見出し画像

記憶冷凍【毎週ショートショートnote】

私は無機質な部屋の中で『記憶冷凍』ボックスを眺めていた。

『記憶冷凍』制度ができたのは2040年を過ぎた頃だった。

『記憶冷凍』は亡くなった人の脳を取り出し、その脳を冷凍しておくことができる。

そして、あとでその脳を解凍し、記憶を読み取ることができるのだ。

ただ、その記憶を読み取ることができるのは「法定相続人」のみと法律で定められていた。

例えば、亡くなった人が仮想通貨の管理やクラウドで資金などを管理していた場合に、そのIDやパスワードを、故人の記憶から読み取ることができる。

『記憶冷凍』はそのような状況に使うのが一般的だ。

また、そういった情報が読み取れる一方で、故人の過去の思い出がすべてフラッシュバックしてしまう。

そのときの故人の感情や心理状態なども、まるで自分のことのように感じられる。

それは良い思い出も、悪い思い出も全部だ。

本日、私は『記憶冷凍』を解凍することを決めた。

最愛の息子を殺したのは誰なのかを確認するために。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※ ちょっと重たい話になりました。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


サポートお願いいたします!執筆活動費にさせていただきます。