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ポーカーで "GTO"って必要なの?🤔

この記事は https://twitter.com/ShinnyPoker にて掲載したものです。

今回は、ポーカー界で定期的に議論となる、ポーカーにおける "GTO" の必要性について書いていきます。いつものように、長文です。

今回の記事は「GTO 否定派」の方を攻撃するものでは無く、また「GTO 最強派」の人たちを否定するわけでもありません。あくまで、僕が学んできたものを、自分なりに落とし込んで説明しているものです。

まず、「自分はエクスプロイトするから、GTO は学ばなくて良い派」の人たちですが、そういう方々は「制限速度を知らずに、高速道路を走っている」ようなものです。周りに合わせて走っていて、明らかにスピード違反している車に対して攻撃したり、明らかに遅い車を追い越したりしている状態です。

Pio Solver が出てくる前のポーカーは、そういった物でした。ポットオッズや相手の HUD の数値の乖離、そして感覚的なプレイのズレから相手のプレイスタイルを読み取り、アタックしていくポーカーです。

このようなスタイルのポーカーの問題点は「そのプールで利益を出せるようになるまでに、経験と時間がかかる」ことと「自分の間違いに気づきにくく、上のステークスに上がった時に苦労する」ということです。

例えば現在プレイしているゲームの制限速度(GTO) = 80km だとしましょう。ですが、周りの車はみんな 65km で走っていて、スピード違反する車は 100km、遅い車は 40km だとします。その状態で長い事プレイすると、自分の標準的なプレイが 65km になります。

その後しばらくして、ステークスを上げたとしましょう。そうすると、周りの車は 72km くらいで走っていて、スピード違反は 90km、遅い車は 55km くらいでした。そうすると、そのプールでは自分は少し遅いプレイヤーとなり、まずは周りの車に追いつく = 72km くらいまで速度を上げつつ、スピード違反や遅い車を見つけていく事になります。 こういった調整の問題点は、

1、自分が 72 km で周りに合わせて走れるようになるまでに時間がかかる 2、自分が 72 km に到達しても、まだ本来の制限速度である 80km = GTO 戦略では無い

ということです。なので、本来 GTO の使い方は、

1,GTO = 制限速度を知る
2,そのプール全体の平均速度を知る and プレイヤー個人の速度を判断する 3,制限速度からの乖離を見つける
4,乖離に対してアタックしていく

というプロセスになります。

なので「エクスプロイトするから GTO 勉強しない派」の人は、「周りに合わせて運転出来ているから、制限速度知らずに走っています」と言っている事になります。そうすると、先程も言いましたがそのプールに馴染むまでに時間がかかります。 あと、GTO が出る前にポーカーを始めた僕からすると「正解が出てるのに、なんでその正解を知りたくないんだろう?」と疑問になります。煽りとか見下しとかネガティブな感情は一切無く、本当に疑問なんです。

Solver が出てくる前のポーカーは、まさに手探り状態です。周りの車を常に見渡しながら、「こんな感じっすよね?チーッス🫡」みたいなポーカーです。それが今は「GTO 先生!正解を教えて頂きありがとうございます!これでぐっすり寝れます!」といった感じになりました。(昔グラインドしていた時に、ハンドの事考えすぎて不眠症になった事があります)

ただこういった「GTO を学ばずエクスプロイトで生きていく派」の人は、常にスピードの違いに気を配っているので、「GTO 最強派」の人に比べて、相手一人ひとりのプレイスタイルの違いに気づく事に優れている傾向にあります。そして、常に相手によって調整していくので、そのスポットごとにマックスバリューを取りにいける傾向にあります。

あとは、GTO 戦略を知らない = 型にとらわれない自由なプレイが出来るので、テーブルによっては暴れまくって支配する事も出来ます。全員がガチガチの GTO 派だった時に、全く知らない領域に引きずり込む事が可能だからです。 海外のプロにも GTO からハズレたプレーをするひとは結構います。ただそういった人たちは本当に長い事プレイして経験が沢山あり、それに基づいて判断しているので、「プロでも GTO 使ってない!意味ないじゃん!」という結論にはなりません。

さて、ここまで 「GTO 最強派」スタンスみたいに書いてきましたが、僕は GTO が最強だとも思っていませんし、"GTO 戦略" を丸々コピーしてプレイするのはナンセンスだとも思っています。

まず「GTO 最強派」の人が陥りやすい考えに、「自分は GTO 通りにプレイしているから、ミスもないし EV ロスも無い」と考える事です。そういう人に伝えたいのが、

1、まず、人間が GTO 通りにプレイするのは不可能です

2,"GTO 通り" にプレイしても EV ロスする局面があります(プリフロップやマルチウェイ)

という事です。 皆さんが良く考える "GTO 戦略" は、 GTO Wizard 等のライブラリー型の戦略を指している事が多いと思います。このような "GTO 戦略"は「全員がお互いの戦略を知っている状態で、この人数でこのレーキストラクチャーで、全員がパーフェクトにプレイした際の、最適戦略」という事です。 なので、ポーカー理論に基づいたプレイの考え方や、そのスポットにおける全体的な戦略の傾向等を学ぶのには非常に役立ちますが、ハイステークスをプレイしている人以外は、GTO の解析結果と自分のプレイを見比べて「合ってる、間違ってる」と判断するのは非常に危険だと思います。 特に低レートでのブラフキャッチの答え合わせ等は、そのノードにたどり着くまでに必ず相手のブラフコンボ数やブラフコンボセレクションがズレるので、逆に悪影響だと思います。

続いて、2, "GTO 通りにプレイ" していても EV をロスするスポットについて解説します。

GTO のプリフロップチャートには、オープンとフォールドを混ぜるハンドが存在します。つまり、オープンの EV は 0 で、フォールドの EV も 0 です。 GTO がオープンするハンドをミックスする理由は、GTO 戦略は全員が自分の戦略を知っている前提 = 例えば 22, 33, をオープンしない場合にボードが 223 等になると、相手はナッツが無い事を知ってる = そのスポットでエクスプロイトされる = それを防ぐ為にミックスするのです。これをボードカバレッジと言います。

人間のプレイヤーがそういったスポットになった時に、正しくエクスプロイトしてくるか?というのはまた違う議論になりますが、GTO 戦略にはオープンしてもフォールドしても EV が変わらないハンドが存在するというのを理解することが重要です。

では、例えば自分が UTG からオープンし、BB のプレイヤーが GTO のミックスハンド (コール or フォールド) を 100% コールして BB をディフェンスするプレイヤーだったとしましょう。その場合 UTG がオープンレンジを何も変えずに "GTO 通り" のオープンをした際の EV はどう変化するでしょうか?

「GTO 最強派」の人なら "何も変わらない" と答えるはずです。GTO は相手が変化してきても調整する必要が無く、常に自分の EV は守られると考えるからです。

答えは "UTG は EV ロスする" です。なぜかというと、「レーキが発生するから」です。

もし UTG のオープンが 0 EV で、BB のディフェンスも 0EV だった場合、オーバーディフェンスする事で発生したレーキ分の -EV は、UTG と BB どちらのハンドにも影響します。 その為、BB がオーバーディフェンスすればするほど、UTG のミックスオープンハンドは -EV に転落する = それらのハンドをオープンするとお金を失います。

このシチュエーションですが、BB は特に変わった事をしているわけではありません。ミックスディフェンスをピュアディフェンスに変えただけです。これよりも広く BB からプレイするプレイヤーはたくさんいると思います。

これが GTO 戦略の脆さなのです。

画像 1と 画像 2 は GTO Wizard のノードロック機能を使って、相手の C-Bet に対する反応を変えた時の、こちら側の戦略の変化です。

画像1
画像2

下のリンクから動画をみれますが、相手の反応は普通の人が行うようなものにしています。それでも、本来ならチェックかオーバーベットのスポットが、レンジベットに変わってしまうのです。

なので「GTO が最強!GTO が全て! GTO の前にひざまずけ!」という人は、「GTO なんて意味ない!エクスプロイト一択!」という人並みに、逆の方向へ振り切れています。まさに、保守派とリベラル派で分断されてしまったアメリカを見ているようです。

なので1番 EV が高いのは、「GTO も大事だしエクスプロイトも大事だよね!ウェーーイ🖐🤪🖐」って楽しんでポーカーをやっている人だと僕は思います。

今回も長々と書いてきましたが、この記事で僕が伝えたいことは、

1,みんなポーカーを愛する変態なんだから、「GTO」肯定派、否定派でいがみ合うのはやめようぜ
2,GTO はポーカー学ぶ上で大事だし近道でもあるけど、GTO が全てではないよ
3,結局ポーカーは楽しんだもん勝ちだぜ という事です。

空前のポーカーブームに湧く日本ですが、それでもポーカープレイヤーの人口は 200 万人ほどと言われています。(昨年の国会質疑のデータ)。2023 年 6 月末の在留外国人数は 320 万人程なので、普段外国人をみかける頻度の 6 割ちょっとくらいが、歩いていてポーカープレイヤーに出くわす確率です。 それを多いと感じるか少ないと感じるかは、住んでいる地域にもよるとは思いますが、それでもまだまだマイナーなゲームです。 そんなマイナーなゲームを楽しむ変態同士が、お互いを見下し、自分が優越感を感じれる為だけにお互いに攻撃し合うのは、非常にもったいないと思います。

昨日出したインタビューで Tommy Angelo も言っていましたけど「"ポーカーに完全な正解がある" と考える事」がそもそもの間違いです。


儚く気まぐれであり、自分の思い通りにいかない、でもメチャクチャ楽しいポーカー。ぜひこれからも楽しんで行きましょう

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

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