができます。

コミュニティメンバーがやり取りする場を提供したうえで、考えていかなければいけないのはそのコミュニティにおける効果や成果の検証です。デジタルコミュニティではコミュニティメンバーの行動をデータとして収集することが可能なため、定量的に顧客層を可視化し、再現性の高い効果的なマーケティングを設計することができるのです。

例えば、デジタルコミュニティでは参加者の人が特定の条件を達成した場合に役職のような肩書きのようなものを付与できます。VISITを経験するコミュニティ参加者全員には「コミュニティメンバー」という肩書きを与え、コミュニティのメインコンテンツの2次創作を作った人には「クリエイター」、10回以上SNSで解説を投稿した人に「スカラー」という肩書きを与えるとします。

このように、コミュニティメンバーの行動に応じてラベル分けをすることで、新規参加者やアンバサダーファネルの各階層に当たるようなアクティブな継続購入者を定量的に可視化することができます。

また、コミュニティ活性化の観点からも、ラベル分けは有用です。ラベル設計を適切に行うことでコミュニティに必要な人材を明確にし、どの役割のメンバーが過不足しているのかを把握することができますし、肩書きなど自身の貢献を認めてくれるものはメンバーの自己肯定感や帰属意識を高めるため、コミュニティへの積極的な参加を促すこともできます。

以上のようにマーケティングの観点からも、コミュニティ活性化の観点からも、コミュニティファネルは非常に重要なモデルであり、これをうまく活用することでコミュニティを更なる成長へと導いてくことができるため、我々は「コミュニティグロースモデル」とも呼んでいます。

コミュニティファネルを活用して、消費者をより深く理解しよう

コミュニティファネルは、従来のマーケティングファネルと組み合わせることで、顧客との長期的な関係構築を実現し、ビジネスの成長を促進することができます。自社コミュニティに顧客を定着させ、顧客の行動やニーズを把握することができれば、より効果的なマーケティング施策を立案したり、新しい製品やサービスを開発したりすることに繋がります。

それぞれのフェーズで消費者が求める環境や体験が異なるため、コミュニティメンバーと密接な関係を築くKOCが活躍するためにも、コミュニティファネルの構築は重要となります。KOCという存在やコミュニティを構築するための考え方について、大まかに理解できたのではないでしょうか?

次回は今まで説明してきた、コミュニティという環境で貢献してくれる「KOCの生み出し方」についてお話ししたいと思います。

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