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伊豆天城山でハイキング-01

私には姉、ささがいる。

幼い頃から喧嘩が多く、私の自我が目覚め、思考が解放を望み始めた中学二年生から二十代前半までまともに口を聞くことはなかった。

自由を望む私と両親の引いたレイルを着実に進む姉とでは性格が真逆過ぎたのだ。

だけど姉の結婚が決まり、夜、仕事をしていた私は日中動けることもあり姉の運転で引っ越し先を一緒に見に行くことになった。

二人だけなんてちょっと緊張しちゃうよ。

ナビのついていない家の車、私は地図担当。

「右に曲がって」

「わかった」

曲がる場所を通り過ぎる。

「えっ、曲がってって言ったじゃん」

「あっ、忘れた」

あれっ、この人、思った以上に天然だ。

あれっ、この子、思った以上にしっかりしている。

互いに持つ相手のイメージは私が中学生だった頃のまま。年を経て得た互いの性格など全く知らずにいた。


なんだ、思ったよりもいい奴じゃん。


そう思ったのは私だけではなく私たちの距離は一気に縮まり、その後、よく一緒に行動するようになった。


ささには子供が二人いる。生まれた時から明るく満点スマイル女子のららと一人黙々とやりたいことを実行する男子のぼう。

私は彼らが生まれた時からたくさん遊んで成長を見守ってきたから二人とも仲良し。途中参加となった私の夫たぁも彼らが小さい時には既に家族の一員だったから外国(ニュージーランド)人という意識などなく心を通わせていた。いずれにしても彼の存在は二人の将来に大きな影響を与え、小さい時から海外に興味を持った彼らは、今もそれに向かって将来を切り開いていっている。

姉、ささの旦那れんも家族行事には一緒に参加して、子供の頃には想像できなかったくらい二家族仲良しで助け合っている。


人見知りでずっとママの後ろに隠れていたぼうが気づけば高校を卒業し、パイロットになるという夢を持って希望大学へと進学した。二年後、2022年4月に彼は操縦士免許取得のためアメリカへと旅立つ。

集まる時は食事会ばかりだったけど別のことをして楽しみたいな。

私は最近、ささの体系が気になっていた。仕事での姿勢が原因なのか前かがみ気味で、そのせいかどうかわからないけど不要な部位にお肉が目立つ。
私たちの両親は既に他界しており、血を分け合う身内は彼女だけ。彼らが他界した時にDNAから何かが失われたような心痛を抱いた私はささと共に健康に年を取っていきたいと願う。

そこで思いついたのがハイキング。

ハイキングは私とたぁの趣味であり、また甥っ子ぼうの趣味でもある。それに姉は八白土星で「山」を象意として持っているから、みんなで一緒に山を歩いて楽しもうじゃないか。

ささはたまにホットヨガを楽しんでいるようだけど体重を落とすには有酸素運動が一番。それに自然豊かな山でのハイキングを楽しんでくれればそれは日常のウォーキングにも繋がるかもしれない。

「みんなで山に行こう」

そう提案するともちろん、ぼうはOK。フットワークの軽いららも首を縦に振り、最初は嫌な顔をしたささけど大好きな子供が行くとなれば承諾するほかない。

そしてぼうが旅立つ前月の3月、みんなで筑波山へと向かった。
久々の登山にささは苦労したようだけど、楽しさも覚えたようだ。

それから二カ月後、ゴールデンウイークに奥多摩御嶽山のハイキングへと誘い出すと新緑の美しさに心を打たれたささとれんに「ハイキングも悪くない」と思ってもらえるようになった。

そして彼らは家族だけで山へと行くようになったのだ。

うんっ、計画通りっ!

このまま彼女がハイキングに目覚めてくれればしめたものだ。


ところで私は東京都在住でささ家族は千葉県に住んでいる。そんなこともあって互いに家から行きやすい方面が異なる。
最初に訪れた筑波山では私たちが前日入りして近くの宿に泊まり、二回目は彼らが御岳山に前日入りしてくれた。

なら次は?

一緒にどこかに泊まって山と旅を楽しもう。

どんな山がいいのかな。

ささは数年前の怪我が原因で膝がよろしくない。そのため急な上り下りを避けるためにロープウェイがあるコースを探してみると、いくつか候補が上がり、日光白根山が選ばれた。
会社勤めの彼らと行動できるのは土日祝日、そこでシルバーウイーク後半の9月23-25日が選ばれた。

宿、待ち合わせ場所も時間も決めてその日が来るのを待っているけど9月は週末ばかり雨が降るから不安が煽る。それは残念ながら現実化してしまい旅程日は雨予報。宿が無料キャンセルできる最後の日まで粘ったけど予報は変わらずなくなく断念。

そして旅行するはずだった初日から三日間、見事に雨が降った。

今年はもう無理かな。

そんなことを思いながら十月はたぁと二人で丸山と雨の中、美の山を楽しんだ。


次はどこに行こうかな。

カレンダーを確認してみると11月3日は木曜日。もし金曜日の平日に彼らが休み取ってくれたら二泊三日で旅できることが判明し、すぐにささに連絡をする。

「11月4日に休み取ってくれたら三連休になるよ」

「そうだよね。ならハイキング行こうよ」

山に興味を持ち始めたささ家族は9月の旅がキャンセルになったことをとても悔やんでくれており、彼らが「行きたい」と声を上げ、三人揃って有休をとってくれたのだ。

嬉しいじゃないかっ!!!

ここを逃すと12月になる。そうなると私たちはたぁの母国ニュージーランドへと向かい四カ月は戻って来ない。ここが最後のチャンスなんだ。

行こう、絶対っ。


お話の登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう


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