女芸人が売れない時代の中で

「女芸人はデブやブサイクだったり、エロくないとテレビに出られないのか!」

そのどれにも当てはまらない女性芸人が深夜テレビの中で叫んだ。売れていない自分の立ち位置を嘆く、というトークの中での叫びだった。

そのツッコミに大笑いした後で、確かになあ、と妙に考えてしまった。

今全国区のテレビに出ている女芸人は上で挙げられたいずれかに大別できる。

男の芸人もある程度はそう分類できるが、テレビに出続ける芸人には、自身のお笑いスキルを評価されている人の方が多い。女芸人にそういう売れ方をした人を知らない。テレビに出続ける女芸人も、大事な場面では上記のいずれかが顔を出す。


男性の数が多い芸人社会で、女性という立ち位置がそうさせるのだろう。売れるには、目立つには、他者との違いの上に立って勝負をする必要がある。女性という立ち位置に立つことで、女性なのに下ネタを言う、女性なのにブサイク、女性なのに太っている、と自身の特別性を際立たせる。

書いているうちに、いずれも女性はかくあるべき、と言う視点の中での特別性であることに気がついた。つまり、女性は「綺麗であるべき」なのに、ブサイクだったり太っていて、周りと比べて異質に感じるということだ。あるいは、女性は「清純であるべき」なのに、下ネタ好きで異質だということだ。

男で下ネタを言ってウケたのは、徳井義実や沢村一樹がまず思いつく。清潔感があって現実感がなく、ファンタジーのようになっていたことも要因の一つだとは思うが、「爽やかなイケメンなのに」下ネタを言っている、というフックのかかり方が良かったのだろう。それは、「女性なのに」下ネタが好き、というフックのかかり方によく似ている。


女性が自身の性に頼った表現をする、というのは女芸人だけに限った話ではない。

フィメールラッパーと呼ばれる女性のヒップホッパーもバトルや音源に下ネタを多用する。男性には表現できないような、当事者としての下ネタは、男社会であるヒップホップの世界で目立ち、フックになりやすいのだろう。女性の共感を集め、男性社会では異質な存在としてフィーチャーされる。それが注目を集めるきっかけになる。

つまり、下ネタも売れるためには、重要なコンテンツの一つなのだ。

女芸人では下ネタに加え、デブやブスという外見もコンテンツの一つになる。外見をいじられても、それが悪く見えないように明るく振舞ったり、悪態をついて噛み付き返したりする。これまで何度も繰り返し見てきた外見のいじりへの返しも、大体はこの二択だ。

こう返せないと、いじった側が悪者になり、いじりがいじめやパワハラになってしまう。そこに笑いは起きない。


同じような外見いじりを繰り返し見てきたということは、そのくだりを視聴者が面白がって、見たがっているということだ。いじられる人を変えて、やり方を変えて、女芸人の容姿をいじり、下ネタの話題を振る。それを上手にできた人から順番に売れていく。

そんな時代に、冒頭の女性芸人が大きな声でツッコむ。

「女芸人はデブやブサイクだったり、エロくないとテレビに出られないのか!」


女芸人を今のようなポジションに追いやったのは、視聴者にも責任がある。だから、今も女芸人イジリを続けるテレビからは離れないといけない。

そして、テレビから離れた環境で勝負している女芸人を応援したい。


テレビの呪縛を離れた女芸人は自由だ。発想力も飛び抜けて、企画力も演者としての力も、男芸人のそれに劣らない。

容姿をいじって面白い、という笑いのその先が見たい。その先を見せてくれる女性芸人もいる。いくつか動画を紹介させてください。





文章も最高なんです。

他にも面白い女性芸人はまだまだいますので、是非色々チェックしてみてください。

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