見出し画像

フライパン【詩】

届けたい そんなことば
おどけた顔で隠さないで
素直な気持ちのまま
言ってほしかった

ほとんど終わったみたいに
しらけた顔は しないで
届かない声や心を
手放さぬように

そのフライパンを持って

ちょっと古びた
小さな部屋のキッチン
ガスレンジの前に立つ君の
後ろ姿が涙で霞んでく


壁に掛かった黒くて大きな
鉄のフライパンの記憶が
想い出のワンシーンを映し出す
今も 今までも これからも

見えるはずのない君の心を
探してるんだ
いつも いつまでも

ただ でも 少し戸惑い
佇む君がいるなら
いつでも僕を信じて
頼って欲しいけど…

このフライパンみたいに
使い古しで少し煤けた
君との苦い想い出も
ガラス越しに浮かぶ君の姿も
涙に消えて行かないように

壁に掛かった黒くて大きな
君のフライパンは

今では僕が使ってる

ちょっと古びた
小さな部屋のキッチンから
見知らぬ世界へと旅立った君が
この先ずっと
笑顔でいられるように…って



(20220505/私之若夜=しのわかや)
※これは以前投稿した記事の再掲です。
 一部修正加筆してあります。
 画像は Canva より頂いています。