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暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世:歴史家の生贄にされてきた?

カクヨムにて『歴史家たちのポジショントーク:暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世』を新規投稿しました。

あらすじ:各時代の歴史書に書かれている「フランス王シャルル七世」の評価が乱高下しすぎで面白かったので、歴史家たちのポジショントークの移り変わりをまとめました。

noteでは紹介を兼ねて、本日の更新分から一部引用します。

 ルイ14世と『コルベールとその行政史』に関する優れた著作で知られるピエール・クレマンは、1853年に『ジャック・クールとシャルル七世(Jacques Cœur et Charles VII)』を2巻刊行した。

 コルベールはルイ14世の財務総監として、ジャック・クールはシャルル七世の国王会計方として知られる。時代によって役職名と権限が少し違うが、どちらも王室費の管理と国家の経済を任されている、いわゆる財務大臣にあたる。

 クレマンは、この有名な資本家ジャック・クールの生涯を辿りながら、様々な評価を受けるシャルル七世と向き合い、この王についてどう考えるべきかを自問している。

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 シャルル七世ほど、さまざまに矛盾した評価を受ける王はいない。
 ほとんどの歴史家が、彼の欠点ばかりを取り上げ、個人的な功績を否定してきた……。 もし私が、この人物を正しく理解しているとすれば、その時代の正義に反するからと、歴史家の生贄にされてきた……。

 シャルル七世の生涯は、二つの時代にはっきり分けることができる。

 治世の最初の十数年間は、意志の弱さと自信のなさを露呈し、強引に押しつけられた寵臣たちに主導権を握られることを許した。

 ルイ十四世の言葉を借りれば、「王という仕事は、他のどんな仕事よりも経験に基づいた教訓を必要とする」ものである。ひどい経験と教訓を経て、シャルル七世はより賢く慎重になり、当初は欠けていた自らの意志、政治的な精神力、迅速な行動力をついに身につけた。

------(中略)------

 本当のことを伝えよう。政治的にも行政的にも、フランスは一種の混沌から抜け出し、新たな時代が始まったと言ってよいだろう……。この時代のすべてを注意深く見れば、新しい社会の真の出発点であったことは誰が見ても明らかだ……。

 当時の年代記を研究すれば、歴代フランス王の中で、生前にこれほど愛され、人気のあった王はいないと想像できる

19世紀半ば(8)財務卿ジャック・クールの視点から - 歴史家たちのポジショントーク:暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世(しんの(C.Clarté)) - カクヨム


ピエール・クレマンは、私もうっすら思っていたことをはっきり言葉にしてくれました。

  • その時代の正義に反するからと、歴史家の生贄にされてきた

  • 当時の年代記を研究すれば、歴代フランス王の中で、生前にこれほど愛され、人気のあった王はいない

15世紀当時の人たちよりも、後世の人間(歴史家だけでなく一般大衆も含む)によって悪印象が作られていると。

もしシャルル七世が、大衆がイメージするような愚王・暗君だったとしたら。

ジャンヌ・ダルクはピエロも同然で、彼女が聞いた天使の声は見込み違いだったということになる。あのクソまじめで義理堅いリッシュモンが、イングランドとの臣従関係を破棄してまでシャルル七世にこだわったことや、どんな時でもシャルル七世を敬意を払い、「信頼されたい、愛されたい」と願っていたことなど…

シャルル七世がつまらない人間だったなら、ジャンヌ・ダルクもリッシュモンもそういう反応をしないと思うのですよ。この二人は損得勘定で動くタイプではないから。

続きはカクヨムにて。

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自著の紹介

既刊:デュマ・フィスの未邦訳小説『トリスタン・ル・ルー』

2022年10月21日、シャルル七世即位600周年記念にリリースしました。
Kindle版(電子書籍)とペーパーバック版があります。

新刊:『十九世紀の異端科学者はかく語る』

ジョン・ラボック著『The Pleasures of Life』第一部を翻訳・書籍化しました。訳者・序文で「ダーウィンとラボックの師弟関係」を書き下ろし。

web小説『7番目のシャルル』シリーズ

シャルル七世が主人公の小説(少年期編青年期編)連載中。


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