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さんまさんのニュースを見て

さんまさんのお笑い向上委員会でのニュースを見ました。

ニュース記事よりさんまさんの言葉を抜粋します。

「お医者さんは目の前に、菌を持っている人をみるわけやからな。本当にご苦労さんって頭を下げたい。」

「医療の仕事しといたらよかったと思って」

「冗談ちゃう!こういうときに、医者やったら人を助けられたのにって。お笑い芸人なんか全部仕事なくなって、こんなときにいらん商売かと思って、ものすごい後悔して…」

一人の医療関係者としてとても励まされる言葉でした。

さんまさんの言葉を聞いて考えたこともあったので、noteにまとめておこうと思います。


私が医師になって思うのは、私たちは誰かの生活の支えにはなれても、誰かの生きる希望にはなれないということです。

誰かの今日を支えることはできても、誰かにとって明日を生きる希望にはなれません。


どれだけ身体が健康でも、生きる希望や小さな楽しみのない日々は不健康に陥っていきます。

入院中の患者さんに「楽しみも希望もないのに、生きていてもしょうがないよ」と言われて返答に困ることがあります。「きっと何かいいことありますよ」と笑ってみても、それが正しい答えなのか今でも私にはよくわかりません。

患者さんの絶望を想像してみることはできます。空虚で単調な日々、少しずつ生命力が失われていく中で、生きていることの意味がわからなくなる。今日から死ぬまで同じ毎日を生きるなら、今日死んだって同じことじゃないか、と考え込んでしまう。辛い毎日を生きるぐらいなら、今日死んじゃった方が楽なんじゃないか。辛い治療を乗り越えて長生きしたとしても、別にやりたいことなんてないんだから。

こういう問いに医療関係者は弱いです。私たちは今日誰かの支えにはなれても、誰かにとって明日を生きる希望にはなれません。「きっと何かいいことがありますよ」と他人任せです。

けれど、エンタメの作り手なら答えを出せるかもしれません。絶望の淵にいる患者さんに、いつか私が面白い映画を作るから、面白い話をするから、面白いものを見せるから、もう少しだけ生きててよと言えるかもしれません。これがエンタメの強みだと思います。


例えば週に1度楽しみにしているお笑い番組があれば、その日まで生きてみようと思えるかもしれません。来週まで、来週までは、と日々を乗り越えていくなかで、実生活で何かいいことが、新しい希望が生まれるかもしれない。

甲本ヒロトも日曜日よりの使者という歌で、「例えば世界中が土砂降りの雨だろうと ゲラゲラ笑える日曜日よりの使者」と歌っています。

この歌詞のように、エンタメには絶望を乗り越える力があると思います。エンタメの作り手は、誰かにとっての希望になります。さんまさんのお笑い向上委員会を毎週楽しみに生きている人がいます。


人生には波があり、いい日があれば悪い日もあります。そして何の起伏もない平坦な日々もあります。悪い日や平坦な日々は絶望的で、生きる気力を失ってしまうことさえあります。希望を失うことなく、暗い毎日を繋いでいくためには、小さな日々の楽しみが必要だと思います。

好きなテレビ番組やドラマ、聞き続けているラジオ番組、封切りを楽しみにしている映画、週刊のコミック雑誌、予約しているライブ、好きな作家の新刊、追いかけてるバンドの新曲、コンビニの新商品、Youtubeの更新・・・

エンタメに限らず、友人との飲み会の予定や、恋人とのデートの予定が、私たちの日々を生きる糧になっているはずです。

辛い1日でも、昨日と同じような退屈な1日でも、仕事終わりには楽しみなエンタメが自宅で待っている。それが辛い仕事や単調な日々を乗り越える燃料になる。

苦しい医療現場での仕事も、好きなテレビ番組やラジオ番組があると思えば乗り越えられる。週末に恋人とデートをする予定があれば、目の前の悲しみも一度飲み込むことができる。


エンタメが作り出す明日の楽しみや希望は、医療と同じぐらい重要なものだと思っています。エンタメが人生を豊かにすると信じています。私もエンタメを楽しみにしている一人として、これからもテレビやラジオをずっと心待ちにしています。

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